森の異変でござる!
【ナイトメアトレント視点】
グハハハハ。
勇者を殺したのは間違いであったがすぐに蘇り、冒険者ギルドに駆け込むとは都合が良い。
これで、大魔王様をかつて苦しめた勇者パーティ最後の生き残りであるエルフの女を始末できる。
さぁ、ここに来るがいい。
勇者共々、大魔王様から直々に力を授けられたこのワシが薙ぎ払ってくれようぞ!
忌々しい勇者パーティの女が連れ出されたと聞いて暫く経つが全然、来ないではないか!
ワシは取るに足らない存在だとでも言いたいのか?
解せん!
ワシは大魔王様から直々に力を授けられたナイトメアトレントぞ!
来ないのならこちらから。
ゾクッゾクッ。
何だ、この溢れんばかりの魔力の高鳴りは!?
だ、だ、だ、大地が震えているだと!?
一体、誰がこんな膨大な魔力を操っているのだ?
ま、まさか、だ、大魔王様が本気で暴れているとでも言うのか?
いや、この膨大な魔力は大魔王様のものではない。
だとしたらかつて大魔王様に大きな痛手を与えたというエルフの女の力だとでも言うのか!?
無理だ。
こんな化け物みたいな魔力を操る相手に勝てるはずがない。
大魔王様、申し訳ありませぬ。
ワシは、この場を離れさせてもらいますぞ。
【風魔光太郎視点】
ふぅ〜。
何とかゴブリンの巣も全部回れたでござるな。
それにしても、偶然とはいえ大魔王と聖女とやらの身体に宿っていたマリアンヌとやらの話を聞いてしまったが、味方のふりをして裏から五大国を滅ぼそうとするのは解せないでござるな。
それにクラッシュの弟で頭の出来が悪いとしても良いように操られるのも……まぁ馬鹿は一度痛い目に遭わないと分からないのは経験則から分かっているでござるが……やれやれ。
馬鹿だけが死ぬのなら見過ごせるでござるが馬鹿に巻き込まれた人々が死ぬのは解せないでござるな。
どうするべきか。
「コウタロウの兄貴!目の前に真っ黒な木があるんでやすが休憩しやすか?」
拙者の2番目の弟のミブロウの声でござるな。
結構な人数を連れて、戻っているからここらで少し休憩を……ん?んん?上手く隠しているが紫の木でござるな……木の色にしてはおかしい……そもそも今動かなかったでござるか?
木が動くわけ……一つ試してみるでござるか。
「風遁『カマイタチの術』でござる!」
「こ、コウタロウの兄貴!?いきなり何を!?って、木!?木が!?動いてる!?」
風魔光太郎の突然の攻撃に驚くミブロウ。
「こ、こいつだ!俺を殺した木の化け物だ!」
緑に擬態していた紫の木が現れるのと同時に指を刺す勇者クラッシュ。
「坊ちゃんが殺された……おい木の化け物!アタイの愛しい旦那を一度殺した罪、償ってもらおうか?」
勇者クラッシュが目の前の紫の木に殺されたと聞いて、怒りの炎を灯すミランダ。
【ナイトメアトレント視点】
こ、こんなところで勇者の奴は油を売っておったのか!
待て待て、今エルフの女は近くに……居ないな。
なら、コイツらだけでもワシがここから逃げる前に、な、な、な、何であの時感じた魔力の高鳴りが急に!?
こ、この目の前の老人からだと!?
まずい!まずい!まずい!コイツはまずい!
魔力量だけでいえば、大魔王様を軽く超えている!?
それだけじゃない。
こんな一瞬で魔力を高鳴らせるなど普通あり得ん!
急いで、この場から。
「ぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」
枝が!ワシの枝が一瞬で、切り裂かれた!?
急いで、この場から離れないと……離れないと。
【風魔光太郎視点】
ふむ。
軽く風遁『カマイタチの術』で枝を軒並み切り落としてやったでござるが……こちらに向かわずに逃げようとしているでござるな。
それにしても偶然とはいえ、目の前にクラッシュを殺した化け物が現れるとは好都合でござる。
此奴も今は拙者の弟子でござる。
弟子のことを散々痛めつけてくれた御礼をしてやらねばならぬでござるな。
「雷遁『落雷の術』でござる!」
「アンタ、アタイにも攻撃する隙をくれても良いんじゃないかい?あの紫の木は、坊ちゃん。アタイの旦那に」
「ミランダお姉ちゃん。ううんミランダ。良いんだ。俺はミランダもボスも俺のためにここまで怒ってくれて嬉しいからさ」
すっかり熱々でござるな。
2人でさっき現れた時もイチャイチャしてたのを知ってるでござるよ。
【ナイトメアトレント視点】
頭上からいきなり雷魔法だと!?
「ぴぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁ」
雷魔法が直撃して、ワシの身体が燃えておる。
どうして、こうなった!?
大魔王様から直々に力を与えられしワシの力はこの森で敵う相手など居ないはずだった!
それが!それが!それが!
こんな訳のわからない出鱈目な力を持つ老人1人を前に一瞬で、一瞬で消し炭にされると言うのか?
どうせ殺されるなら最期に。
【風魔光太郎視点】
ふむ。
まだ動ける元気があるでござるか。
やれやれ、元が木である以上は大地の力とやらで生えてくる事が無いとも言えぬでござるな。
ちゃんとトドメを刺しておくのが良いでござるな。
「火遁『大炎上の術』でござる!」
ふむ。
これで、まだまだ成長途中の弟子の露払いはしてやれたでござるな。
「さて皆の者、しっかりと拙者に付いてくるでござるよ」
【ナイトメアトレント視点】
ワシは、この老人のことを侮っていたのか。
最初に風、次に雷と来たから火は使えないのだと思った。
そもそも人間が複数の魔法を使えるのは珍しい。
だから2属性の魔法を使った時点で、遊ばれている事に気付くべきであった。
よもやこんな化け物がこんな最初期の森に居るなど思うはずがない。
大魔王様直々に力を頂いたワシを倒すために女神が遣わしたのだろう。
もう、意識もない。
大魔王様、この老人に挑んではなりませぬ。
跡形もなく消されてしまいますぞ。
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第86話は、2月4日の水曜日のお昼の12時を予定しています。
それでは、次回もお楽しみに〜




