2話 死相
とある空港、日差しまぶしい夏空を様々な用途の飛行機が
降り立っては飛び立ち、飛び立ってはまた降り立つ。
丘陵地だったのか空港敷地は若干の高台になっており
西側にさらに高い山地が広がり、その反対である東側の少し離れた
盆地は市街地が広がっている。
空港以外の建物は空港関係の施設以外なく利用者や関係者の宿泊施設は
市街地側にあるホテルを利用するほかはない。
空港につながる道路は車線は広いが数本しか伸びていない。
滑走路、利用者道路、専用道路の他のスペースはほとんどのところが
手つかずの荒地か芝生。小動物や鳥たちには格好の休憩所のようになっている。
その一つに集まっていた鳥が一斉に飛び立った。まぁ3羽程度だが。
?「ここでいいか」
?「他の連中もちょくちょく集まってるな。おっと」
?「おい、お前離れてろよ。関係ないだろよ!」
?「いやダメだ!私はお前の監視なんだから!」
?「監視?ああそういう話だっけなお前(笑」
?「っとに・・・あんとき終わったろうに、もうわかってんのに
まだひっついてきやがって・・・」
?「私の危惧はまたサボるんじゃないか?って事だ!
怠慢は許さないぞカイン!」
?「ぶははははははあのカインが天使の尻布団か(笑)」
ビュフッ
?「っとぉ・・・わ、悪かった・・・なあこれから大仕事なんだ、
そういうのやめんか?」
空から降りてきた黒い衣装の二人とその間に割り込むように
片方と引っ付いて降りた天使のような女性が2,3の会話の後、
無表情でいつの間にか手に伸びていた三又の短槍の刃を黒衣装の男の喉元で止めている。
カイン(以下カ)「やめろお前それ!茶化されんの嫌なら遠巻きで見てろって」
?「ふん!悪かったなマカブル。少し離れるとしよう」
諫められた天使は短槍を消しながら羽ばたいて浮いて離れだす。風が起きていない
どうやら彼らは魔力か何かで飛んでいるようだ。
カ「ああ、周りの哨戒しといてくれ。なんにも起こりそうにないのに・・・」
マカブル(以下マ)「人間の起こす事故というものは前触れなんかそうそうないからな。
命あるものの死はそういうものだ。が、確かにこの量は不思議ではあるな、」
さっきまでのやりとりが日常なのだろうと思えるほど二人は自然と会話し始めた。
?「なぁ手違いってことは「あると思うか?お前らんとこの上司の決定だぞ?」」
天使の切なさの混じった気まずい表情のままの言葉をカインがかぶせるように遮る。
マ「あるとしても事故は確実に起こると言える回収量だ。
プリンシパリティよ、周りに邪気はないだろう?この件は魔界は絡んでない。
完全な人間の世界の事案だ」
プリンシパリティ(以下プ)「了解です。範囲の哨戒に移っておきます」
カインに遮られたプリンシパリティをフォローするようにマカブルに諭され
会話に区切りがついたことでプリンシパリティは反省の応答と自分の役割に入る旨を伝える。
その時ふとカインのほうを見るプリンシパリティ。顔は見えないがどかっと腰を下ろすカイン。
その直後片手が軽めに上がる。プリンシパリティに『いってこい』と言っているように。
プリンシパリティはそれを見ると少し明るい顔になったが一言も発せず真上にとんだ。
あっという間に見えなくなる。少し上空に飛んだ後空港の管制塔側に向かっていったのが見えた。
マ「あっちか、他の死神連中もあっちに集まってるようだな。」
カ「ゲーデや夜叉もいるみたいだな。それらが何人もってとこか。本当に大仕事だな。」
マカブルは腰を下ろしたカインのそばで立ったままでいた。すると
マ「ん?こっちきたなゲーデが3人・・・ん?」
カ「久々にこっち(人間界)であったな。連帯悪魔にしちゃ個性別々なのが
面白いんだよなあいつら・・・ん?」
マカブルもカインもゲーデという死神が3人向かってきているのを見てつぶやいた。
カインはさっき座ったばかりだったのにゲーデが来たことに立って挨拶でもしようというのか
立ち上がっては何もついていないのに尻を払った。
二人が異変に気付いたのは同時に二つ。いやマカブルは3つ気づいた。
ゲーデという死神は背が低く燕尾服を着た老紳士のようないで立ちをしている。
元はどこかの王だという説もあるが有名な部分もあり存在そのものが多い連帯悪魔としての
存在を許された死神である。淡々と死神として死んだ人間の魂を運ぶので冥界としては
信頼度の高い死神でもある。が、荒事は苦手なため魔界絡みだったり、
人の世界と少しでも離れるような仕事には向かない面もある。そんな彼らが
血相を変えて彼らなりの大急ぎで空港施設から三人飛んできていた。
表情が見えるくらいになったころ、カイン、マカブルともに異変の二つ目に気づいた。
ゲーデの全員が向かってきながら焦った表情で左手で右を差している。方角で言うと東。
連帯悪魔ではあるが個性、人格は別々で一人一人違ってもいいのだがその時のゲーデ三人は
まるでダンスチームのように同じ動き、同じ表情、同じしぐさだった。
カインの気づいた違和感はそれだけだった。それに気づいた瞬間カインは大笑いしたからだ。
マカブルはそんなカインを意に介さずゲーデの示す東を見て固まってしまう。それが彼の三つ目。
死相
死の予兆を知らせ、その者に近い未来、必ず、とはいえないが
死の足音が間近に迫ったことの知らせ。
それは人、動物、命として動くすべてに死神ならば見えてしまうもの。
それがマカブルの目に、人ではないそれにまざまざと現れて映ったのである。
その国で昼をすぎ、太陽が少し傾きかけた雲一つない空、遠目に、あるいは近めに
何機もの旅客機が空港の周りを降りては発ち、発っては降りる。
その旅客機、向かってくるゲーデ達がさす先のその旅客だけが、
死相そのものがその形をして空港に降りようとしていたのである。
遅くなりました。どうにかして完結させたいと思います。
読んでくれる方々ありがとうございます。
気長にお待ちください。