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見栄を張りつつも内心は焦っているでござる!

 再び、視点は風魔光太郎たちへと戻る。

 ゴブリン連合軍と戦ったところからそれほど遠く無いところに一つ目の巣の反応があるようで、ゴブリン兄弟に案内を任せる風魔光太郎。


「しかし風魔様は、本当にアッシらとは違うんですねぇ」


「いや、同じ母から産まれたでござるが何処が?」


「ハハッ。そういうことじゃなくてっすね」


「弟はこう言いたいのです。風魔様は、ゴブリンとしての探知能力を失っていると」


「ふむぅ」


「いや、悪気があるわけじゃありませんって!むしろ、本当に人間なんだなって羨ましいぐらいっすよ。ただ、俺たちゴブリンには固有の特性がありやして、嗅いだ雌の匂いを辿れるというものなんすよ。で、大概のゴブリンはその女とやってるもんですから匂いが染み付いちゃってまして。その匂いを辿ると近くに反応があるみたいなんすよ」


「!?」


 何ということでござるか。

 それは即ち拙者が幼少期はサバイバルに放り出され、就職後は仕事に追われ、定年後は研究に明け暮れと童貞を拗らせているということでござるか!?

 確かに女性との接触は無かったでござるが風俗ぐらいは......いや、行ったことないでござるな。

 それは即ち、拙者が童貞ということなのでは無いでござるか!?

 雌の匂いとか言われても全くわからぬでござるしな。

 うむうむ、納得でござる。

 ならばできないことはできる人間に振り分けるでござるよ。


「ならば、お前たちが案内するでござる」


「勿論っす」


 こうしたやり取りを見ていた勇者クラッシュは、思ったことを口にする。


「てかよ。ゴブリンパイセンたち、アイツと話す時だけ俺の時と明らかに態度変わりすぎだろ!」


「テメェと一緒にすんなへっぽこ勇者がよ。そうだな。泣き付かずにマミィ様もどきを倒したら少しは認めてやるよ!」


「いやアイツのペットもどきって、それもうキングホークなんだわ!キングホークを1人で倒せって無理なんだわ!アイツら、空の王者なんだわ!村とかに出たら村人が裸足で逃げ出すレベルなんだわ!そもそも、ゴブリンパイセンたちが1人で戦い抜けるのがおかしいんだわ!」


「マミィ様のように特殊個体でも無ければ、あんな奴らなど羽に棒手裏剣を打ち込めば撃ち落とせる」


「いやいやいや、あの高さを飛んでる奴に弓矢とか届かないんだわ!アンタらのその棒状の訳のわからない木の杭がおかしいんだわ!」


「風魔様が一本づつ丁寧に作った棒手裏剣を木の杭なんて呼ぶんじゃねぇよ!このへっぽこ勇者が」


 この様子を風魔光太郎は『ホッホッホ、賑やかで良いでござるな』なんて思っていた。


「風魔様、こちらの洞窟から反応があります」


「うむ。おーい、誰かいるでござるか?」


「いる!いるよ!助けが必要なんだ。入ってきてくれないか」


 呼びかけた返事に声が返ってきたので、風魔光太郎は皆を制止し、1人で洞窟の中へと入っていった。

 風魔光太郎があたりを見回すと御世辞にも良い装備とは言えなさそうなボロボロの装備を着て、腰にある剣を抜こうとする女戦士が何人かいた。


「やめておいた方が良いでござるよ。貴殿らが剣を抜くよりも先に拙者が棒手裏剣を投げる速度の方が圧倒的に速いでござるから」


 これだけたくさんの人に対して、できれば殺傷ごとは避けたいので、半分はハッタリで半分は本心のような言葉をいった風魔光太郎。

 ハッタリなのは、この言葉を深読みした場合、命を取ると誤解されるであろうこと。

 本心は、剣を抜いたら棒手裏剣を乱れうちして、全て弾き飛ばすつもりであること。

 そして、恐らくそれはものの一瞬であること。

 そしてそれと同じくらい内心焦ってもいた彼女たちが剣を抜いて本当に襲いかかってきたら殺すことを視野に入れないといけないことに。


「あ、誤解しないように聞いて欲しいでござるが。拙者は、貴殿らの命を取るつもりはないでござるよ」


「ならば、身体目当てということか。ゴブリンというのは、本当に節操の無い連中だな」


「やはり誤解しているでござるな。拙者は、敵対意思の無い相手をどうにかする犬畜生ではござらんよ。助けに来たと申したでござろう?」


「ふん。どうだかな。どうせ、その後助けてやったのだからと身体を求めるのだろ?」


「ハァ。先ずは、そこの意識が虚な人たちをお風呂に入れるでござるよ」


「風呂などここにあるわけがないだろう!それに風呂は家族が嗜むもので私たち平民はシャワーで流す程度だ!」


「土遁石室の術からの土遁穴掘りの術からの水遁水流しの術からの火遁湯沸かしの術からのトドメの土遁岩壁の術でござる!」


 もう当たり前のようにネーミングセンスのない術名で風魔光太郎は即席の更衣室と風呂を作り、その周りを岩壁で囲んだ。

 目の前で起こる超常的な現象に口をあんぐりしている女戦士たち。


「目が虚な人から順番に身体を綺麗にしてやると良いでござるよ。皆が風呂に入っている間に」


 ぎゅるるるる〜と目の前の女戦士の腹から音が鳴る。


「ハハハ。料理の支度としておいてやるでござるよ。除く趣味はないでござるから安心して風呂に浸かると良いでござるよ」


「ゴブリンの作った飯など期待できるものか」


 なんて捨て台詞を吐いて、女戦士は皆んなで虚な人たちを介抱して、仲良く風呂へと入りに向かうのだった。

 ここまでお読みくださり、ありがとうございます。

 少しでも楽しい・面白い・続きが見たいと思って頂けましたら、下にある⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎から評価してくださいますと執筆活動の励みとなります。

 第63話は、12月15日月曜日のお昼の12時を予定しています。

 それでは、次回もお楽しみに〜

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