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魔法少女ラジカルはるか~エグニマ時空戦役~  作者: 騎士誠一郎
第6話 第107資源惑星探索任務
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6-2 探索と崩壊

 敵護衛艦隊を撃退したはるかたちは、そのまま降下カプセルに乗り込んで第107資源惑星の地表に降りた。

 この星はシダ系の原生植物が生い茂っており、食用の可能性がある生物が少なからず確認できた。

「でも、この何処かに敵の生産施設があるのでしょうか?」


 はるかが通信で第1強化服小隊隊長・若重守わかしげまもるに訊ねた。

「少尉も、敵さんの支配星域に入るのは初めてか? 無理もないさ。 この辺にあるっていう川島提督の直感を信じるしかないさ」


 守は呑気なことを言う。

 すると、大きく開けた平地に出る。

 はるかの目の前には、明らかに不自然なドーム型建造物がそびえたっていた。

 規模は直径10㎞ほどある巨大な施設。

 しかし、稼働している気配はない。


 恐らく機能が完全に停止していると伺えた。

「あ、もしかして、敵の旗艦を沈めたからでしょうか?」

「となると、少尉が沈めた船は、この施設の管理者も兼ねていたと言う事か。 沈んで機能が止まっているなら有り難い。 後で飯奢るからよ!」

 守は上機嫌になった。

 施設の入り口の前にたどり着く。

 やはり管理者も兼ねた護衛艦隊旗艦を沈めたためか、何の反応もなかった。


「扉は開きませんね。 隊長、どうしますか?」

 隊員の1人がびくともしない扉を前に愚痴を漏らす。

「そんな時こそ、少尉の出番だと思わないか?」

「当然です!!」


 守が言い終えた途端、はるかは紅龍をハンマーモードにして扉を叩き破った。

 ガラガラと音を立てて崩れ去る扉。

「よし、中へ入るぞ」

 強化服小隊は慎重に中へと入った。


 そのころ、別動隊は万が一に備えて合流ポイント周辺の警戒に当たっていた。

「カミカゼ1より各機へ、敵さんはいつ来るかわからない。 気を緩めずにあたるように!」

「了解です。 ここの原住生物、意外に美味くて食べ過ぎてしまいたいくらいです!」

 他愛のない会話をしていると、ガサガサと大きな音を立てて、カエル型の大型原住生物が現れた。


「こいつは?」

『分析完了、至って温厚で縄張りを持たず行動する原住生物と断定。 しかし、空腹時は眼前の物体は何でも捕食する習性を持つ』

 AIが解析した通り、この生物は正に食事時だ。

 大きく口を開け、強化服を飲み込まんと襲い掛かってくる。


「各機気を付けろ! こいつは腹ペコだ! 最優先は合流ポイントの安全だ!!」

「了解! 知ってましたか? こいつ、実は意外と美味いんですよ!」

 通信でこの生物について話し合うが、今はそれどころではない。

 とにかくこの生物を何とかしなければ、話にならないことは確かだ。


「よし、こいつを帰り道の食料にする! 給仕班、どうやら帰りの飯が確保できるぜ!」

 とにかく食料の確保も出来るとあって、兵士たちの士気は上がった。

「こいつを倒すにはコツがあります!」

「そうか、カミカゼ2、指示を頼む!」


 カミカゼ2は指示を出し始める。

「こいつの血は猛毒です! 完全に血抜きしないと、食べてすぐあの世行きです! まず、心臓に近い下顎の付け根を切り裂いて下さい!」

 カミカゼ2の指示に従い、射撃班が生物の足元を撃って威嚇し、その隙に、カミカゼ1があごの付け根を切り裂いた。


 狙い通り、毒々しい紫の血が噴き出し、辺りの地面を染め上げた。

 生物は息絶え、あおむけにひっくり返った。

「うへぇ、こいつはたまげた。 カミカゼ2の言う通り血抜きが完全にできなかったらoutだぜ」

「まったくだ。 しかし、どうしてそんな知識を?」


 各員が首をかしげる。

 これほどの処理を適切に行えたのは何らかの知識やスキルを身に着けているに違いないからだ。

「実は自分、こう見えて《宇宙可食生物処理技能士・1級》の資格を取っているのです!」

 カミカゼ2はえへんと愛機の胸を張った。


 宇宙可食生物処理技能士は、文字通り、宇宙に存在する食べられる生き物の解体処理をする技術を持った人間の総称である。

 宇宙に数多くある手つかずの惑星には、後の食材となる生物が数多くいるが、まれに迂闊に食べるととんでもない事態を招くものも少なからずいる。

 そうした生物を安全かつ美味しく解体する技術を持つ技術を要する資格、それが宇宙可食生物処理技能士。


 彼らのおかげで、捕まえて解体された宇宙生物が各星域の高級レストランで提供されるという。

「あ、そいつは雌ですね。 こいつの卵は、茹でてサラダのトッピングにすると絶品です! あと、内臓は毒があって食えませんが、骨はスープの出汁に、あと肉に関しては……」

「もういいから、早く解体処理しろ!!」


 延々と続く解説にしびれを切らされ、カミカゼ1はやけくそ気味で指示を出す。

 生物の皮をはいで、内臓に傷がつかないように丁寧かつ素早く処理する。

 技能士ならではの処理テクニックだ。


 新鮮でおいしそうな肉がゴロリと並べられた。

 カミカゼ3が冷凍処理を施して輸送可能状態にする。

「腹の卵も冷凍しておきます」

「そいつは冷凍すると保存性が飛躍的に高まるからな。 味もより良くなるから、やっておいてくれ」


 なんて他愛のない会話をすると、他の偵察隊が帰って来た。

「お、帰って来たぞ」

「カミカゼ1、ご苦労だった。 しかし、飯を確保するとは。 俺たちの艦隊も食料がつきかけたところだったんだ」

 偵察隊隊長が呑気に話しかける。

 無理もない、地上偵察が完了したばかりだったから、腹が減るのも当然だった。


「それで、例のちび魔女がいる部隊は?」

「敵の施設に入りました。 敵の親玉を沈めたから、もうほとんど動かない状態でした」

 その情報を聴いた隊長は、顔色を怪しめた。

「どうかしたんですか?」

「念の為、連中に伝えてはいるが、万が一に備えて携帯式緊急転送装置モバイルエスケーパーを装備させておくようにしたんだ。 奴らも馬鹿ではない。 何か、施設と言う重要な証拠を残したくない気持ちがあるのかもしれない」


 その言葉にカミカゼ1もうなずいた。

 敵も馬鹿ではないと言う事は知っている。

 情報を隠滅する手段は、必ず持っているはずだと確信している。

 急いで処理した肉や偵察隊が採取した可食植物を降下ポッドに積み込む。


 この2時間後、敵は恐るべき手段で、情報を隠滅することになる。

 それは、エグニマと言う存在が対話することが出来ない悪意の塊であることを人類に知らしめるきっかけになることを。


 エグニマの生産施設内、はるかたちは強化服から降りて探索を行っていた。

 やはり施設管理者が撃破されたのか、ほとんどが稼働していない。

 警備システムも全く作動していないことが幸いしている。


「隊長、やけに静かですね。 何かの罠か、あるいは誘っているのか、わかりません」

「確かに、これは罠かもしれないな。 各自緊急転送装置を起動できるよう準備しておけ。 そうしなかったら敵さんの思うつぼだ」

 守は、はるかの言葉に耳を貸して警戒を呼び掛ける。


 施設内を進む、其処には自動式の工場がおびただしい規模で広がっていた。

 自分たちを生み出す生産ラインから、鉄鋼資源の加工場。

 はたまた、大型艦の建造ドックまで完備されていた。


「まるで、ここが自分たちの故郷みたいだ」

 守はこんな事を言いながら、奥へ進む。

 すると、

「隊長、この端末からデータが取り出せそうです!!」


 隊員の上重が接続できそうな端末を見つけた。

「これで、敵の情報が分かるな」

「見てください! この辺に生物の死骸らしきものが!!」


 はるかに言われ、守は端末周辺を見渡す。

 その光景はすさまじいものだった。

 原住生物の腹が切り開かれ、内臓の代わりに人工物を埋め込む過程で止まっている光景が眼前に広がっていた。

「ひどい……!」

 はるかがそう言い終えるや否や、すぐさま嘔吐した。

 この凄まじく無惨な光景に言葉を失うものは少なかった。


「データの取り出しは?」

「今始めたばかりです。 敵さんの会話ログもばっちり拾ってます」

 上重はサムズアップで守に答える。

「敵はいつ我々諸共この施設を破壊するかわからん。 収集が完了次第、緊急転送装置で脱出する!」

 守は敵の行動を先読みして、脱出できるよう準備を促した。


「うぅ……」

 胃の内容物を吐き出したはるかはあることに気づく。

 吐瀉物の中に金属片が少なからず混じっていたことに。

(え!? 私の体、何が起こっているの!?)

 考えるのは後回しだ、そう考えた。


「隊長、データの取り出し終わりました!」

「よし、各員緊急転送!」

 守の合図で、はるかたちは強化服の下へと転送する。

 その時、エグニマは守の読み通り施設を恐るべき手段で隠滅を始めた。

 それもスケールが計り知れない方法で。


 帰り道、推進器を吹かして帰路へと急ぐはるかたち。

「隊長、何故長距離加速で帰るのですか?」

「何か嫌な予感がするんだ。 敵さんも馬鹿ではないからな。 きっと、とんでもない手段を使うはずだ」

 その時、はるかの脳にエグニマの声が響いた。

『惑星消去システム起動開始。 これより10分後には、この惑星は完全消去される。 証拠は残らない。 敵諸共虐滅する』


その声を聴いて、

「隊長、エグニマの奴ら、この星を私たち諸共消し去るつもりです!!」

「そう来たか! 各機聞こえたな? 急いで帰るぞ!!」

 凄まじい地鳴りが響くと同時に、守たちは推進器を全開にして、急ぎ始めた。

 大地が大きく裂け、其処からマグマが勢いよく噴き出す。


 生物は、何事かと言わんばかりに騒ぎ出す。

 山々が火を噴き、大地を焼き尽くす。

「守隊長! こっちです!!」

 合流ポイントを警戒した部隊がまもるたちを誘導する。

 何とか間に合ったのが幸いした。


 全員降下ポッドに乗り込んだ。

「上昇用ブースター、点火!!」

 帰るための上昇用ブースターが火を噴く。

 大地の裂け目が迫る。

 それは、降下ポッドを墜とそうと言わんばかりの勢いだ。


 運よく上昇し、全滅は免れたが、その直後の光景は、凄まじかった。

 吹き上げたマグマがあらゆる生命や大地を焼き尽くす。

 惑星の核がエグニマの仕掛けた爆縮崩壊装置によって崩壊する。


 それがきっかけで、第107資源惑星の崩壊が始まったわけだ。

 降下ポッドが昇たちの下へ帰還する。

「調査部隊、帰還しました!」

「各艦全速、退避!!」


 天津級で構成された偵察艦隊と第1迎撃艦隊は降下ポッドを回収しつつこの場を離れる。

 直後、第107資源惑星は最期の時を迎えた。

 地殻とマントルが委縮し、核も爆縮し切り、内包エネルギーが一気に解放され、大爆発を引き起こした。


「これが、エグニマ……!」

 その光景を目の当たりにしたはるかは、こぶしを握り締める。

 そして、

「バッカヤロオオオオオオオオオオオオオオォォォォォォっ!!!!!!」

 悲しみと怒りが混じった大きな声で怒鳴った。

 戦争は、残酷だ。


 どちらかが滅びるまで続くのが、唯一のルール。

 エグニマは余りにも非道かつ残忍すぎる。

 はるかは改めて決意した。

(この体がどうなってでもいい! 私はあいつらをこの手で殲滅してやる!!)


 戦士の怒りと、自らの憎悪を胸に、はるかは更なる戦いへと身を投じることにした。

 後に、人ならざる異形なる者へと変わることを知らずに……。

 だが、それも受け入れる仲間の存在もいることも知らなかった。

エグニマの秘密が少し明らかになってきました。

だけどこれは序の口です。

エグニマはさらに恐るべき秘密を隠し持っています!!

今後の展開をお楽しみに!

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