時を渡る秘術でござる
活動を始めて、もうすぐ3年目になる今の僕が原点に立ち返り、本格的なファンタジーに再挑戦してみました。
あの頃より少しでも成長を感じてもらえたら嬉しいです。
相変わらず拙い文章ではあると思いますが読んでくださると幸いです。
前書きが長くなりましたがでは本編をお楽しみに!
2025年8月の中旬、ここ最近の異常気象により猛暑続く中、生い茂る木の深き森にて、誰にも邪魔されず研究に没頭している男がいた。
男の名は、風魔光太郎。
今より435年ほど前、北条家と天下人の豊臣秀吉との間で勃発した戦役、小田原征伐により、仕える御家を無くし、野盗へと落ちぶれた風魔忍者の当主、風魔小太郎の末裔であり、風魔小太郎の名跡を継ぐ当代当主である。
そんな彼には、大いなる野望があった。
仕える御家の未来を変え、落ちぶれる御先祖様を救うという夢である。
そのために、彼は時を渡る秘術に目を付けた。
この術には、こことは違う世界を深くイメージすることが大事だと書かれており、この禁断の秘術を編み出すべく日夜、異世界が描かれたゲーム、通称ファンタジーゲームに明け暮れ、脳内イメージを活性化させていた。
そして、彼の野望が今まさに叶うところであった。
「クハハハハハハ。実に長かった。足がけ50年。当時20代でこの書物を見つけた拙者も今や70を超える老体。勤めていた製薬会社を定年退職してからは、毎日のようにありとあらゆる異世界が描かれたゲーム、通称ファンタジーゲームをプレイし続けた。しかし老体に鞭を打ち毎日明け暮れた甲斐がようやく報われる。拙者は、ようやく掴めたのだ。時を渡る秘術を。時を渡る秘術の名は、異世界転生の術!」
ポワン。
という音が聞こえた後、彼の姿はここには無かった。
目覚めた彼の目の前には。
「私の赤ちゃん、さぁ母を抱いて、抱き潰して」
「ここは何処でござる?拙者が赤ちゃんでござるか?それが本当なら、目の前の女性は、何を言っているでござる?」
な!?
語尾がいつの間にかござるに。
製薬会社に勤めて間もない頃、その言葉遣いはやめろと上司に言われて、矯正したはずであったのだが、もう一つ怒られた方の一人称の方は最期まで治せなかったのだが。
そちらは、取引先にも拙者の個性として覚えが良くて重宝した。
それにしても拙者の言葉が理解できていないのだろうかこの女性は?
尚も両手を開き、拙者を。
な!?
良く見たらこの女性、、、服を着てないではないか!
何と破廉恥な!
ひょっとして拙者は、この女性の夫なのだろうか?
いやいや、例えそうであったとしてだ。
夫に私の赤ちゃんなどと呼びかけるだろうか?
いや、あり得ないだろう。
そういうプレイの最中だったとか?
いや、例えそうだとしてだ。
思考は、語尾にござるが付かないのに、どうして言葉にするとござるが付くのか。
その辺りも理解できないが。
やむをえん、誰か言葉のわかる者が居れば良いのだが。
周りの者は。
な!?
み、緑の化け物!?
「グギャギャ」
「ゲギャギャ」
「グギギ」
「ゲゲッ」
全く言葉がわからん!
これは困った。
しかし、かつての日本には、このような得体の知れない輩が、薄暗い洞窟に住み着いていたのだな。
尖った耳が角のように見え、剥き出しの歯が牙のように見える。
下半身は、、、。
うむ、見なかったことにしよう。
拙者の何倍だアレは!
あんな物を求めるなど過去の日本の女子は何を考えて。
ん?
拙者はもう一度、目の前の女性をマジマジと見つめた。
さっきは目覚めたばかりで、この薄暗さに慣れていなかったこともあり、目の前の女性を観察する暇がなかったが。
成程、金色の髪に青色の瞳、日本人離れした白い肌。
成程、西洋人か。
何と可哀想な。
宣教師と共にやってきて、こんな薄暗い洞窟に囚われてしまったのだな。
ドスン。
ドスン。
ドスン。
な、何だこの大地を揺らす振動は。
じ、地震か!?
「グヘヘ。コヲウミオトシタオンナカラハラマセロ。ウマレタワガコラノハツシゴトダ」
非常に聴き辛いがようやく言葉を理解できる相手に出会えたと思ったら、一際大きな緑の化け物で、頭には冠みたいなのを付けているな。
まるで、王様であることを象徴しているかのようだ。
こんな奴らを野放しにするなど天下人は何をしているのか。
小田原征伐の前にすることがあるだろうに。
「あの〜少し良いでござるか?拙者、何が何だがさっぱりわからぬでござるよ。良ければ色々と御教示くださると幸いでござる」
風魔光太郎の言葉を聞いた一際大きな緑の化け物は。
「セイショクノウリョクノナイムノウハイラナイ。ワガコヲテニカケルツモリハナイ。セメテモノナサケダ。ステテコイ」
やったぞ。
言葉が通じた、、、って、コイツ今なんて言った?
捨てて来い?
ちょっと待てって、拙者が担がれておる!?
洞窟の外まで運んで、物みたいに投げるでない!
「オマエ、ウマレタバカリナノニゲンゴノウリョクアル。ダカラボスモナサケカケタ。ホンライハセイショクノウリョクノナイムノウハニクニサレテアタリマエ。カンシャシロ。ツギココニカオダシタラニクニスル。カクゴシロ」
相変わらず何を言っているか聴き取り辛いが言いたいことは良く分かった。
取り敢えず言葉のわかる人を見つけて、現在風魔家が仕える北条家がどうなっているかを確認せねばならぬ。
歩き出した拙者は、幸いにも小川を見つけて、休憩していた。
どうやら、拙者は群れから追放されたようだ。
まぁ、それについては何も言わぬ。
寧ろ、あの緑の変態どもと一緒に居なくて済々、、、。
「ぬわぁにぃ!?」
水面に映る拙者の姿を見て絶句した。
到底、人の大きさのモノと思えぬ立派なイチモツに、角のように尖った耳。
どうやら拙者も先程の緑の化け物と同じようだ。
流石に、この姿で人様の前に姿を現すことはできぬだろう。
しかし、この姿はまるで、異世界のことを学ぶために日夜明け暮れたファンタジーゲームの最弱モンスターのゴブリンのようではないか。
まぁ、そんなわけが無かろう。
昔の日本にこのようなモンスターが存在していたなどと聞いたこともない。
偶々、身体が緑の野盗のような輩が存在したのだろう。
きっと、そうだ。
拙者の完璧な異世界転生の術が暴走したなどとあり得ぬからな。
こうして始まった未だにここが戦国時代の日本だと勘違いしている風魔光太郎の物語は、今後も前途多難なことは言うまでもない。
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