涙涙の魔王?
【魔王視点】
ひぃっ。
復活した父上のフリをして、バフォメットと細々と活動して、聖女の身体に封じられていたマリアンヌと私自身の力で生み出したナイトメアトレント、私なりに必死に立て直そうとしてたのに。
突然、魔の森の一角に棲みついた人間と魔族の混同部隊の訓練の恐ろしいこと恐ろしいこと。
あんなのに住みつかれたら敵わないと何回も魔の森の魔物たちをけしかけたんだけど…結果は惨敗。
それどころか、途中から向こうのキマイラとキングホークがこっちの魔物を自分たちのテリトリーに呼び込んで、狩り尽くす始末。
本当に恐ろしくて、ここ最近は魔王城の一室に閉じこもって毎日泣いている。
いつ、私が新たな魔王として殺されるのかとビクビクと眠れない日々を過ごしている。
しかもいつの間にかマリアンヌは完全な自分の身体を取り戻して、向こうに寝返った。
悲しい…すごく悲しい。
私、魔王軍を立て直すために頑張ったのに。
「大魔王様?今、宜しいでしょうか?」
あ、父上に仕えていた四天王の1人魔獣使いのバフォメットの声だ。
声色を変えて。
「どうしたバフォメットよ。余は今、余の領土に勝手に棲みついた奴らを倒す戦略を練るので忙しい」
「そのことで相談が」
バフォメットが相談?
嫌な予感しかしないけど聞くだけ聞いてみようかな。
「何だ。申してみよ」
「あのゴブリンを新たな魔王ということにして、人間国の大連合に討伐させれば良いのです。そうして、双方が潰し合ったところを大魔王様が喰らう。とても、良いとは思いませんか?」
な、成程。
それなら、私の身の安全も。
「良かろう。バフォメットよ委細任せる」
「承知」
ふぅ〜。
大丈夫、ナイトメアトレントちゃんの行方もまだわからないし、父上に仕えていた四天王の1人マリアンヌには裏切られたけど、まだきっと立て直せる。
頑張れ私。
「ひぃっ」
今日もドッカンドッカンと何かとやり合ってる声が聞こえるから外に目を向けた。
私は何も見てない。
火龍にアースワームにエンシェントオウルがそれぞれ精霊の姿になるなんて。
父上から昔人間はとても恐ろしいと聞きました…でも1番恐ろしい存在は常に身近にいたゴブリンだったんです。
どうして父上は、ゴブリンと仲良くしてくれなかったんですか!
そのせいで、娘が今大変な目に遭っているんですよ!
「ひぃっ」
今、凄い殺気がここに飛んできた気が…私は何もしてないのに…何でこんな目に…シクシク。
トントンとガラス戸を叩く音が聞こえる。
マリアンヌさん?
「やっぱり魔王ちゃんだったのね〜。大魔王様にしては、威厳が少し足りない気がしてたのよね〜」
「な、何のことだ。余は大魔王なるぞ。余を裏切ったこと後悔させてくれる」
「あ!そういうのもう良いから。魔王ちゃんが助かるビッグな提案を私は持ってきたんだけどな〜。聞く気が無いなら多分魔王ちゃん殺されちゃうな〜」
「一応、話を聞いてやろう。マリアンヌよ。話すが良い」
毎日泣いて暮らすなんて耐えられない。
「あら、そう。とーっても簡単よ。魔王ちゃんがコウタロウ様の女になって仕舞えば良いのよ」
コウタロウ様?
マリアンヌさんは、何を言ってるんだろう?
それに女になるって…私に身体を売れってこと!?
「まぁ、簡単に決断できない話よね〜。わかる、でもね。コウタロウ様は素晴らしいの。大魔王が例え復活したとしてもコウタロウ様の前では2分も経っていられないでしょうね」
それって、父上が経った2分で殺されちゃうってこと!?
人間の国をかつてあんなに震え上がらせた大魔王だよ?
コウタロウ様って人は、何者なの?
神なの?
とても信じられないよ。
「まぁ、驚いて声も出ないよね〜。でも魔王ちゃんなら理解できてるんじゃない?毎日繰り返されてる訓練なんだけど〜あれ初級魔法だからね」
はい?
あのドッカンドッカン、超級同士がぶつかるような音が初級魔法?
いやいやいや、それは流石に盛りすぎでしょ?
盛りすぎだよね?
盛りすぎだって言ってくれるよね?
「うんうん。そういう反応になっちゃうよね〜。だって、私が1番驚いているんだもの。アレが全部魔王ちゃんに向いたら私耐えられないと思って。だって魔王ちゃんはなーんも悪いことしてない良い子ちゃんだもんね」
う、うぅ。
マリアンヌさんは私のことわかってくれてるみたいで嬉しい。
「だからね。魔王ちゃんを私と同じようにコウタロウ様の女になってもらおうって考えたのだけれどどうかしら?良いお返事を聞かせてくれると嬉しいのだけれど」
あ、そうなんだぁ。
マリアンヌさんは、父上の愛人の1人だって聞いてたけど寝取られたのね。
父上の愛人が娘まで差し出そうとしてます…どうしたら良いですか?
返事は…あるわけないよね。
私だって、死にたくないし。
これは仕方ない。
仕方ないことなのよ。
魔王軍を立て直すためにコウタロウ様とやらを利用するのよ私!
「ふむ。素敵な提案だ。良かろう。娘とコウタロウとやらの結婚であれば許可してやらんこともない」
「あら〜ほんと。ありがとう〜私もこれ以上古巣が傷付くところを見たくなかったのよね〜。あの研究一筋の馬鹿なバフォメットはきっとこれからも研究材料の魔獣をぶつけてくるじゃない。まぁアイツは愚かな存在だし仕方ないかなって。でも魔王ちゃんは、まだなーんにもわるいことしてないから何とかして助けてあげたかったのよね」
うぅ。
マリアンヌさん、本当に良い人だ。
私のことこんなにも考えてくれるなんて。
「ということで交渉成立」
私の目の前が暗転するとマリアンヌさんと一緒にゴブリンの寝所にワープしていた。
うぅ、痛い。
すごく痛かった。
あんな経験、もう2度としたくない。
「マリアンヌの奴め…また無理やり拙者に薬を盛ったでござるな。痛かったでござろう…申し訳ない…勿論責任は取るでござるよ。これからは拙者が守ってやるゆえ、安心すると良いでござる」
なんか思った以上に素敵な男性だった。
それに責任を取るなんてすごく男らしいし。
この人との子供なら…でもあの痛い思いをするのはもう嫌だなぁ。
あ、ナイトメアトレントちゃんを殺したのはコウタロウ様でしたか…いえ何の問題も無いです。
えっ私ですか?
一応、魔王ちゃんですけど。
この後、すっごく驚かれただけで無く、勇者や精霊にも挨拶させられた。
本当に怖かった。
生きた心地がしなかったけど。
まぁ、仕方ないかって感じでみんな仲良くしてくれた。
父上、人間も魔族も精霊も手に取り合える異端かも知れないけど幸せな村がここにあります。
もう争わなくて良いんです。
それにしても平和だなぁ。
あのドッカンドッカンドッカンと嫌だった音も自分たちを守るための訓練だったと思えば、心地よい音に聞こえるし。
毎日、炎の精霊様には睨まれるけど大地の精霊様は仲良くしてくれるし、風の精霊様ともこの前コウタロウ様談義で盛り上がった。
うん、今の私はすごく幸せだと思う。
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それでは、次回もお楽しみに〜




