The Decisive Battle: The Top of the School編 ①
シリーズその2の①です。武田くんがいかにして学校の頂点に立ったのか。(アンラッキちゃんにいわせると学校一の馬鹿なのですが)そのエピソードを書いてみたいと思います。何とか頑張ってアクティブでスペクタクルな展開にしたいと思います。
アンラッキ1
新年度7組の教室に入って、周囲を眺めます。私は誰にも気がつかれないように、そっとため息をつきました。仲のよかった友達とは全部離れたように思います。
出席番号順は3番、最初は番号順の席ですから、一番南の列の前から3番目ということになります。4月当初、まだ肌寒い日々でしたので窓際は暖かくて良い席のはずなのに、ちょうど教室中央の柱の陰となっていました。たぶん、暑くなる頃席替えがあって、私の席は日当たりのよい場所となるのです。
そう私のあだ名は『アンラッキ』、名字の安楽城からきているのでしょうが、ひどすぎます。名前の優加から小学校の頃は『ゆっかちゃん』とか『ゆうゆ』とかいわれていたときもあったのに、それもこれも1年の時一緒だった富良野くんのせいなのです。
私の不幸話を楽しそうに聞いていた富良野くんはある日「アンラッキさん」と私に呼びかけ、周囲からは大受けし、私の3年間の通称は『アンラッキ』に決定したのでした。
確かに私は小学校の時、3回も交通事故に遭遇しました。どれも私の落ち度はありません。トラックはなぜか私の前で横転し、タクシーがランドセルをかすめてガードレールに追突し、自転車は何と12台、冬の朝の凍った道路で1ダースの自転車が私の横で玉突き衝突して大惨事となりました。私はトラックのサイドミラーで右手の指をすりむき、タクシーにランドセルを駄目にされ、自転車の荷台に積まれていたラーメンを頭からかぶりました。私はついていないのです。
ふと見た教室の北側後ろに私のあだ名をつけた富良野くんが例によってボンヤリと廊下を眺めています。私は知ってるんですよ。みんな富良野くんは読書家だと思ってるかもしれないけれど、大概難しそうな本は持ってるだけで、周囲をボンヤリ眺めてることの方が多いってこと。正直言って違うクラスになれず残念です。
武田完くんが教室に入ってきました。この人もあんまりお近づきになりたくない側の人ですね。3年生に睨まれているという怖い噂があります。
あら、富良野くんのところにいきましたね。富良野くん、たかられたりするのかしら。いいえ、ホッとしました。仲良しのようです。笑って話してますね。武田くんは富良野くんを『ふら』、富良野くんは『タケちゃん』と呼ぶんですね。よく見るとこのクラス、ちょっと怖めの感じの男子多いかも…。
私は周りの女の子から「アンラッキ、ヤバめの男子平気だね」って言われますが、違うんです。そういう人がどうしてか、寄ってくるんです。不幸センサーが故障しているので、私も危険が近づいていても、あんまり困った顔ができないんです。
ほら、武田くんが近づいてきました。なんでなの、1年の時、特に接点ないのに。
「アンラッキさん、よろしく。フラから聞いてるよ。実はすごくラッキーな人だって」
…あれ?意外と爽やかです。私の偏見だったのでしょうか。よく見ると顔立ちもはっきりとしていて、結構イケメンの部類かも…。
「武田さん、よろしくお願いします。富良野くんとは仲良しなんですか?」
「タケ、でいいよ。幼なじみなんだ。あいつもこれからはフラって呼んでやってよ」
そんなに親しくありませんし、親しくしたいとも思っておりません。もちろん口には出しませんが。ちなみに富良野くんが私をラッキーガールと呼んでいるのは、やはり例によって私をからかって遊ぼうと考えているに違いありません。そうはいきませんよ。
そこまで話したところで、あれは…3年生でしょうか。後ろの入り口から顔を覗かせました。慌てて目を合わせないように前を向きました。そしたら前のドアの方にもっと怖い、どうみてもボスみたいな3年生がいて、目が合っちゃいました。
「おい、武田、ちょっと来いよ」
ボス先輩が低い声で言いました。無理矢理低くて乱暴に聞こえる言い方をしていて、若干馬鹿みたいです。あれれ、私も一緒に睨まれてる?
あっ…これは武田くんと親しい女子と思われてしまったのではないでしょうか。またしても事故物件発生です。武田くんがニヤリと笑って、前のドアに向かってスキップします。
これは学校のトップオブ馬鹿決定戦なのでしょうか。私にいらぬ火の粉がふりかからないよう祈るばかりです。
ちょっと富良野くん、いえ、フラにも相談しとこうかな。建設的なことや真面目物件以外には、とても役に立つこと私は知っているのです。
ただただ、アンラッキちゃんの独白を可愛くしていきたいと考えて書いたのですが、何だか毒のある女の子っぽい感じになってしまいました。ショートヘアで赤ちゃん顔にバラ色の頬、大きくて黒目が多い『超絶可愛い』という設定です。