第五章【12】
「あの、何をしていらっしゃるんですか?」
尽くす寸前。
聞き慣れすぎた声のおかげで、俺は弾かれるように三人から離れた。
そして、何故かは分からないが人生二度目の土下座をしていた。それはあまりにも綺麗な土下座だった。
誰に対して土下座をしているのか。
そんなのは言わなくても分かっているだろう。
突如としてこの場に現れたクールメイド長、柏木彼方にだ。
「まずは……なんとお声掛けしたらよろしいですか? 本日はお楽しみでしたね?」
「違う違う! 圧倒的になにか勘違いしてる!!」
「では、その土下座の意味は?」
「いやそれは俺にも……っていうか、なんで柏木さんがこんなに早く来るんだよ! 連絡はまだきてないはずだろ!」
「連絡……? そんなものありませんでしたが」
「この人、自力でここに辿り着いた!?」
「はぁ……まさか首輪のGPSまで切っていらっしゃるとは思いませんでした。奥様たちの入れ知恵ですね、まったく……」
今まで聞いたこともないような疲れた溜息を吐く柏木さん。
よくよく柏木さんを見ると、髪は乱れ、汗でぺっとりと頬に張り付いていて、スカートの裾や靴も土で汚れている。
どうやら、俺達のことを相当必死になって探し回っていたらしい。
柏木さんを盛大に困らせたという点で、ワカラセ計画としては大成功なのだが、柏木さんが来る前に茉姫たちにネタバラシをしたかったので、これはちょっと不味いのでは? という不穏な空気がビンビンと漂い始めていた。
「ちょっと、どういう話? 私さっぱり分からないんだけど」
「柏木さん、わたくしたちを助けにきてくれたんじゃないんですか?」
俺と柏木さんのやりとりを見て、状況がまったく理解できずに疑問符を浮かべる茉姫と白雪。
「ねーねー、アオ兄ぃ、どういうこと?」
こっそり逃げようとしたところを素っ裸の乃愛に捕まってしまった。
「あー、うん。なんだろうなぁ」
俺の口からはとても説明できない。できるはずがない。
「まぁ端的に言えば、蒼斗様のイタズラ、ということでしょうか」
「いた……ずら?」
「この島で何があったかは存じ上げませんが、この島で起きたこと『全て』蒼斗様とお母様たちのイタズラです」
「え、じゃああの虎も……?」
「虎? あぁ、別荘でふにゃふにゃに酔っていた虎ですか」
虎センパァァァァァイ! マタタビをキメすぎです! 虎の威厳ゼロ!
「ちょっとまって、じゃあそもそも飛行機事故っていうのもイタズラ?」
「そのとおりです。この場所が分かったのもそのセスナの機長を締め上げて吐かせたんですから。彼はしばらく自分の前歯とはお別れですね」
き、機長ォーーーーーー!! 自慢の白歯がへし折られてるぅううう!!
「ふぅん。なるほどね」
「アオ君……」
「今日の全部アオ兄ぃがやったの? すごーい! 乃愛、虎さんと遊びたい!」
「あ……これ、なんかヤバい感じです?」
俺、逃げたほうが良いっすか?
「柏木」
「はい、こちらに」
柏木さんはスマートフォン端末を茉姫、白雪、乃愛に手渡す。
「もしかして……激おこ?」
「別に怒ってないわよ。なんだかんだスリリングで楽しい一日だったわ」
「アオ君がカッコ良かったのはとても良かったと思いますけど、やっぱり嘘は良くないですね」
「乃愛は楽しかったよ! でも心配させるのは駄目! だから……」
「ひっ、ひぃいい。柏木さん助けっ……」
「「「お仕置きー!!」」」




