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狼男との死闘でござる!

 前回のあらすじ。

 森に放逐された風魔光太郎は、幸いにも小川を見つけ、飲み水を確保することに成功したのも束の間、水面に移った自身の異様な姿に驚き、大声を上げ、落ち着いた後に水を飲んでまた大声を出し、二本足で立つ狼の群れに襲われる。

 命に関わる飲み水の確保を最優先に掲げ、狼男の群れと戦うことを決め、棒手裏剣を作ったのだが予想以上に大量に出現した狼男を前に悲痛な心の叫びを上げたのだった。

 目の前に続々と現れる狼男の群れの数は32人。

 それに対して、風魔光太郎が使える棒手裏剣の数は、50本と少し頼りない。

 この状況を前にどうする風魔光太郎?


「グルァ。グルァ」


「あの〜話ができる狼男さんとか居ないでござるか?」


「グルァ。グルァ」


「そうですよね〜居ないでござるよね〜」


 この緑の化け物も群れを形成していた。

 多分、この森の生き物は群れて生きているのだろう。

 そこを1人きりの獲物が通ったら、そりゃこうなるか。

 今度は流さないと包囲してくるあたり、狩りの本質をわかっているのは見て取れる。

 幸い、少し齧られる程度なら許容して、近くに来たところを忍法にんぽう手裏剣乱舞しゅりけんらんぶで一気に殲滅するしか生き残る術はないか。

 忍法手裏剣乱舞とは、一対複数を想定して拙者が考案した包囲殲滅の手段である。

 まぁ、コレをやるのは卍手裏剣まんじしゅりけん、別名を風魔手裏剣ふうましゅりけんといい、ご先祖様が考案した手裏剣を用いた事しかなく棒手裏剣でやった事は無いのだが。

 囲まれた状況では、なりふり構って居られないのも事実だ。

 にしても拙者の匂いを追って、仲間を増やし包囲して、拙者の逃げ道を塞ぐとは、中々戦術めいたことをしてくる狼男では無いか。

 話せないだけで知能はそこそこあるのだろうか?

 しかし、拙者はやられるわけにはいかんのだ。

 仕えるべき主家と御先祖様の名誉のために。


「グルァ。グルァ」


 一斉に飛びかかってきたか。

 良し、来るがいい。

 見せてくれよう。

 我が忍法の恐ろしさを。


「忍法手裏剣乱舞の術でござる!」


 4本づつ指の間に挟んだ棒手裏剣を身体を捻りながら投げまくる。

 50本投げるまで拙者は止まるわけには、いかねぇな。


「ギャン」


 呻き声を上げて、絶命していく狼男。

 風魔光太郎が投げ終わった時には、近くには狼男の死体、遠くには、身体が一際大きく真っ赤な猪の死体と角が生えた兎の死体と恐らく兎を追いかけていたのであろう大型の鷹の死体が転がっていた。

 その数合わせて、狼男が32人、猪が4頭、兎が12匹、鷹が2羽の合計50である。

 そう、一心不乱に命中率なんて考えもせずに投げまくった棒手裏剣50本が全て、的確に生物の急所を貫いていたのである。


「ハァ、ハァ、ハァ。どうしたでござる!もう、限界でござるか!狼男も大したことないでござるな!ハッハッハ」


 つ、強がっては見たものの一心不乱に投げまくったせいか目が回って、視界が定まらないからどうなったかわからないのは難点だな。

 今度使う時は改良を試みないと。

 それにしても、大声を出してみたものの狼男どもが襲いかかってくる気配は無いな。

 命中率を重視していない棒手裏剣は、我々忍びよりも武士が使う目眩し用の遠距離武器として重宝されていた歴史がある。

 刀の鞘に仕込んだり、服の袖に隠したりと持ち運びも便利だったからな。

 だから棒手裏剣で、あの数を殲滅できる事は、ほぼほぼあり得ないのだが。

 ダメだ。

 目が回って、しばらく動けそうに無い。

 三半規管は、それ程強く無いのか。

 ただの運動不足なだけか。

 いや、それは無いな。

 拙者の忍び走りに付いてきたのだ。

 とすると、考えられるのは、知らず知らずのうちにストレスを感じていたということか。

 どうにも目が回って、立ち上がる事は叶わん。

 今は、少しこのまま眠りたい。


 風魔光太郎は、目眩からくる貧血のような症状で、その場に倒れ込むように、横になって、目を閉じた。

 不思議とこの後襲撃はぴたりと止むことになった。


〜森のあちこちで話し合う魔物〜


「ブーブー」


「ブッ」


「プープー」


 この鳴き声のような言葉で会話をしているのは、風魔光太郎が意図せず倒した角のある兎、ホーンラビットである。


『ねぇねぇ聞いた?森に1人でいるゴブリンを襲ったワーウルフの大軍が一瞬にして殲滅されたらしいよ』


『ゴブリンがワーウルフを?それってホントなの?』


『僕も聞いたよ。ワーウルフだけじゃなくて、レッドボアやキングホークまで、ゴブリンに倒されちゃったんだってさ。信じられないよね〜』


『・・・。』


 ここに集まっていたホーンラビットの全てが言葉を失って、呆然としていた。

 また別のところでは。


「プギッ」


「フゴッ」


 この鳴き声で会話するまるで夫婦のように寄り添い合う2匹の猪の魔物は、先程のホーンラビットの話に出てきたレッドボアである。


『妻よ。信じられない話を聞いたのだが聞いてくれるか?』


『まぁ、どんな信じられない話をお聞きになりましたの旦那様?』


『ふむ。これは聞いた話なのだが。ゴブリンがワーウルフの大軍を壊滅させ、ホーンラビットや我々の同族も被害を受けたそうだ』


『まぁ。洞窟に篭っていつも怯えているゴブリンがですか?それは、あり得ないのではなくて?』


『う、うむ。ところがだ。さらにあり得ない話なのだが空を飛んでいたキングホークが撃ち落とされたそうだ』


『・・・。』


『妻よ。妻よ。我を置いて行かないでくれぇ』


 早くここから逃げるべきだと判断した片方のレッドボアが全速力で逃げ出すと、その後に続いて逃げ出した。

 また別の場所では。


「キィーッ、キッキッキッ」


「カァッカッカッカッ」


 この鳴き声で空で会話をしているのは、この森の空の王者、鷹の魔物キングホークである。


『おい、今の見たか?あ、有り得ねぇだろアレ?』


『見た見た。なんなんだよアレ?』


『俺にわかるかよ。だが、なんか鋭利な棒のようなものが飛んできたかと思ったらホーンラビットを視界にとらえてた仲間が一瞬で撃ち落とされてた。あ、あんな事がゴブリンにできんのかよ?』


『そ、そんなの知るわけねぇだろ。なんか今は仰向けで、無防備そうに見えるが手を出すなって、言っておけよ!俺はまだ死にたくねぇからよ』


『わかってるって俺だってまだ死にたくねぇよ。後ろ飛んでたアイツらには悪いけどよ。俺に当たらなくて良かったぜ』


『あぁ、マジでな』


 そう襲撃が止んだのは、得体の知れない攻撃のするゴブリンに周りの魔物が恐れ慄いたからである。

 手を出してはいけない存在だと認知したと言えば良いだろうか。

 この時、この森の勢力図は大きく変わろうとしていることを風魔光太郎はまだ知らないのであった。

 ここまでお読みくださり、ありがとうございます。

 少しでも楽しい・面白い・続きが見たいと思って頂けましたら、下にある⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎から評価してくださいますと執筆活動の励みとなります。

 感想も読んで返信させていただきますので、何卒宜しくお願いします。

 第4話は、明日のお昼の12時を予定しています。

 それでは、明日もお楽しみに〜

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