第1章 ――アークナイトになりたいか?
はじめまして!
イギリス出身の英語作家、NoneLikeJTです。
このたび、私の成長し続ける物語を日本の読者の皆さんにもお届けしたくて、**「ここから果てまで」**を投稿することにしました。
長期的に続いていくこの物語が、皆さんの心に届き、楽しんでいただければ幸いです。ぜひ感想や意見をお聞かせください。
一緒に、この物語の果てを目指していきましょう!
Till Next Time!
— NoneLikeJT
「ハル・タダシマ…」
「……はい。」
授業は何事もなかったかのように進み、時間はぼやけていく。
ハル・タダシマは一番後ろの席に座っていた。 目立たず、関わらず。 それが彼の暗黙のモットー。 毎日をどうやって乗り切るか――一時間ずつ、ゆっくりと、ただ耐えながら。
――チャイムが鳴る。
「……感謝します、主よ。」と、彼は小さく吐き出すように呟き、背伸びしながら大きなあくびをした。「あと二秒で寝落ちしてた。」
できる限り最低限のエネルギーで席を立つ。 怠け者? まあ、そうかもしれない。 無気力? 間違いない。
身長は同年代の男子としては平均的。 十八歳になったばかりで、高校最後の年をただ惰性で過ごしている。
学校の伝統なんて興味はない。 「これが人生で一番楽しい時期だ」なんて言う人もいるけど――つまりそれは、この先の人生がどれだけ退屈かってことだろう。
母親譲りの褐色の肌、父親譲りの和風の顔立ち。 筋肉質でもなく、痩せすぎでもなく、太ってもいない。 ただ――「放置してない」くらいの健康体。
顔立ちは評価が分かれるタイプ。 人によって「イケメン」「かわいい」「変わってる」「よくわからない」――そのどれか。
鋭い焦げ茶色の瞳の上には、あまり似合っていない眼鏡。 だが髪型は完璧だ。短く刈り上げた黒髪は、天パと直毛が自然に混じった質感。サイドはフェードカット、トップは整えられたシルエット――手入れの良さが一目でわかる。
クラス全員と一緒に礼をするが、心はすでに教室の外だ。 あと一分でもここにいたら、頭蓋骨が割れる気がする。
カバンを手に取り廊下へ出る。 その瞬間から、耳に入るのはお決まりの囁き。
ニート。 オタク。 ぼっち。 根暗。 変人。 部外者。
――要するに、「お前はここに居場所がない」。
正直、彼もそれをよくわかっていたし、何も問題にしていなかった。
「先生に捕まって説教される前に退散しよ。」 器用にイヤホンを装着。
ノイズも、レッテルも、作り笑いも、すべてが音楽と一緒に背景へ溶けていく。 とはいえ、背景が消えるわけじゃない。
右側には、手を繋ぎ世界に二人きりな恋人たち。 左側には、仲間同士で笑い合い、どうでもいい学校の話に花を咲かせるクラスメイトたち。
ハルには、そんなものはない。 気にしていないか? いや、気にしてはいる。 だが――もっと大きな魚を釣らなきゃいけない。
そして残念ながら、小さい魚を釣るためにも特定のスキルが必要だ。 まだ持っていないスキルが。
音楽を聴きながら、いつもの街を一人歩く。 やがて、いつもの家にたどり着く。
鍵を差し込み、年寄りのようにため息をつく。 「帰ってきたぜ、我が城よ。」
一歩足を踏み入れると、肩の力が抜ける。靴を脱ぎ、馴染みの床板に足を乗せる。
「……あ〜〜〜……」
家という存在は甘い。 心地よさ、慣れ、そして無言の受容が、暖かな風のように彼を包む。
ここは、ただ存在しているだけで許される場所。
胸に手を当て、天井を見上げ――祈る。
「主よ、今日という日をありがとうございます。退屈で、正直言って何もなかった一日ですが……また目覚めることができた、この命に感謝します。」
「そうするべきだな。」
聞き慣れた、やけに自信満々な声。 「……レオ叔父さん?!」
大きな棚にもたれかかるのは、血の繋がりはない叔父――レオニダス。 背が高く、整った顔立ちで、写真写りも完璧。
女の理想像――そして本人もそれを自覚している。
引き締まりすぎず、鍛えすぎず、美しいバランスの体躯。 褐色の肌、短く整えられた黒髪。 見る者を射抜くようなヘーゼルの瞳は、同時に評価も下すような鋭さを持つ。 彫刻のような顎のライン。年齢を感じさせない無精髭。
真っ白なシャツを黒いスラックスにインして着こなす姿は、まるで高級メンズ誌の表紙から抜け出したかのよう。
対するハルは――しわくちゃの制服、脱力しきった姿勢。まさに「高校疲れ」の広告塔だ。
「元気だったか?」
「どうやって入ったんだよ。鍵、変えたばかりなんだけど。」
「愚問だな、我が愛しき甥よ。」
レオニダスが手を差し出す。 ハルはだるそうに握り返すが、強引に抱きしめられる。 温かく、本物の抱擁。
「久しぶりだな、甥っ子。」
笑いを堪えようとしたが、その声の誠実さに負ける。 「……久しぶり、叔父さん。会いたかったよ。」
「俺もだ。」
そのまま少し長く抱き合う。
「にゃあ。」
その間を割って入ったのは、一匹の黒猫。 艶やかな毛並み、冷めた声。
「人間どもよ、くだらぬ感傷に時間を浪費するのはもう終わりか?」
「はいはい。」と、レオニダスは無表情で返す。
「おいアズラエル、まさか嫉妬してるんじゃないだろうな?」
「こんな無価値な行動に嫉妬するわけがないだろう。」
――この猫、普通の猫じゃない。 だが、間違いなく家族だ。
ハルはしゃがみ込み、毛を撫で始める。 アズラエルは抵抗する。
「やめろ。やめろと言っている。俺の同意を無視する気か――う゛……」
抵抗は、情けない喉鳴りに変わる。 また負けたらしい。
レオニダスは微笑み、甥が猫を愛情で押し倒す光景を眺めていた。
「……で、訓練は続けてるか?」 「うん。」 「よし。学校の方は……?」
「…………」
深く溜息をつき、糸で操られる人形のようにゆっくり振り返るハル。 アズラエルは無関心そうに毛づくろいを続ける。
「……まあ、そこそこ?」
「彼の言う『そこそこ』は、ほぼサボりだ。」
「アズラエル!!」
猫は無視。 レオニダスはため息――失望ではなく、諦め半分の受容。
「……で、なんで学校に行かない?」
「だってさ……」ハルは眉を寄せる。「どう言えばいいかな……意味がないんだよ。」
レオニダスは片眉を上げる。
「要するに……俺はあそこにいるべきじゃない。もっと大きなことをやるべきなんだ。忘れるような授業に時間を浪費して、ただ歯車になるためだけに生きるとか――行く意味あるか? 俺に興味もない連中ばかり。先生は給料目当て。クラスメイトは俺を理解しない。誰もだ。……な?」
レオニダスは深く息を吸い、吐く。 アズラエルは動かない。 ハルは待つ。
「……本当にお前は母さんにそっくりだな。話し方まで似てる。」
肩に手を置き、真っ直ぐ見る。
「俺はお前の父親じゃない。だが、お前を気にかける大人だ。手取り足取りはしない。自分で決められる年だろう。……もう自分の道を選んだみたいだな。」
ハルは小さく頷く。
「じゃあ、覚悟を決めろ。十八になったんだ。誕生日を逃した分――埋め合わせをしてやらないとな。」
「……本題に入れ。」アズラエルがぼそり。
レオニダスは無視。
――ハルは感じていた。何かが来る。心臓が早鐘を打つ。 ……ついに? 夢が叶う瞬間か?
レオニダスははっきりと言った。
「……俺やお前の両親と同じ道を歩みたいか? アークナイトになりたいか、ハル?」