探せど見つからぬでござる!
前回のあらすじ。
キマイラを気絶させ長耳少女を助けた風魔光太郎。
ウンディーネがお嬢ちゃんなどと呼ぶので、ここは年長者として、挨拶をせねばと名乗る風魔光太郎。
フェランティーナと名乗った名前が少し破廉恥なエルフ少女とウンディーネがキマイラは人に懐かないから殺すべきだと言う制止の言葉も聞かず風魔光太郎は、キマイラと心を通わせるべく、エルフの少女を襲おうとしていたぐらいだからお腹が空いてるのだろうと胃袋を掴む作戦に出た。
塩で味付けしたワーウルフの肉をこんがりと焼いて、キマイラへと差し出す。
警戒していたキマイラもおずおずと食べ始め、風魔光太郎と心を開く。
これを頃合いと見た風魔光太郎は、タマと名付けたキマイラへと近付き、頭に手を乗せて、獣遁、心通いの術を使う。
風魔光太郎は、可愛い猫撫で声でおねだりするタマのためにワーウルフ狩りへと身を乗り出すのだった。
タマの背に乗りかけたつもりだったがいつのまにかウンディーネさんとフェランティーナさんも乗っている。
いや、何度も思うがなんたる破廉恥な名前だ!
本人も言うていたし愛称のティナさんと呼ぶことにしよう。
「ところでウンディーネさんだけでなくティナさんもしれっとタマの上に乗ってるのは、どうしてでござる?」
「光太郎ちゃん!私だけどうしてさも当然になってるのよ!」
「はわわ〜。あの。その。お邪魔だったでしょうかぁ?」
「タマは、気にしないニャンよ〜。全然、重たくないニャンしね〜」
「ひぃっ。すみません。すみません。ダイエットしますぅ」
「ティナ、タマは重たくないって言ってたでしょうが!ダイエットしなくても良いのよ!って、重たくないって、それもそれで失礼でしょ!」
「御主人様〜人って難しいニャンよ〜」
うむ。
だが、ウンディーネさんは人ではないのだ精霊だ。
それも水の精霊だ。
そして、拙者のパーティで唯一のツッコミ担当なのだ。
耐えよ。
耐えるのだタマよ。
天然ドジっ子のティナさん、マイペースなタマと拙者。
ウンディーネさんが居なければ、色々とまずいのでは?
「しかし、いざ探すとなるとワーウルフとやらは、全然居ないのでござるな」
「こんな魔の森の危険生物に跨って、始まりの森を闊歩したら誰も出て来んわ!無限に聖水撒き散らしてるようなもんだわ!」
お!
ウンディーネさんのツッコミは、今日もキレッキレだな。
「ウンディーネ様のおっしゃる通りなのですぅ」
ティナさんは、色々と詳しいようだが。
そう言えば、タマから助け出す時に冒険者かと聞かれたな。
冒険者とは、何だ?
現代で言うところの部活か何かか?
そう言えば、ウンディーネさんもタマはAランクの冒険者が束になっても勝てないとか言っておったな。
「話は変わるがティナさん、冒険者とは何でござるか?」
「な、何とは?」
ん?
拙者の聞き方に間違いは無いと思うが。
もう一度聞いてみるとしよう。
「冒険者とは何なのでござるか?」
「んん?ひょっとして、お爺さんは、冒険者が何か御存じでは無いのでしょうかぁ?」
「うむ。先程からそう言ってるでござるよ」
「はわわ〜。すみません。すみません」
「そう言えば、私も冒険者の説明を光太郎ちゃんにしてなかったわね。ちょうどここに冒険者のティナがいるわけだし、色々と教えてもらいなさい」
「タマは、ワーウルフを探し疲れたニャンよ〜。お昼寝するニャンね〜」
「タマ、ゆっくり休むでござるよ。起きたらワーウルフの肉をあげるでござるからな」
「にゃにゃ〜。御主人様、大好きニャン〜」
タマはスヤスヤと眠りについたので、拙者はティナさんから冒険者の説明を受けるのだった。
「え〜ゴホン。まず初めに、このルナーリア大陸を治めている王様がいて、その下に貴族として、州を治める領主様がいますぅ」
「質問だが、その説明は冒険者を語る上で必要なことでござるか?」
「光太郎ちゃん、アンタ馬鹿なの?この大陸の説明までしてくれてるんだから有り難く聞きなさいよ!」
「う、うむ。失礼したでござる」
「ゴホン。いえ、では続けますぅ。その領主様には、騎士団という私兵を持っていますぅ。ですが、それは広く展開できるようなものではなく、各街の自衛組織として誕生したのが冒険者ギルドなのですぅ。ここまでは、わかりましたでしょうかぁ?」
「うむ。要は、領主が頼りにならないから自分たちで自分の身は守ろうと発足したということでござろう?良い、心掛けでござるよ。忍びとして、親近感が湧くでござるよ」
忍者の成り立ちも古くは、自衛のための傭兵稼業である。
支配者階級ではなくどちらかと言えば民間階級なのだ。
自分たちで身を守ろうと立ち上がった民間の者たちに親近感を抱いてもおかしくは無い。
「そ、その通りなのですぅ!ですが、そこにも明確な格差があって、領主様たちのお抱えする騎士団は、集団戦闘におけるスペシャリスト。冒険者で言うところのパーティーランクで言えばSランク以上がゴロゴロといるですぅ。対する、冒険者はと言えば、魔物との戦いで命を落とす者も多く、個人の力では、Sランクに到達する者がチラホラ、パーティーランクで言えば、Aランクにも満たない者たちが多いのが現状なのですぅ」
「ふむ。ところでティナさんは、冒険者で言うと何ランクでござるか?」
「わ、私は、一応Aランクですぅ」
天然ドジっ子、ティナさんがAランク冒険者!?
これは、人材不足が深刻なのでは?
「すみません。すみません。私なんかがAランクで」
「ティナ、そんなことはないわ。貴方の弓の腕前、状況判断能力の高さ、まだ見ていないけど魔法の質も相当なもののはず。今回もわざと仲間を助けるために転んだのよね?」
ウンディーネさんは、フォローをするつもりなのかしないつもりなのかわからないな。
「違うんですぅ。普通に石に躓いちゃったんですぅ」
「あ。そ。そうなのね」
ウンディーネさんが気まずくなってる!
それにやっぱりティナさんは、天然ドジっ子だった!
「ちなみにSランク以上の冒険者など存在しているのでござるか?」
「一応、古くは今やり数百年ほど前に私の村のギルドマスターを務めている母。ゴホン、エルフの女性が若い頃に旅をした仲間の1人がその当時から現在までの唯一のSSSランクの冒険者だったとお聞きしていますぅ。も、勿論その人は、エルフではありませんので、もう亡くなってますぅ」
「ふむ。理解したでござる。要は、今の冒険者では、最高でもSランクに到達している数名しか居らんということでござるな」
「はぃ。残念ですがその通りなのですぅ」
「あの光太郎ちゃん、これは別に擁護するとかじゃないけど。仕方がないことなのよ。今は、地脈の乱れの影響で、精霊の私たちですら姿を保つのがやっとなの。こんな状況で、魔物との戦いを繰り返す冒険者の死が後を絶たないのも。それだけ冒険者たちが命を削って、この地を守ってくれているということなのよ。それだけは、わかってちょうだい」
「ウンディーネ様にそう言ってもらえるときっと、母。ゴホン。ギルドマスター様も喜ばれますぅ」
ちょこちょこティナさんから母という言葉が聞こえるが。
まぁ、別に気にすることでもなかろう。
それならば、余計にこの状況で全く動かぬ領主という拙者の世界でいうところの大名どもの無能たるや。
一度、顔でも拝んでやらねばなるまいか。
領主の務めもろくに果たせぬ愚か者どもにな。
話を聞き終え、夜も更けてきた頃、草むらの向こうでは、静かに寝静まるのを待っていた集団がいたのだった。
このピンチにどうする風魔光太郎!?
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第13話は、明日のお昼の12時を予定しています。
それでは、明日もお楽しみに〜




