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女戦士は、驚きの連続でござる!

【女戦士視点】


 風呂なんて、貴族だけが嗜むものとばかり思っていた。

 それが今は、どうだろう。

 私たち冒険者見習いだけでなく町娘たちも一緒に。

 風呂に入った途端、変化は突然起こった。

 今まで虚だった町娘たちの目に正気が戻ってきたのだ。


「ここは?何故、風呂に?私は助け出されたのでしょうか?洞窟の中?そうではないのですね。なら、これは夢?」


「夢じゃない。助けが来た。その人が簡易風呂を作ってくれたのだ」


 私はもう元に戻ることはないと思って、解放していた町娘が元気になった姿を見て、そう言うしかなかった。

 君を助けたのは別のゴブリンだとは今は言えない。

 思えば、先ほどから私は驚いてばかりだ。

 あのゴブリンはゴブリンメイジだったのだ。

 目の前で次々と組み合わされる魔法の数々は一瞬のうちに風呂を作り出した。

 そしてそれを惜しげもなく提供してくれる。

 あまつさえ、食事の用意をしておくとまで言っていた。

 まぁ、味の方は期待していない。

 この世界の食事など味気ないものが多い。

 腹さえ満たせれば私は満足だ。

 それにしても、彼女たちが救われて本当に良かった。

 その一点だけはあのゴブリンに感謝してやろうではないか。

 だが、この後も驚きの連続だったことは言うまでもない。


【風魔光太郎視点】


 幸せ〜な表情で出てくる女戦士御一行は目の前にある料理に驚きを隠せなかったどころか誰かれかまわず我れ先にと食べ始めた。


「ちょいとゴブリンの肉の処理を手伝って貰って申し訳ないでござるが」


「はっ!?これがこれがあの柔らかいだけで弾力がないゴブリンの肉だと言うのか!?」


 ほほぉ。

 先程、味なんか期待しないと言われた女戦士殿の驚きは下準備を頑張った甲斐があるというものでござるよ。

 まぁ、包丁で。ゴホン。拙者の場合は風の魔法ででござるが。

 その際に筋繊維をできるだけ残して、加熱時間を増やし、柔らかい肉を硬くして弾力を出しただけなのでござるが。


「そうでござるよ。それとおーい君たちも食べていいでござるよ」


 風魔光太郎は、隠れていたゴブリンの子供を呼び寄せる。

 その招きに従い、テクテクと歩いてくるゴブリンの子供たち。


「美味い美味い。これ本当に美味しいねお母さん」


「・・・。なぁ、これに何か変なものでも入ってるのか?私の聞き間違いでなければ、この子の言葉が分かるのだが。いや、普通に話してるのだが!?」


 するとゴブリンの子供たちがこのように流暢に話し出すものだから女戦士たちだけでなく目が虚な状態から回復した町娘も一緒になって、ゴブリンの子供と会話をしながら食事を楽しむのだった。


「いやぁ。先程から驚きの連続だ。貴族しか入れない風呂には入れるし、飯も美味かったし、何と言ってもまさか自分の子と人のように会話できるようになるとは思わなかったぞ。本当に良いゴブリンなのだな?」


「だから最初に助けに来たと言ったでござるよ」


「母さん、さっきの言い方は失礼だよ。あのお名前をお伺いしても構いませんか?」


「拙者は、風魔光太郎と申すでござるよ」


「風魔様ですね。母さんが失礼しました」


「構わぬでござるよ。それで、貴殿らは他に行くところはあるでござるか?」


「私はこの通り冒険者なんかやってるからね。帰る家は持ってないよ」


「僕は母さんの行くところが家になるかな」


「ふむぅ」


 考え込む風魔光太郎。


「家の方に帰ろうかと」


 1人の町娘が言うとその人の子供らしきゴブリンが。


「じゃあ、ママとはここでお別れだね。せっかくお話できるようになったのに、僕はきっとママの街だと忌み嫌われちゃうどころか殺されちゃうから」


「そんなこと私がさせない!だって、貴方は普通に話せるしみんなも受け入れてくれる。大丈夫よ」


「無理だよ。ママだって、本当は無理だってわかってるでしょ。こんな僕を産んでくれてありがと。これからは頑張って1人で」


 ぎゅーっと抱きしめられるゴブリンの子供。


「ママが間違ってた。村には帰らない貴方と一緒にいる。それにこれだけの仲間が居たら自給自足で生きていけるはずよ」


「ママ〜」


 うむうむ。

 仲良きことは素晴らしきことでござるよ。


「なら、拙者が新しく作ろうと思ってる街に皆を招待するでござるよ。更に今なら一家に一つ風呂を完備するでござるよ」


「喜んで付いて行きます!」


 さっきの町娘が即答した。


「飯はずっと美味しいものが出ますか?」


 続いて別の町娘が言う。


「それは約束はできないかもしれないが希望者には料理作りを教えてやるでござるよ」


「行きます!」


 風魔光太郎の言葉に納得したのか頷いて、二つ返事する。


「アタシ、ガサツでお皿とかすぐ割っちゃうかもだけど大丈夫かい?」


 女戦士が目覚めた時に別の町娘を解放していた女戦士が言う。


「人には適材適所というものがあるでござるよ。それならば、村の守り手になってもらいたいでござるよ」


「成程ね。こんなアタシでも役に立つ仕事があるってんなら喜んで行くよ」


 ここまで来ると話を聞いていた女戦士は、こうやって穏便に苗床として回収しているのかと感嘆する。


「こんな方法で肉壺たちを勧誘するとは思わなかったよ。良いよ。付いて行ってあげようじゃないか領主様」


 こうして、一つ目の巣のほぼ全員を村人として勧誘した風魔光太郎であった。

 ここまでお読みくださり、ありがとうございます。

 少しでも楽しい・面白い・続きが見たいと思って頂けましたら、下にある⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎から評価してくださいますと執筆活動の励みとなります。

 第64話は、12月17日水曜日のお昼の12時を予定しています。

 それでは、次回もお楽しみに〜

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