声は男で身体は女でござる!
【風魔光太郎視点】
ふむ、あくまで奇襲するつもりでござるか?
それならば。
「わかった。降伏する。俺のことは好きにしてくれても構わない。仲間たちのことは見逃してくれないか?」
「承知したでござる」
聞こえてきた声を聞く限り男でござるな。
ゴブリンが生産力の無い男を連れ去るなどあり得るのでござろうか?
その辺りのことも奥の方から現れた声の主から。
んん?
着ている服こそ男物ではあるものの、その胸には男にしてはあまりにも立派な2つのお山があるでござるな。
「この姿に驚かせてすまない。俺も目覚めたら身体が女になっていたとしか言えない。むしろ、こちらが理由を知りたいぐらいなんだ」
「ふむ。こちらもそのような状況にありながら押しかけてしまったこと申し訳ござらぬ。だがそのような現象、拙者の理解の範疇に無いでござる。ゴブリンは、苗床を増やすために男を女にする薬でも開発していたのでござるか?」
「どうだろうな。ゴブリンにそこまで高度な知能は無いはずだと思いたいが。現に目の前に人語をペラペラと話すゴブリンがいるからな自信がねぇ。ハァ。ハァ」
「どうしたでござるか?」
「あまり近付かないで貰えると助かる。初めての女の発情期って奴に抗うのが大変なんだ」
確か、昔読んだ本に女は男の数倍は感度が高いと書かれていたことがあったでござるな。
成程、身体が男から女に変わると感度も大幅に変わり抗うのが大変だということでござるか。
ふむ、なら一度発散してもらった方が良さそうでござるな。
「土遁、石室の術からの土遁、穴掘りの術からの水遁、水流しの術からの火遁、湯沸かしの術でござる!オマケに音遁、防音の術でござる。まぁ、兎に角、それに抗えないのならここで発散するが良いでござるよ。現状、男に戻る方法がわからない以上、当分は女として生きていくしか無いのでござるから」
「アンタ、ゴブリンメイジだったのか。いや、その割には接近戦も得意そうに見える。不思議なゴブリンだな」
「ゴブリンではない、風魔光太郎でござる」
「それはすまない。有り難く使わせてもらうとする。俺の名は、アオバだ」
「ではアオバ殿は、仲間たちも連れて風呂を堪能すると良いでござるよ。拙者は、料理を振る舞うでござるからな」
「風呂に料理を振る舞うゴブリンがいるなんてな」
「風魔光太郎でござる」
「悪かったよ」
【アオバ視点】
不思議なゴブリンだ。
こちらの言葉を百理解しているどころか会話が普通に成立してた。
それだけならまだしもまるで人のように振る舞っていた。
そして、捕虜である俺たちに対して人道的でもある。
今のところ手を出す様子すら無い。
俺は未だ放心状態の仲間たちを抱えて、風呂場へとやってきた。
大浴場のある街で仕事をした時に風呂に入ったことがある。
その時に貴族は毎日こんな良い風呂に入っているのかと思ったものだ。
それが今、目の前に普通にあるんだからな。
これを簡単に作り出すとかますます不思議なゴブリンだ。
フウマコウタロウと言ったか?
コウタロウか。
シャワーまで完備されてるなんてな。
あぁ、気持ち良い。
そこら中から今致している声さえ聞こえなければより穏やかな気持ちで、風呂を堪能できたんだろうが。
まぁ、そういう俺も限界だ。
女の身体がこんなに気持ち良いなんて、知りたくなかったぜ。
風呂から上がった俺たちに当然の如く食事を振る舞うコウタロウ。
その姿を見て、ゴブリン憎しと騒いでいた面々も大人しく食事にありついている。
そうだよな。
こんなに美味しそうな御馳走が目の前に並んでるのにお預けなんてできるわけねぇよな。
【風魔光太郎視点】
初めこそ皆怪訝な目を向けてきたでござるが。
「おかわり!」
「はいでござる!」
「こっちもおかわり!」
「はいお待ちをでござる!」
「俺もおかわり!」
「はいよでござる」
一度、食べ始めるとこの通りあちらこちらからおかわりと呼ばれるでござる。
またゴブリン肉で申し訳ないのでござるが本日のお品書きは、柔らかいゴブリンの肉をふんだんに使ったローストビーフである。
米があれば拙者も何倍も食えそうでござるが。
「料理長、とても美味しかったです!」
「拙者が料理長でござるか?」
「こんな美味い料理食ったことねぇ。その姿も世を忍ぶ仮の姿とかなんだろ。納得だ」
「いや、この姿こそが拙者の真の姿でござるが」
「またまたぁ。本当は人間であったのにゴブリンに姿を変えられてしまったんだろ。許せねぇこんな美味い料理を作る人がゴブリンに変えられるだなんて」
「まぁ、元が人間だったのは間違いないでござるが」
「ぐぬぬ。男を女に変える薬だけでなく人をゴブリンに変える薬まで開発しているなんて、全く許せねぇぜ」
「そんな薬の存在、拙者は知らないでござるが」
「お前たち、良い加減にしろ!コウタロウ殿が困っているだろう。ゴブリンとか見た目に何の意味がある。俺は自分が女になって、見た目に意味がないことがよーくわかった。人は中身だ。コウタロウ殿の中身は、真っ当な人だ。それで良いではないか!それに俺は決めた。コウタロウ殿。いやコウタロウ様、俺をコウタロウ様直属の影として雇っていただきたい!」
「教官、ずるいぞ!俺も」
「俺も」「俺も」「私も」
「では、皆を拙者の村に迎え入れるでござるよ」
1番最後の声の人だけ声も中世っぽくて、本当にどちらかわからないでござるな。
1番最初に拙者の料理が美味しかったと話しかけてくれた黒髪のショートカットが似合う可愛らしい女性でござるよ。
ここにゴブリンの赤ちゃんは居なかったのは気がかりでござるがまぁ村人を5人確保できたということにしておくでござるよ。
ここまでお読みくださり、ありがとうございます。
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第67話は、12月22日月曜日のお昼の12時を予定しています。
それでは、次回もお楽しみに〜




