第4章
私「だとしたら、やっぱり異世界転生だな。」
知らない人「もちろんいいよ。けれども、今度はどうする?」
私「最初はレベル1から始める。そして、自分は伝説の勇者。普通の村人の息子として生まれるけども、実は伝説の勇者としての才能がある。他の人よりも才能があり、剣の技も魔法も次々と覚えていく。困難な場面もある。けれども、持ち前の勇気と知恵で乗り越えていく。その度に村人から感謝され、一緒に旅をする仲間にも恵まれる。最終的には魔王を倒し、世界中から賞賛される。」
知らない人「いいよ。できるよ。ただ、その後は?」
私「その後?」
知らない人「ゲームではそこでハッピーエンドだけど、人生はその後も続くよね?その後はどうする?」
私「その後も決めなくちゃいけないの?」
知らない人「決めなくてもいいよ。ざっくりした内容だけ決めて、残りはその時々の状況に任せるという方法もあるよ。」
私「それはそれで怖いな。」
知らない人「ただ、あんまり細かい部分まで決めてしまうと後々ストレスに感じることもあるよ。『俺は俺の生き方をするんだ。運命には従わない!!』って言って反抗する人もいる。本当は自分で生まれる前に決めてるんだけど、転生した後に自分で決めたことがストレスになることもある。」
私「なるほど、だとしら、最後はかわいい女の子と結婚して幸せな生活を送りたい。」
知らない人「かわいい女の子と結婚することもできるし、それを保証することもできるよ。ただ、それが幸せかどうかは保証できないよ。なぜなら、何を幸せと感じるかは人それぞれだから。」
私「かわいい女の子と結婚できればそれで幸せだよ。いきなり魔物に殺されるとかでなければ。」
知らない人「そういった突然の不幸をなしにしても保証はできないよ。結婚した後の安全を保証できても、その後の幸せはあなた次第。」
私「安全が保証されて、かわいい女の子と結婚できるなら、別にそれで幸せだよ。極度の貧乏生活をするとか、大きな病気にかかるとか、やたらと王様に嫌われるとかもないんだよね?」
知らない人「それもない。それは保証できるよ。けれども、あなたが幸せになるかどうかは保証できない。」
私「むしろ、そこまで来て何が不幸の原因になるの?」
知らない人「もしかしたら、あなたは他の女の子の事も好きになるかもしれないし、結婚生活自体に疑問を覚えるかもしれない。最初の1年は幸せかもしれないけど、結婚生活が10年20年する内に『これで本当に幸せだろうか?』と考えてしまうかもしれない。」
私「そんな細かいこと言ってたら切りがない感じはするけどね。」
知らない人「とはいえ、実際そういうパターンは多いよ。私から言えることは『幸せは保証できない。』と伝えることであって、実際にどういう人生を選択するかはあなたの自由意志に任されている。」
私「なるほどね。」
知らない人「後、どれぐらいの期間で魔王を倒せるようになるの?1年や2年?10年単位かな?」
私「10年経ったら流石にきつすぎるね。2、3年が妥当かな。」
知らない人「何歳ぐらいから冒険したい?」
私「15歳とか16歳ぐらいかな。」
知らない人「寿命は何歳ぐらいにしたい?」
私「そこまで決めるの?」
知らない人「任せてもいいけど、早すぎても嫌だし、遅すぎても嫌でしょ?」
私「そうだねえ。だいたい60から70歳ぐらいかな。」
知らない人「そうなると、あなたの人生は20歳ぐらいが人生のピークでその後の40年間から50年間は平凡な人生を歩むことになるけど、それでも大丈夫?」
私「なるほど。」
知らない人「それに20歳からどうやって生活する?」
私「そうだね。多分、王様のお城で勤務する。将軍とか、兵士を稽古する仕事をする。」
知らない人「分かった。残りの人生はお城でのお勤めでいいのね?」
私「悩むところだね。確かに人生のピークが20歳で来ているよね。それで満足できるかどうか。」
知らない人「それは人それぞれだからね。それがすごくいい。という人もいるし。」
私「よく分からなくなってくるな。」
知らない人「それに、あなたが魔王を倒しに行くのを素直に納得するかどうかも保証はできない。」
私「いや、そこは保証してくれるでしょ?」
知らない人「私ができるのはそういう設定をするところまで。実際あなたが納得するとは限らない。転生をしたら、今までの記憶がなくなる。その時になったら、『何を言っているんだ?俺はただの村人だぜ。魔王なんて倒せる訳ないじゃないか』と言うかもしれない。」
私「だからそこは、神からのメッセージがあったりとか、伝説の剣が抜けたりとかそういう設定を決めておけばいいんじゃないの?」
知らない人「神からのメッセージがあっても自分が頭がおかしくなったと思うかもしれない。実際『神様からのメッセージがあった。』という人の多くは頭がおかしいと思われている。伝説の剣が抜けてもただの偶然だと思うかもしれない。仮に自分が伝説の勇者だと思ってもプレッシャーで辛く感じるかもしれない。どう考えても楽な冒険ではない。」
私「なんでもできると言っているけど、万能ではないんだね。」
知らない人「なんでもできるよ。ただ、前提としてあなた自身を変えることはできない。あなたの能力を変えることはできる。でも、あなたの本質的な魂は変えることができない。勇者として転生させても、あなた自身が勇者として振るまうつもりがなければ、願いを変えることはできない。」
私「自分の性格を変えることはできないの?」
知らない人「ある意味ではイエスだし、ある意味ではノーになるかな。」
私「例えば、勇者になる人生を選んだ時に『勇気』という属性を付加することはできないの?」
知らない人「肉体と魂は相互に関係しあう。転生先の肉体に強い身体と賢い頭を選ぶことができる。けれど、それの肉体を使ってどういう人生を歩むかはその魂に委ねられる。」
私「どういう事?」
知らない人「ゲームで言えば、ゲームをプレイする人間が魂で、実際に動くキャラクターが肉体となる。プレイするキャラクターは自由に決められるとするよ。強いキャラクターを選べば、行動は大胆になるし、弱いキャラクターを選べば行動は慎重になる。プレイする人間は変わらないけども、プレイするキャラクターによって大胆にも慎重にもなる。けれど、どんな強いキャラクターでもプレイする人間が憶病であれば、憶病になるし、逆にプレイする人間が熟練者であれば弱いキャラクターでも大胆に行動することができる。」
私「なるほど」
知らない人「私ができることは強い肉体を用意すること。けれども、その肉体を使って勇者らしく行動することは魂、ゲームで言えばプレイする人間に委ねられている。」
私「じゃあ、魂のレベルを上げることはできるの?ゲームで言えば、プレイヤースキル。」
知らない人「それは、私の力ではできない。なぜならば、私ができるのはあなたの望むゲームを作り出すことであって、プレイヤースキルが上がるかどうかはその人自身が実際にプレイしてスキルを上げる努力をしなければ、上げることはできない。」
私「私の魂を変えることはできないの?」
知らない人「変えることはできるけれども、変えた時点であなたではなくなる。それは、あなたの魂を消去して新しい魂を作り出すのと同じになる。」
私「それは怖いね。」
知らない人「それは我々の目的とも違うからね。」
私「そう言えば、そっちの人たちは何を目的にしているの?なんで転生させているの?」