君を愛する事は……、と言い出したので
学園の中で「真実の愛」や「君を愛する事はない」など小説に影響を受けて婚約破棄をするような騒ぎを起こす生徒たちが多く困ると教師たちは頭を抱えていた。
ため息をつく教師たちを見て、同じようにため息をつく。
原因は私の婚約者、エリックだ。
彼も周りに言われ、流行りの恋愛小説を読んでいる。
別にどんな本を読んでもいいが、それに影響されるのはどうなのか。
「き、君のことを愛する事はない!」
先日のお茶会で突然言い出したこのセリフに頭が痛い。
本気で言っていないことはわかっているが、そういうことを言われるのは気分が悪い。
親の都合で組んだ縁談ではあるが、婚約者との付き合いはそれこそ幼少期からだ。
彼が流されやすいことは知っていたが、まさかそんなことを口走るとは……。
「まぁ……それもかわいいからいいか」
あの時の彼を思い出して、またため息が漏れる。
顔を真っ赤にして、目に涙をたっぷりためてプルプル震えていた。
セリフ自体は頭にくるが、彼の本心を知っているからちょっときゅんとしてしまったりもする。
「なら、私もあなたを愛する事はないでしょう」
そう切り返せば、彼の涙腺は決壊した。
分かっている、彼は小説の真似をし最初は冷たい反応だが、次第に相手のいいところを理解して距離を埋めていき互いに思いあう関係を理想としていたのだろう。
だけど、彼がどんな人かは知っているし、彼も私の事をよくわかっているはずだ。
分かっていながらも周りをまねしてしまう愚かなところがまたかわいい。
「リリア様、そろそろ許していただけませんでしょうか?」
エリックの従者であるノアはげっそりとしていた。おそらく眠れていないのだろう。
原因はエリック。どうせ学園が終わった後、ノアに泣きついていることが容易に想像できた。
「そちらが謝ればいつでも許しますよ」
「本当ですか?」
「そもそも戯けたことを言い出したエリックが悪いんですから。
エリックがなんでこんなバカげたことを言い出したのか、理由の説明と謝罪をすれば許しますわ」
すごい速さで寮へむかうノア。
今の話をすぐにエリックに伝えるのだろう。
それなら謝罪に来るのは明日かしら。
謝るとき、いつも私の好物を買い込んで謝りに来るから。
「私のことが大好きなのになーんで毎回アホなことをするのかしらね」
まぁ、それをかわいいと思って受け入れてしまう私も悪いんでしょうね。
でも将来、夫婦になってからもバカなことしでかさないようにそろそろきっちり教育しておいた方がいいかもしれない。
うん、そうだ。その方がいい。
つい泣き顔がかわいいからって許しちゃう私の癖も直さないとね。




