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第五章【2】

「無人島でバカンス……ですか?」

 

 俺は何食わぬ顔で柏木さんに旅行の計画を伝えていた。

 もちろん、諸々のマル秘な『ワカラセ計画』のことは伏せながら。

 

「奈々穂さんたちから勧められてさ。日頃、茉姫たちの相手をしてくれてるお礼に、色々用意するから行ってきたらどうかって。無人島は燈花さんが貸してくれるし、移動手段は静流さんが飛行機出してくれるんだと。ははっ、金持ちはやることの規模が違うわ」

「なるほど……しかし蒼斗様。いつの間に奥様たちを名前で呼ぶ仲に?」

 

 柏木さんの目がきゅっと細くなる。

 ……うっ、やば、墓穴掘ったか?

 これはどうでも良い情報だが、奈々穂さんは茉姫の母親でEカップ。燈花さんは乃愛の母親でDカップ。静流さんは白雪の母親で驚異のGカップだ。

 どうでもいい情報だが彼女たちから無理やり教えられたので心に刻みつけておいたまでだ。

 

「な、名前で呼ばないとあの人達怒るから……」

 

 少し苦しい言い訳だが、一応本当のことだ。

 何なら「ちゃん」付けで呼ばせられるところだったのだ。それは流石に回避したが。

 

「……まぁ、そういうことにしておきましょうか」

「そ、それで、柏木さんは一足先に現地で待っててもらって、俺達はセスナで遊覧飛行しながら現地に向かうって感じになるんだけど……」

「了解しました。お嬢様たちのこと宜しくお願いします」

 

 っしゃぁあああ! うまく丸め込んだ!!

 第一関門にして最大の関門を無事突破した瞬間だった。

 

 そう。

 俺は茉姫の父親との会話で事情を知った後、あの強烈な母親三人組ともう一度話をしたのだ。

 目的はただ一つ。

 『ワカラセ計画』に協力させることだった。

 

 それ故、俺の置かれた現状、つまりペットで奴隷のような生活をしていることを説明する必要があったのだが、これは思いの外あっさりと受け入れられて終わった。

 奈々穂さん曰く『まぁ人生そんなもんよ!』ということだった。

 驚きもしないし怒りもしないし、こっちとしては拍子抜けで、協力してくれるのか不安だったが、燈花さんはニマニマした悪い顔で『ぬふふ、ウチらにぜーんぶ任せなさい!』と快く協力を申し出てくれた。

 

 こうして計画されたのが、無人島でのバカンスドッキリだったのだ。

 柏木さんもバッチリ騙せたことで、絶対にうまくいく予感がしてきた。

 よぉし、いけるぞ、必ず成功させてみせる!



「三人とも無事か?」

 

 俺は海に浮かんでいた三人の側まで行き、背中のパラシュートを外してやる。

 

「はい、なんとか……」

「うん、ちょっと楽しかったけど、怖かったぁ……」

「全然大丈夫じゃないわよ!」

「よし、これだけ元気なら平気そうだな」

「だから平気じゃないって! バカ蒼斗!」

 

 島が遠浅の海岸だったこともあり、俺を含め、茉姫たち三人も無事に着水できた。

 もちろん、事前に安全性はチェック済みだが、怪我をする可能性もあるのでここが一番緊張したところだ。

 しかし、無事で何より。

 俺はこのメスガキたちをギャフンと言わせるためにこの計画を練ったのであって、傷つけるために来たのではない。

 むしろ、元気で泣き顔を晒してくれないとそれはそれで困るのだ。

 

「よしよし、安心しろ。お前たちには傷一つつけさせないからな」

 

 茉姫の頭をぽんぽんしてやる。

 完全に優位な立場に立っているからか、茉姫の悪態もまったく気にならない。

 むしろ可愛くすら思えてくるから不思議だ。

 

「これが大人になるってことかぁ……」

「くっ、頭撫でるなぁ! カッコつけるな!」

 

 死地から生還したからか、茉姫も少し元気が出てきたようだ。

 こうでなくてはワカラセ甲斐がないってものだ。

 

「じゃあ、陸地に上がろう」

「あ、あの……わたくし足に力が入らなくて……」

 

 白雪が震える手で、俺にすがりつくように身を寄せてくる。

 よっぽど怖かったのかもしれない。

 

 いやぁ……普通に考えて、飛行機墜落からのスカイダイビングってトラウマ植え付けられるレベルで怖いよなぁ。このネタ考えたのは静流さんだけどさ。

 さすがドS娘の母親もドSというところか。

 だけど、高所恐怖症の俺が死ぬほどスカイダイビングを練習させられまくったのだから、ここはおあいこってことで。

 

「許してくれ、よっと」

「きゃっ」

 

 動けない白雪の身体を抱え上げる。

 いわゆるお姫様抱っこという格好だが、今の俺にとっては軽いものだ。

 なんせ、一流のサバイバリスト、熊先生の指導の元、スカイダイビングを始め、地獄のようなトレーニングを積んできたのだ。もちろん、この日のためだけに!

 なんか、俺ってこんなに頑張り屋さんだったんだなぁ。自分で自分を褒めてあげたい。

 

「あ、アオ君……は、恥ずかしいです」

「気にするなって、白雪一人分くらい余裕だよ」

「アオ兄ぃ力持ち~、乃愛も乃愛も!」

 

 乃愛が俺の背中に飛び乗ってくる。

 

「うぐっ、二人分はさすがに……いけるっ!」

「わー! いけー!」

「……ばっかみたい」

 

 茉姫は呆れたようにため息を吐く。

 ふっ、お前もやってほしかったら言って良いんだぞ。ただし、俺に『ワカラセ』られた後にだがな。

 だが、その前にまずやることがある!

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