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魔法少女ラジカルはるか~エグニマ時空戦役~  作者: 騎士誠一郎
第1話少女の運命は狂いだす
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1-4 高校最後の春

 宇宙春節最終日、この日は火星の悪夢で犠牲になった人々を追悼する催しが各星域で行われた。

 報道メディアでは、『謎の異星種族、人類の虐滅に向けて宣戦布告』、『劣悪なる種族が人類に戦争を仕掛けてきた』などと大々的に報じられる一方、平和的な対話を求める声を上げる民衆について特集する番組もあった。


 ジュピトリスでも、追悼式典を済ませ、ショッピングを楽しむ人々が多くみられる。

 しかし、その雰囲気はかつての活気ほどにぎわっていなかった。

 無理もない。

 惑星規模の惨劇が起きてしまった。

 その事実に、各星域も不安を隠せない。


 各星域の自警団や駐屯する連邦軍も一層の警戒をしなければならない。

 敵が襲ってくるか分からないからだ。

「はるかちゃん、火星の人たちの気持ちはわかるけど、今は思いっきり楽しもうよ!」

 まなみに言われるが、はるかはそんな気分じゃなかった。

「火星に住んでいるおじさんたちが殺されたのよ……。 そんな気分じゃないわ」


 はるかの親戚が、火星の悪夢で犠牲になったことを打ち明け、涙を流す。

 無理もない、親しい人が遠く離れた地で殺されるのはショックが大きい。

 しかしエリスは、

「しっかりなさい! 貴方はこんなところで落ち込む人ではなくて!?」

 叱咤の言葉をかける。


 その言葉に、はるかは気を取り直した。

「そうだね。 いつまでも悲しんでばかりじゃ、叔父さんも喜んでくれない!」

 改めてはるかは高校生活を悔いなく楽しむことにした。

 そう、はるかたちもジュピトリス女学院の高等部3年生。


 あと1ヶ月もしないうちに卒業を迎える大事な時期なのだ。

 卒業試験は今までの試験よりも厳しく、合格率も5割ほどを占める難関だ。

 宇宙春節の間は自由に行動できるが、3月に入れば卒業試験に向けてラストスパートがかかる。

 それまでには、この時間を精いっぱい楽しんだ方が得策ともいえる。


「そう言えば、今日から《モーヤンの宇宙チキン》で、限定のメニューが売ってるって!」

「マジ!? めっちゃ気になってたの、その限定メニュー!!」

 はるかは宇宙で人気の揚げ鶏チェーン店の限定メニューに飛びついた。

 このチェーン店は、地球産若鶏を使い、独自のスパイス配合で味付けして揚げた揚げ鶏が自慢。


 その為、太陽系では知らない人はいないほどの人気を誇るチェーン店だ。

 また、時期によって異なる期間限定メニューも人気の理由に挙げられ、訪れる人を飽きさせない、名店である。

 そんな彼女たちの日常は、少しづつ、確実に崩れ去ろうとしていた。


 第1迎撃艦隊は、木星への航海に備えて月周回軌道基地で哨戒攻撃艇と空間機動戦闘強化服の訓練に励んでいた。

 無数に点在するターゲットドローンを哨戒攻撃艇が先陣を切って蹴散らし、強化服部隊もその後に続く。

 空間機動戦闘強化服は連邦の主力兵器として重宝しているパワードスーツだ。


 人型の利点を生かし、射撃戦から白兵戦もこなす汎用機。

 その為、これを愛用するエースも少なからず存在している。

「相変わらずの戦術眼ですね、川島少将?」

 ムラクモのブリッジでは、昇と月周回基地司令を務める藍田祥子あいだしょうこは、鼻で笑いながらこんな事を言う。

「これは藍田指令。 こちらこそ訓練に使わせていただいて感謝しています」

 昇は負けじと返礼した。


「いいんだよ。 うちもこれくらい訓練しないと兵が不平を漏らすからね。 敵さんだって、何時仕掛けてくるか分からないから、できるだけ訓練を積むのも大事だよ」

「猛省します」

 昇も呆れてしまう。

 無理もない、藍田の発言には何故か同意せざるを得ない力がこもっているからだ。

 その言葉の真意に気づいた昇は流石と言ったところだ。

 しかし、この訓練はいつにも増して厳しさを増している。


『3番艇、動きが硬い! もっと機敏かつ柔軟に操縦しろ!』

 通信を通じて聞こえる教官の怒号に、哨戒攻撃艇のパロットたちはひぃひぃと根を上げそうになりつつあった。

 今回は大規模艦隊が大量の艦載機を展開した電撃戦を想定した訓練だ。

 それを可能にするためには、より素早くなおかつ、効率的な波状攻撃を仕掛けなければならない。


 そうでなければ、敵は人類を虐滅してしまう。

 それは何としても阻止しなければならない。

 だからこそ、教官たちもより一層の教鞭に熱が入るのもうなずける。


 迎撃艦隊2番艦「アカツキ」も、レーザー砲の照準タイミング訓練をしていた。

「全然ダメ。 基本が成ってないぞ新入り君!!」

 さわやかな体育系の教官が新米砲術士に発破をかける。

「以後精進します!」


 3番艦「マサムネ」では、

「レーダーはしっかり見ろ! そうしなかったら、敵を見失うどころか、こちらが沈められるぞ!!」

「はい、教官!!」

 ブリッジクルーたちに檄を飛ばす教官の姿があった。

 4番艦「ミツギ」は艦載機のオペレーションに問題があったのか、

「発艦シークエンスは1秒も無駄にするな! でなければ、戦力諸共敵の砲撃の的だ!」

 厳しい言葉を飛ばす教官がいた。


 天津級の迎撃艦隊5番艦「オオワシ」は、索敵システム運用の効率性を求める訓練が行われていた。

「お前らの目は節穴か? しっかりレーダーモニターを見つめろ! そうすれば見落としていたものが見えてくるはずだ!!」

 ブリッジではシステムに穴があるにも程があるくらいの効率の悪さが浮き彫りになっていた。

 そんな訓練の様子をモニターしていた昇は、支給品のコーヒーを飲む。


「しかし、このままでは支障も出てしまいかねません」

 こんな事を言うが、

「いいんだよ。 最初はあれくらいがちょうどいいから、初めから上手く行く兵なんて、1人もいないからね」

 藍田は豪快に笑った。

 誰もが最初は初心者。

 それが明日を知らない戦場へ赴く軍人でも、何ら変わりはなかった。

 それは、微笑ましいことだった。


 ジュピトリス。

「んーー、このブラックペッパーナゲット、マジで激うまなんだけど!!」

 急に今どきの若者と変わらない口調でチキンナゲットの換装を言うはるか。


 それもそのはず、モーヤンの宇宙チキン・ジュピトリス女学院学舎前店で買ったチキンナゲットが先ほどまなみたちが話した期間限定メニューだ。


 冥王星宙域で栽培された黒コショウ「プルートペッパー」ふんだんに使ったチキンナゲットの味は、口の中でガツンとパンチが効いた辛さだ。

 その味のとりこになり、リピーターも続出していると言う。

 それだけ、モーヤンの宇宙チキンは計り知れない魅力があると言う事だ。


「でも、やっぱりいつもの骨付きチキンが最高なんだよね!」

 はるかがそんなことを言うと、

「そうだね」

「やっぱりこの味が一番!」

 まなみやエリスもその味に舌鼓を打っていた。


 そして、楽しい時はあっという間に過ぎて行き、

『居住区への帰宅時刻となりました。 全住民は、直ちに帰宅し、明日への英気を養いましょう』

 帰宅を促すアナウンスがコロニー内に響く。

 大急ぎではるかたちは学生寮へと戻る。


 寮の門限はグリニッジ標準時間の18時30分までになっている。

 何とかギリギリで間に合い、はるかたちはいつもの部屋に帰ることが出来た。

 ジュピトリス女学院は、全寮制の中高一貫校。

 その為、3人部屋を基本とした共同生活を行っている。

 学院のスローガン『清く 正しく 誠実に』をモットーにしているため、こうした共同生活を通じて正しい女性へと成長してほしいと言う狙いがある。

 そんなはるかとまなみ、そしてエリスは学院のトップ3として常に君臨していた。

 しかし、そんな彼女たちの日常は、確実に終わりを迎えようとしていた。


 寝静まり返ったジュピトリス第1居住用コロニー『ガニメデ1』。

 その中に音もなく、警備システムの目を掻い潜って侵入する液体金属。

 それは、敵が生み出した潜入工作諜報員だ。

 居住エリア内に到達すると、やがてそれは人の形となった。


『潜入工作諜報員407号、有機知性体の居住施設への潜入に成功』

 その姿は男なのか女なのかわからない中性的な姿をしていた。

 整った金髪に、紅い唇。

 火星の悪夢で犠牲になった人間たちの容姿をベースにしていたようだ。


『1番艦了解。 これより独立型有機知性体、通称《人間》の生体について調査せよ。 データ収集後、直ちに帰還し我々と共に虐滅せよ』

 火星の悪夢を起こした艦隊の旗艦が407号に指令を送る。

『407号、了解。 自衛のための戦闘を許可を要求する』

『自衛戦闘を許可』


 やり取りを終えて、407号は早速行動を開始する。

 やはり寝静まったとはいえ、警戒態勢を敷いている。

 警備用ドローンが区画内を巡回している。

 407号はすかさず光学迷彩機能を作動させて姿を隠す。

 そして、音もなくそのうちの1機に近付き、流体多結晶合金で作られた右腕をハッキング端末に変化させ、ドローンに接続し、情報を吸い上げる。


『データ収集完了。 しかし、これだけでは不確定要素が有ると思われる。 更なる収集を行い、完了後、まとめて送信する』

『1番艦、了解。 無謀な行動は避けるよう、細心の留意を払え』

『407号、了解』

 407号は、更なる情報を集めるべく暗躍を始めた。

 それがこの先の戦いではるかと出会うことも知らずに。


 翌朝、はるかたちは卒業試験を目前に控え、授業もラストスパートに入っていた。

「この問題は筆記部門で出ますので、皆さんもよく覚えておきますように」

 国際語学の教師が生徒たちに教える。

 生徒たちも、真剣そのもので内容を端末に記録する。

 お昼休みに入り、はるかたちは学食で昼食を食べていた。


「そう言えば見た? 今朝のニュース」

「見たわよ、警備巡回ドローンが何者かに襲われ、データを全部抜き取られたって」

 どうやら、工作員407号が警備ドローンを襲ったことが朝のニュースで取り上げられていた。

 自警団も全力を挙げて犯人を捜しているが、未だに手がかりを掴めていないのが現状だ。

「犯人、見つかるといいね」

「そうですね。 まるで見えない犯人に私たちが狙われていると思うと……」


 まなみとエリスは不安を隠せないが、

「大丈夫だって! きっと犯人は捕まるから、試験まで頑張っていこう!!」

 いつもの調子で、はるかは二人を励ました。

 途端、午後の始業のベルが鳴り響く。

「そうだね。 不安になっても仕方ないね!」

「さぁ、ラストスパート、頑張りましょう!」


 3人は勢いよく駆け出す。

 この日の午後は、空間作業服実習だ。

 空間機動作業服は戦闘強化服をデチューニングし、文字通りの作業用に特化したパワードスーツである。

 戦闘強化服と作業服は構造や操縦方法も全く同じで、人が着こみ、手足を動かす感覚で操縦する。


 駆動系も、空圧シリンダーと炭素ポリマーを使った人工筋肉カーボンマッスルを使い、プラズマ水素燃料電池を動力源としている。

「それでは、作業服の運用実習を始めます。 皆さん、1人前のレディとして、作業服の操縦をこなさなければ、宇宙開発の役には立てませんよ」


 実技担当の教師が元気に声を張り上げる。

 生徒たちは、既に作業服に乗り込み準備万端だ。

 卒業試験まであとわずか。

 運命の日までもあとわずかだった。

そんなわけで、第1話起承転結の結の部分!

色々悩みがあるものだけど、頑張って区切りが付けたのは大きな進歩!

この調子で、頑張って参ります。

何かありましたら、感想やメッセージなどでご連絡ください。

改善点などは直ぐにとりかかりますので。

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