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第7話 委員会

「ほい、じゃあ魔法概論の授業を始めるぞい」


 魔力測定の後、僕らは教室に戻った。

 次は、魔法の入門みたいな授業だ。


 この学院に入るような人なら、魔法の入門くらいは出来る人が多い。

 だけど丁寧に、初歩の初歩から教えてくれる。

 それだけ"基礎が大切"という事だ。


 教壇に立った担当は、ずんぐりむっくりとした地人ドワーフ

 三つ編みにしたヒゲが立派な……女性だ。


「教科書の2ページを開け―」


 言われた通り、生徒達は教科書の表紙をめくる。


 すると目に入るのは、一枚の挿絵。

 龍に乗った人間の英雄が、不死アンデッドたちと争っている。


「みんな知っての通り、それは四百年前から三百年前まで続いた"百年戦争"の絵だ」


 慣れた口振りで説明を続ける。


「初等学院で習ったと思うが、それまで平和だった世界で、不死王ノーライフキングが不死を率いて戦争を起こしたのが原因だ。しかし人間は、龍や善良な悪魔と結束して、奴を倒した」


 淡々と、常識を再確認するみたく話し続ける。


「魔法ってのは、その戦争の時に人間が手に入れた、神秘の技術だ。神様から授かったものなのか、物理現象の一部なのか、それは聖者と賢者で意見が異なる」


 と、そこまで話し終え、地人の先生は最前列の生徒を指した。


「ほい、そこのお前。魔法を大別すると三種類あるが、それはなんだ?」

「魔術と、賢術と、聖術です」

「正解ー。あとは、錬金術とか、召喚術とか、不死魔法とか、龍魔法とかあるぞー。ま、各々の特徴に関しては、その教科の時に聞いてくれい」


 ちなみに、現在、一番オーソドックスなのは魔術だ。

 僕が清掃員に戻るために必要な、初級魔法の資格も、魔術に関するものがほとんどだ。

 この三授業が選択形式なら……魔術を選ぶかな?


 その後も、地人の先生の授業は続いた。


 魔法という技術の大切さ。

 社会における魔法使いの需要。

 そして、魔法の危険性。


 すごく初歩的だけど大切な事を教え、時間が来ると先生は「じゃあなー」と教室から出ていった。




 入れ替わる形で、担任のメレトス先生が入ってきて、口を開いた。


「みんな、元気ぃー? 委員会決めするよー」


 待ちに待った、委員会決めの時間だ。

 そういえば、リリーから図書委員になるように言われてたな。

 本当は、美化会員になりたいけど……。


「はい、じゃあまずは学級委員からねぇー」


 委員会決め自体は、スムーズに進んだ。


 まず学級委員長と副院長が決まり、その二人が担任の先生に代わって、委員会決めを引っ張った。

 風紀委員が決まり、保険委員が決まり、選挙管理委員が決まり……。

 同じクラスの"ランドルフ"が、美化委員に決まりやがった。


 あぁ、"元"友達のランドルフ君。

 仕方ないとはいえ、なんとも言えない悔しさがあるよ……。


「はい。では次ですね。魔術委員を希望する方?」


 片眼鏡の委員長がそう言うと、

 ばっ! ばっ! と、何人かの手が挙がる。


 人気の委員会のようだ。

 その様子を見て、メレトス先生が提案を一つ。


「定員は二人だし、じゃあ、"決闘"で勝敗をつけようかぁ」


 けっ、決闘!?

 そ、そんな物騒な事をしてもいいの!?


「よし! じゃあ、校庭に行こうぜ!」

「ルールは、先に攻撃が当たった方の負けで」


 席を立ち、教室を去っていく何人かの生徒達。


 覚悟したような表情じゃないし、張り詰めた雰囲気でもないし……ある程度は手加減するのかな?

 てか、しないとマズいよね。


 でも、さっき授業で魔法の危険性を教えてもらったばっかなのに、それを簡単に破りにいく……。

 ま、まぁ、優秀な魔法使いになりたいなら、これくらいの方がいいのかなぁ?


 魔法学院とは言っても、たかが学院だから、そこまで競争的な社会だとは思ってなかった。

 テキトーに友達作って、テキトーに魔法を学んで、それで資格が取れればいいやー、なんて思ってた自分が恥ずかしいかも。


 と、僕が考えている間に、


「次は……図書委員ですね。希望する方は?」


 図書委員会の番が来た。


「は、はいっ! 僕やりたいです!」


 いの一番に手を挙げたが、


「……三人ですか」


 僕以外に二人の生徒が挙手した。


 一人は真面目そうな痩躯の並人ヒューム

 黒縁の眼鏡とさらさらの黒髪がよく似合った、男性だ。


 もう一人は、僕の右隣。

 リタ・アーネットだ。


「定員は二人なので、先程のように決闘を行ってもらいましょうか」

「ま、まじ……?」


 決闘って響きが、もう怖い。

 安全に配慮するとは分かっていても、レイピアでチクチクし合ったり、拳で殴り合ったり、というイメージが湧いてくる。


 だけど、そんな僕の恐怖とは裏腹に、


「分かった。行こうか」

「手加減しないよ、シロ」


 眼鏡の男とリタは席を立ち上がる。


 裏口入学の交換条件としてリリーに言われた手前、図書委員にはなるしかない。

 必然的に、この決闘は乗らざるを得ない……。


 嫌々ながらも、僕は重たい腰を上げた。

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