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魔法少女ラジカルはるか~エグニマ時空戦役~  作者: 騎士誠一郎
第1話少女の運命は狂いだす
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1-2緊急会議と宇宙春節

 金星宙域で起きた戦いから2日後、地球連邦本国の首都にある連邦議事会堂では、派遣した調査艦隊から持ち帰った敵のデータを議題とした緊急会議が行われていた。

 議長を務める朝倉紘一あさくらこういちは次のように述べた。

「今回の金星宙域戦では、ドローンが全滅したものの、クサナギの連絡艇が無事敵のデータを届けてくれた。 さらに、全ての艦がほぼ無傷で生還できたことは、奇跡的と言わざるを得ない」


 紘一の発言に、議員たちはおぉっと驚きを上げた。

「しかし議長。 また敵は違う戦法で攻めてくるやもしれません。 その時私たち軍はどう対処するべきでしょうか?」

 軍事参謀本部長官・武田光利たけだみつとしは、今後の対処について質問した。


 無理もない、敵の勢力は未知数な上に、人類側は何の準備も出来ていない。

 この状態で敵が違った戦法で襲ってきたら、人類は瞬く間に絶滅してしまうのが結末だ。

「その件については、慎重に議論を重ねたいところだが、われわれに残された時間はないに等しい」

 紘一は言葉を切る。


 しばしの沈黙が流れ、再び口を開く。

「当面の間は出雲級戦闘艦いずもきゅうせんとうかんを中心とした、機動迎撃艦隊を編成し、各星域に派遣します」

 出雲級戦闘艦は、多数の艦載能力と攻撃能力に優れた船で、連邦軍に於いて現主力艦として稼働している船だ。


 この発言に対し、

「しかし議長! 我々は異星種族と戦うと言うのですか? もっと融和的な方法があるはずでは!?」

 民主派議員の康太・イブリースは荒げた声で異議を唱えた。

「残念だが、我々は一刻の猶予もない。 連絡艇が持ち帰ったデータの中に音声メッセージが記録されていた。 このメッセージを聞いて、民主主義が出来るのかね?」


 紘一は、手元のデータ端末を操作し連絡艇に記録されていたメッセージを再生した。

《この宙域の全ての有機知性体に告ぐ。 我々は全ての有機知性体を虐滅し、平和的社会の終了を実行する。 有機知性体は、弱小かつ矮小な種族と見なす。 我々、単位機械生命体こそが、宇宙に存在する唯一無二の種族である》


 メッセージはここで終了した。

 このメッセージを受けて、議会は戦慄した。

「何と言う事だ……!」

「私たちを滅ぼす種族が存在しているなんて」


 議員たちに動揺が走る。

 無理もない。

 それまで、平和な時代が永遠に続くかと思った矢先に、悪意がある種族が連邦に宣戦布告を持ちかけた。

 これを受けてもなお、平和を求め続けていれば、軍備増強政策の足を引っ張ってしまいかねない。

 イブリースはそれは避けたいと思った。


 自分たちが望む平和とは、人類が存在してこそ意味があるのだから。

「こうなったら、腹を括ります。 民主党は私が何とか説得します! もちろん、他の野党議員たちにも」

 腹を括り、軍備増強案を支持する。

「わかった。 出雲級の増産は今年度の補正予算で賄うとしよう。 他には?」

「私から提案があります」

 紘一の発言に光利が手を上げた。

「迎撃艦隊の編成についてですが、出雲級を4つに天津級を1つの5編成とするのはいかがでしょうか?」

「それは、何故かね?」


 紘一は耳を傾ける。

「天津級に搭載された複合光学索敵システムを艦隊の目と耳の役割を担うのです。 敵は、どんな戦法で攻めてくるか分からない。 その為には、索敵能力に優れた艦をいれておくのが良いのかと」

 光利の案は、正しいと言ったところだ。

 いくら攻撃能力が優れた艦だけでは、索敵がおろそかになり、敵の奇襲などに対処できない。


 索敵能力に優れた天津級を1つでも配備しておけば、心強いわけと言える。

「わかった。 君の案を採択しよう。 本日の会議はこれまで。 各自、異星種族と戦う準備にかかれ!」

 この日の会議が終わり、議員たちはそれぞれの部署に戻り始めた。

 光利は、本職の参謀長官執務室でコーヒーを飲んでいた。

「武田参謀長官、川島です」


 ドアを叩く音に気付き、

「入りたまえ」

 すんなりと通した。

 現れたのは、高い身長と整った髪型、30代前半の若々しい将校だった。

川嶋昇かわしまのぼる大佐、出頭いたしました!」

 昇は敬礼すると、


「川嶋君か。 丁度良い、今君のムラクモを第1迎撃艦隊に旗艦として編入させようと思ったところだ」

 利光はそう言いながら着席を促した。

「あの日に見た通りの展開でした」

 昇は、それを見越していたような発言をしながら席に着く。

「と言うと、君の持つ《あの力》があってのことかね?」

「はい」


 昇と光利は、何やら重そうな雰囲気を醸し出す。

「それと、ムラクモが地球へ戻る際中、艦長私室で見たのです。 年端もない少女が、私の船のパイロットにしてほしいと志願し、空間機動戦闘強化服の操縦に関しては、飛びぬけて高かったと言うものでした」

 その発言を受け、光利はうむ、と頷く。

「それは、何か敵の攻撃目標が定まっていると言う事かね?」


「定かではありませんが、その少女はジュピトリス自治領の出身です。 彼女はこう言いました。 《友達とお父様たちの仇を取りたい》、と」

 光利はその言葉に、

「ジュピトリスか。 わかった、編成が完了次第、すぐにジュピトリスへ派遣しよう。 光成知事とは私が話を通しておく」


 すぐに手配するそぶりを見せる。

 昇は、席から立ち上がりつつ短い返事と共に敬礼し、執務室を去った。

「あぁ、言い忘れていたことがある」

 慌てて光利が飛び出す。


「何でしょうか?」

「君のムラクモには、新しい哨戒攻撃艇20機を配備しておく。 強化服も新しい19式にしておくよう八重樫工業やえがしインダストリーズに手配しておいた」


「ありがとうございます。 丁度艦載戦力も旧式のものばかりで、乗員クルーたちも不平を言っていました」

 利光の発言に、昇は嬉しそうに微笑んだ。

 ムラクモは現在地球連邦軍の衛星軌道ステーションで補給をしている最中だ。

 そんな中での新たな戦力の配備には期待できる。


「ほかにも、何か要件はあるかね?」

「本音を申しますと、敵はどんな戦法で来るのか、なぜ我々を滅ぼそうと言う意図が分かりません」

 昇は、若干だが不安な表情を見せる。

 弱小な種族と見なされた人類を滅ぼそうとする機械生命体種族は、一体どのような理由を持っているのか。


 その真意を知るまでは、迎え撃つと言う行動は正しいと言えるか、それの答えは見つかっていない。

「君の発言には、議論する価値はあるな。 下がっていいぞ。 編成の詳細は後日改めて書類で送ろう」

 光利に言われ、昇は改めて執務室を去った。

 しばらく廊下を進むと、

「川嶋大佐!」


 副長らしき女性が駆け寄って来た。

 20代後半の女性らしい姿勢と容姿。

 鮮やかなルージュを引いた唇は、大人の妖艶さを醸し出している。

「松吉中佐、ムラクモの状況の報告か?」

「はい、補給作業完了は3日後と予定しています」


 松吉まつよしレオナ中佐は、ムラクモの補給情報を報告する。

「わかった。 君には話していないが、作業完了後、本艦は第1迎撃艦隊旗艦の任に就き、ジュピトリス自治領へと向かう!」

「それは何故でしょうか?」

 レオナは首をかしげる。


 刹那の沈黙が流れ、昇は口を開く。

「実はな、敵はジュピトリスを襲うかもしれないと言う私個人の見解が出て、武田参謀長官に打診したところ、すんなり通った。 これを機に、私は第1迎撃艦隊提督の任に就くことだろう」

 昇は、これまでにない艦隊指揮を任せられることに一層の緊張を顔に示した。

 無理もないことだ。


 それまで地球連邦軍は、コロニー群同士の暴動鎮圧などを行うが主な任務だ。

 単艦で行うそれと違い、異星種族と戦う任務を行う艦隊の指揮を取ると言う事は、それまでにもない責任が伴うものであるからだ。

 自らがその艦隊を上手く指揮できるのか、不安は隠せなかった。

「大丈夫です。 大佐はそれまで何度も危機的な戦況を切り抜けたではありませんか? 自分としても、その戦術眼には敬服します」


 レオナは、ほくそ笑みながら昇の汗を持参したハンカチで拭う。

「そうだったな、ありがとう。 やはり君は私の副長で良かった」

「お褒めいただき光栄です」

 2人は、そう和やかな会話で廊下を進んでいく。


 ジュピトリス自治領では、宇宙春節に合わせた商業施設の割引セールを繰り広げていた。

「第1水産コロニーで獲れた宇宙マグロの大トロが、100gで1980クレジットだよ!」

「高原型農産コロニーで育てた朝で獲れたの宇宙大根、1本189クレジット! お買い得だよ!」

 商店に並ぶ生産コロニーで作られた生鮮食品や、

「木星牛のメンチカツ、揚げたてだよ!」

「宇宙キュウリの浅漬け、今なら1パック300クレジットだよ!」


 加工品や総菜が並べられた売り場も活気に満ちていた。

「はるかちゃん! 今日は何を買うの?」

「庶民のおかずは私たちにとっては贅沢ですもの!」

 まなみとエリス、そしてはるかは、この日を楽しみにしていたかのようにはしゃいでいた。

 宇宙春節とは、星歴2年に制定された宇宙規模の休養期間のことである。 


 毎年2月23日から28日までが長い休みとなっている。

 そのため、ジュピトリス自治領は各星域からの観光客を呼び込むため、様々なイベントが開かれている。

 はるかたちも、学院が休養となっているため、普段の買い物ができるこの期間は有難いと言う。

 その理由としては、ジュピトリス女学院の規則があまりにも高い水準で規定されているからだ。

 原則として学院施設内での買い食いや、音楽を聴きながら歩く行為などは禁止されている。


 ジュピトリス女学院は、より高貴な女性へと育成するために、作法から接し方などを厳しく教え込まれる、ハイスペックお嬢様養成学校だ。

 はるかが入学したのは、自治領知事である父の教えを守るためである。

 自分も宇宙一の美少女になって父を納得させたいのが本音ともいえる。

 しかし、時たま来る幻視らしき映像の影響で、本人は少し疲弊しているのが現状だ。


「でも、せっかく学院生活最後の宇宙春節だから、思いっきり楽しもうよ!」

 まなみが無邪気に微笑む。

 このままでは、せっかくの休みも台無しだ。

 はるかは、この長い休みを悔いなく楽しむことにした。

 途端、彼女の視界がまたブラックアウトして幻視が投影された。


『君はお父上の仇をとりたいんだね?』

 上官らしき男性の姿の周りには、戦艦らしき船の格納庫。

 はたして、その原資がもたらすものとは一体?

「はるかちゃん?」


 エリスに言われて、はるかは我に返った。

「また変な映像?」

「うん。 でも、何だろう? 私にしか見えないものって……」

 はるかはそう言いながら、買い物を楽しむことにした。


 その一方で火星宙域では、宇宙春節で盛り上がっていた。

 やはり、宇宙規模のお祭りだから、盛り上がって当然だ。

 しかし、そんな祭日は静かに終わりを迎えようとしていた。


 金星宙域で連邦軍と接触した単位機械生命体の艦隊が、迫り来ていた。

『物産の売買、及び知性体の大規模な行為からして、平和的祝賀行動と判明』

 旗艦らしき船は、仲間に会話信号を送った。

『間も無く虐滅実行宙域に到達』


『到達完了後、直ちに艦載機発進。 この宙域に於ける祝賀行動の強制終了を開始する』

 これより3時間後、警戒に当たっていた火星駐屯艦隊と交戦することになることを、誰も知る由もない。

 これが、単位機械生命体の恐るべき目的を知らしめる、きっかけに過ぎないと言う事すらも……。

と言う事で第1話起承転結の承の部分!

SFって、難しいですが、その分やりがいがあって楽しいです。

まだまだ頑張りますので、これからもよろしくお願いします。

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