話を聞かない女たちでござる!
【風魔光太郎視点】
ミブロウに案内された洞窟は隣り合わせで、どちらから先に向かうか思案していた。
「コウタロウの兄貴!どうしたんでやす?」
「うむ。どちらから攻略すべきか思案しているところでござるよ」
「そうでやしたか。でもそんな心配必要なさそうでやすぜ」
ゾロゾロと洞窟から鎧を着た女たちが出てきたのである。
「チッ!またゴブリンの生産工場になれってかよ!そうは行くか!カンガル様の仇、取らせてもらうぜ卑しいゴブリンが!」
「お前は、ホースメン騎馬国家の。お前らも大事な人を殺されたんだな。ここは共闘と行こう。俺たちもアンガス様の仇を取らないといけねぇからな!卑しいゴブリンが覚悟しやがれ!」
「邪魔すんなエンパイア帝国の雑魚兵士が!」
「アァ?テメェらこそホースメン騎馬国家の下っ端兵士だろうが!」
「やんのか?」
「上等じゃねぇか!先ずはテメェらから血祭りにあげてやらぁ!」
この世界の女は、皆んな血の気が大きいのでござるか?
「双方とも止めるでござるよ。それに拙者は、助けに来ただけであって」
「クソッ!また、操られたゴブリンかよ!テメェ、誰に操られてるか答えろや!」
「知能のあるゴブリンか!一際大きいゴブリンについて、教えろ!今直ぐに!」
何故、拙者が殺気を向けられなければならぬのでござるよ。
やれやれ、少し静かにさせるでござる。
「水遁『頭冷やしの術』でござる!」
「魔法なんか使わせねぇぞオラァ!」
「テメェ、邪魔すんなへっぽこ帝国の兵士が!ウラァ!」
拙者の水遁『頭冷やしの術』をあんなやり方で回避するとは、思わなかったでござるよ。
そして、拙者の目の前では、エンパイア帝国の兵士とホースメン騎馬国家の兵士たちが取っ組み合いの喧嘩状態である。
「アァ!知能のあるゴブリンは存在するに決まってんだろうが!」
「馬鹿か!知能のあるゴブリンなんていねぇ!アイツらは操られてんだよ!見てみろ!俺らが取っ組み合いの喧嘩になった途端大人しくなっただろうが!アレは俺らが勝手にやり合って疲弊してんのを操ってる奴が後ろで微笑んでるんだよ!そんなことぐらいわかれやへっぽこ帝国の兵士どもが!」
「カッチーン。アァ?あ、そうかそうか昔は遊牧民だったもんなぁ!女を攫って栄えた国が粋がってんじゃねぇぞ!オラァ!アレは知能のあるゴブリンで、俺たちのやり取りをつぶさに観察してるに決まってんだよ!んなことぐらいわかれや!オラァ!」
やれやれ。
「お主らは何か誤解をしているようでござるな。これは、全てある女の計画でござるよ。大魔王直属の配下の1人、魅惑のマリアンヌにお主らは騙されたのでござるよ」
これは、ついこの間、風に運ばれて拙者の耳に届いたやり取りである。
『だ、大魔王様!?ど、どうしてこちらに!?』
『始まりの森に派遣したナイトメアトレントからの定期連絡が途絶えた。あの森のレベルで、余が直々に生み出したナイトメアトレントが倒されるとは思えぬが』
『いえ、1人だけ心当たりが』
『それは誰だ話せ魅惑のマリアンヌよ』
『かしこまりました。怪しげな魔法を使いこなすゴブリンが1匹、あの森に住んでおります』
『まさかお前は、ゴブリン如きに余が直々に力を注いだナイトメアトレントが敗れたと?それなら、まだ逃げ出した方が筋が通るというもの。余は、お前の方に支障が出ぬか報告に来ただけのこと。お前は、余の期待を裏切ってくれるなよ』
『も、勿論です。忌々しい聖女の血を引くこの女に封印されていたワタクシをお救いくださった大魔王様のため、五大国の人間どもを必ず同士討ちにさせます』
『ならば良い。余は、引き続きナイトメアトレントの動向を追う。裏切りならば、容赦なく殺さねば下の者に示しがつかぬからな』
『はっ!』
どうやら拙者の忍法『耳すませの術』の効果範囲は、全国どこでもそれも外に出ていればこのように風に運ばれて拙者の耳に届くようでござる。
「なっ!?魅惑のマリアンヌだって!?それは古の時代、勇者パーティの聖女が己の身に封じ込めたというサキュバスの名!?その名前を知ってるかということは、やはりお前は知能のあるゴブリンなのだな!」
「待つでござるよ。忍法『姿変わりの術』でござる!」
ポワンと変身した拙者の姿を見て、驚く両軍の女たち。
「アンタ、人間だったのか?どうして、ゴブリンに!?」
「拙者は、この通り魔術師でござる。そして、このゴブリンは」
「ヘイ。アッシは、風魔様にお仕えしてる小間使いでやす。どうぞお見知りおきを」
この対応力は流石でござるな。
「で、お主たち行くところはあるのか?拙者は、この通り魔族だろうが魔獣だろうが使えるものは使う偏屈な人間ゆえ、苦労はするだろうが衣食住は保証してやるでござるよ」
「あ、有難い提案だがアンタ。魔族や魔獣って分かってて、飼ってるのか?」
「なんじゃ?何か問題でもあるのでござるか?拙者は、魔族だろうが魔獣だろうが話が通じるのなら会話で分かり合えると思っているでござるが。いやなら衣食住の保証の話は」
「待て!分かった!こんな姿で国許にも帰れない身だ。相手が魅惑のマリアンヌという古の魔族だと判明した以上、俺たちだけで勝てるべくもない。せめて勇者様がここにいれば」
「お!呼んだか?俺が当代勇者のクラッシュだ。今は、この爺さんの世話になってんだ」
「ゆ、勇者様も居られるのであれば、我らに異論は無い。そうだなへっぽこ帝国の兵士ども」
「あぁ。一言余計だが。蛮族どもに乗ってやる」
「では、ようこそ拙者の村へ」
こうして拙者は、話の全く聞かなかった奴らを説得したのでござる。
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第84話は、2月2日の月曜日のお昼の12時を予定しています。
それでは、次回もお楽しみに〜




