表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
75/87

頭の靄を取り除くでござる!

【勇者クラッシュ視点】


 ハァ、ハァ、ハァ。

 今回もなんとかボスゴブリンが中から出てくる前になんとか間に合った。

 今のうちに息を整えておこう。

 暫くするとボスゴブリンに手を引かれる形で出てきた大柄な女性。

 その女性を見て、俺は一言発した。


「嘘だろ。ミランダ姐さんなのか?」


 何で?

 何で、ミランダ姐さんがゴブリンの巣から出てくるんだ?

 あんな強いミランダ姐さんが?

 違う!

 きっとゴブリンの巣に囚われている女性を助けるために。

 そうに違いない!

 そうに決まってる!


「その声は、坊ちゃんかい?」


 な!?

 俺がこの声を聞き間違うはずがねぇ。

 俺が憧れ姉のように慕い片想いをしていた女性の声なのだ。

 でも、何でその眼は俺を捉えているのに聞き返すんだよ。

 そんなに俺は変わってしまったか?

 キングクレスト王国から勇者として旅立つその日は、涙を流して祝ってくれたじゃないか。

 だが、俺はその疑問が声が聞こえた方は歩こうとするミランダ姐さんの動きを見て理解した。


「まさかミランダ姐さん、眼が見えていないのか?」


「あぁ。この声は間違いなく坊ちゃんだ。悪いねぇ今のアタイのこの眼は何も映さないのさ」


 俺はミランダ姐さんの言葉に動揺しながらも理由を聞く。

 聞かなきゃならねぇ。

 そして、ミランダ姐さんをこんな目に合わせた奴を完膚なきまでに叩き潰さないと気が済まねぇ。


「おい!クラッシュ、お前突然どうしたんだ?」


 流石に俺にゆかりのある人の前だからかいつもはへっぽこ勇者なんて俺のことを呼ぶゴブリンパイセンの1人も名前で呼んでくれている。

 だがあの時、当の俺はそんなことにも気が付かないほど心を憎悪が支配していた。

 俺の愛するミランダ姐さんをこんな目に遭わせた奴が憎い、殺してやりたい、もう殺していたとしても、あのキングクレスト王国最強と呼ばれたミランダ姐さんがゴブリンに遅れを取るはずがない。

 嵌めたやつがいる。

 そいつら全員の腑を引き裂いて。

 パチーンと俺の頬を思いっきりひっ叩かれた。


「感動の再会に水を刺すつもりは無かったでござるがクラッシュよ。お主、今何を考えていたでござる?復讐などとみっともないことを考える前に、目の前で必死にお主に手を伸ばそうとしてる人をしっかりと見て、抱きしめてやるのが今のお主の仕事でござるよ!」


 人がゴブリンに諭されるなんて、ほんとみっともねぇ。

 でも、ありがと。

 こういう愛のあるところが俺自身、見た目魔物のボスゴブリンに付き従っている所以なんだよな。

 この人は、言葉こそ厳しいがその節々に愛が溢れてる。

 どっかのクソ親父や魔物を皆殺しだなんて女たちを連れて出て行った弟とは違う。


「あぁ。すまない。目が覚めた」


「なら、お主のするべきことはわかるでござるな?」


「あぁ。わかってる。ミランダ姐さん、心配かけてごめん。俺はここにいるよ」


 俺はミランダ姐さんが手を伸ばす方へと寄って行き、その両腕に優しく包まれた。


「坊ちゃん、王国を旅立った時よりも少し男らしくなったかい?」


 さっきのやり取りを聞いていたはずなのにミランダ姐さんは、あの時と変わらず優しく俺を包み込んでくれた。


「まだそんなに日が経ってないよ」


「そうかい?なら、指導者に恵まれたんだろうね」


 ミランダ姐さんは、相変わらず鋭い。

 そうだろうな。

 俺は一度死んで、己の愚かさを知って、良き指導者に恵まれた。

 だからこそ、あの時ミランダ姐さんを連れて行かなかったことを後悔してる。

 自由奔放な弟のように強引に連れ出せば良かったんだ!

 そしたらこんな目には。


「坊ちゃん、泣いてるのかい?」


「ぐすっ。馬鹿野郎、俺が泣くわけねぇだろ!泣いてねぇよ」


「そうかい?そりゃ、失礼したねぇ」


 ミランダ姐さんは、何も言わずに俺のことをただ抱きしめてくれていた。


【ミランダ視点】


 洞窟の外を出て聞こえてきた声にアタイは驚いた。

 こんなところに居るはずがないと思っていた坊ちゃんの声だったからね。

 一瞬、行方不明になったアタイのことを心配して探しにきてくれたのかと思ったが、そんなことあるわけがないのはアタイがよく分かってる。

 だって、坊ちゃんが旅立ったのはアタイが行方不明なるよりも前だからね。

 にしても、やっぱり坊ちゃんは暖かくて気持ち良い。

 それに坊ちゃんの中に溢れる勇者の光とやらのお陰で、ぼんやりとしていたアタイの頭もハッキリとしてきた。

 アタイは、坊ちゃんに陛下がろくな金も装備も渡さなかったがために街の人に対して勇者特権を使用した話を聞いて、キングクレスト王10世につかみかかる勢いで、怒鳴り込んだのだ。

 そして、追放処分を受けた。

 こんなこと、とても坊ちゃんには言えない。

 言えば、きっとアタイの眼が見えないぐらいのことでワンワンと泣く坊ちゃんの心を傷付けてしまう。

 もう汚れてしまったアタイが坊ちゃんの隣に立つことはできなくても坊ちゃんの重荷にはなりたくない。

 だって、アタイは坊ちゃんのことをお慕いしてるのだから。

 大丈夫ですよ坊ちゃん。

 アタイなんかのために泣く必要なんてありません。

 アタイなんかのために坊ちゃんが復讐心に駆られる必要もありません。

 アタイ1人で、ケジメは付けます。

 アタイに坊ちゃんがゴブリンに捕えられたなんて嘘の情報を持ってきた心の綺麗な貴方と雲泥の差ぐらいあるクソな弟とアタイの眼に見えなくなる呪いをかけたクソ魔導士の女は特にね。

 ここまでお読みくださり、ありがとうございます。

 少しでも楽しい・面白い・続きが見たいと思って頂けましたら、下にある⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎から評価してくださいますと執筆活動の励みとなります。

 第76話は、1月12日の月曜日のお昼の12時を予定しています。

 それでは、次回もお楽しみに〜

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ