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運ばれてきた物でござる!

 前回のあらすじ。

 狼男32人に囲まれ絶体絶命の風磨光太郎は、自身が編み出した忍法手裏剣乱舞の術を使い、一心不乱に50本の棒手裏剣を投げ付けた。

 その威力は凄まじく、狼男だけでなく赤猪、角兎、鷹などの魔物の急所も撃ち抜いていた。

 三半規管が弱かったのか過度のストレスによる影響かその場で眠ったように倒れる風魔光太郎であった。

 うーん。


「ふわぁ〜よく寝て頭もスッキリでござるな。にしてもこんな無防備な拙者を前に喰うのを待ってくれるとは狼男たちも存外優しいでござるな。もう、寝たフリは良いでござるよ。さぁ、拙者を食べるが良いでござる」


 あれ?

 おかしいな。

 棒手裏剣の命中率は低いから数で勝る狼男32人を全滅させる事はできないはずなんだけどな。


「おーい、もう良いでござるよ」


 声を掛けて、ペシペシと頬を叩いてみたのだが起き上がる気配は無いか。

 まさか拙者、やらかしちゃったのかタジタジ。

 命中率の低い棒手裏剣で、全滅させちゃうとは我ながら鍛え抜かれた忍びの技に何も言えねぇ。


「グゥゥゥゥゥゥゥゥゥ」


 ヤベッ。

 そういやぁ何も食べてなかったんだったな。

 この狼男の肉って、食べれるのか?

 流石に生は危険だよな。

 多分、死んでたから襲われなかったとしたら俺が寝てる間、少なくとも時間は経過してるし。

 良し、取り敢えず解体して、火を起こして、焼いて食べてみよう。

 命を奪った責任は取らないとな。


 風魔光太郎は、自身の尖った爪で器用に皮を剥いで、肉と毛皮と骨や牙などの素材に解体していく。


「こういう時、某ファンタジーゲームのようにアイテム収納のスキルがあったら便利でござるのにな」


 呟いた言葉を不思議に思いつつも風魔光太郎は未だにここを昔の戦国時代であると信じているため首を振った。


「狼がいたのならここは紛れもなく昔の日本であろうことは間違いないでござる」


 取り敢えず、この見た目を隠す手段を探して、人里に降りれば、御先祖様が何処にいるかわかるはずだ。

 にしてもナイフ要らずで解体できるなんて、ますます優秀では無いか緑の化け物とやらは。

 ハッハッハ。


「ふぅ〜これで取り敢えず解体は終わりでござるな」


 ガサガサ。


「て、敵襲でござるか!」


「キュキュー」


 な、何だこの水溜まりが固まったかのような丸い生き物は!

 こんなのファンタジーゲームに出てくるスライムまんまでは無いか!


「キュキュー」


 ん?

 何か、吐き出そうとしてるのか?

 一体、何を?


「キュッキュー」


 風魔光太郎の目の前に現れたスライムは、次々と魔物を吐き出していた。

 そのどれもに風魔光太郎の投げた棒手裏剣が刺さっていた。


「キュキュー」


 こ、この傷は、言い逃れができない。

 まさか、このスライムは拙者を裁きに来たのか。

 某有名RPGでは、最弱とされるスライムだが見方を変えれば何でも食べ尽くす大喰らいなどと言われて、畏れられていたりもする。

 きっと、このスライムは拙者を丸呑みしようと。


「キュッ?」


 触手のような手がこちらに伸びてきて、あぁ拙者の命もここまでか。

 あれっ一向に食べられる気配がない。

 それどころか、これは肩をトントンされているのか?

 な、何か伝えたいことがあるのか?


「キュー」


 拙者が解体した狼男を指して、次に今スライムが吐き出した魔物を指している。

 まさか、これも解体しろと言ってるのか?

 わざわざここまで運んで来たと。

 ん?

 運んで来た?

 何で?

 意味がわからないのだが。


「キュキュッ?」


 だが、なんかずっと見てると愛らしい生き物に見えてきた。


「わ、わかったでござる」


 スライムが運んで来たのは、1本角の生えた兎が12匹と真っ赤な猪が4頭と大型の鷹が2羽である。

 拙者の周りに倒れていた狼男32人と合わせるとちょうど50本の棒手裏剣の数と一致する。

 すいませんねぇ。

 磨き抜かれた技が凄すぎて、棒手裏剣でも百発百中ですわ!

 ハッハッハ。

 って、あり得ないよなぁ。

 これは流石に。

 拙者でもわかる。

 狼男32人だけでなくスライムが運んで来てくれた魔物も全て、急所に刺さって絶命している。

 どんなに磨き抜かれた技を持ってしても適当に投げたであろうものまで急所に突き刺さっているのは、おかしい。

 考えられるとしたら投げたものが百発百中で急所に飛んでいくとかそういう特殊なものを持っていない限りは。


「キュキュッ?」


「あ、申し訳ないでござる。すぐに解体するでござるよ」


「キュキュー」


 なんか目がキラキラしてこっちを見てる。

 うん。

 この訳のわからない生物がちょっと愛おしいぞ。

 拙者は慣れた手付きで、次々と魔物を解体した。


「キュイ。キュイ」


「ダメでござる。生で食べるとお腹を壊すでござるからな。少し待つでござる」


 こんな時に火遁かとんの術が使えたら良いんだけどな。

 あ、火遁の術といっても想像しているようなことはできない。

 勿論、火を吹いたり火を操ったりなどは皆無だ。

 拙者ができるのは精々薪や藁に火を付ける程度の敵の気を逸らす術や火薬を用いた火矢や火薬を括り付けた火車剣かしゃけんを使う程度である。

 モノは試しにやってみるか。

 枝で焚き木を組んでと。


火遁かとん蛍火ほたるびの術でござる」


 火遁蛍火の術は、蛍のお尻が光る程度の炎を扱う術であり、味方に拙者の居場所を知らせるための狼煙を用いる時に使う程度の術なのだが。


 風魔光太郎の見つめる先では、焚き木の中で轟々と燃える火があった。


「キュゥゥゥゥ」


 スライムの元気がみるみるなくなっている!?

 そうだ、確かスライムに火は天敵だって、多くのファンタジーゲームでも火が弱点に設定されていることが多かった。

 こ、こんな可愛い生物を殺すわけにはいかん。


水遁すいとん水鉄砲みずでっぽうの術でござる!」


 これも拙者が考案した遁術の一つで、簡単な話、お風呂やプールや川の中と。

 まぁ簡単な話、水のあるところでしか使えない。

 両手を組んで、ほらその指の隙間から相手目掛けて、水を掛けて遊んだことあるよな。

 そういう術だったのだが。


 風魔光太郎の見つめる先では、手から放出される水を浴びて、嬉しそうにしているスライムの姿があった。


「キュキュー」


 拙者の遁術も戦国時代では、ここまで強化されるのか。

 恐るべし忍びが最も栄えた戦国時代であるな。


 そうこんな不可思議な現象を見てもまだ風魔光太郎は、この世界を日本の戦国時代だと思っているのだった。

 火に水を操るなんて、ファンタジー世界特有の魔法だというのに。

 ここまでお読みくださり、ありがとうございます。

 少しでも楽しい・面白い・続きが見たいと思って頂けましたら、下にある⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎から評価してくださいますと執筆活動の励みとなります。

 感想も読んで返信させていただきますので、何卒宜しくお願いします。

 第5話は、明日のお昼の12時を予定しています。

 それでは、明日もお楽しみに〜

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