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魔法少女ラジカルはるか~エグニマ時空戦役~  作者: 騎士誠一郎
第1話少女の運命は狂いだす
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1-1 幻視と接触

 まただ、また同じだ。

 彼女はいつも「それ」に頭を悩ませていた。

 ぼんやりとした視界の中に、学園が蹂躪されているかのような映像。


 少女たちの断末魔が響いた途端、

「光成さん!」

 教師の声にハッと我に返った。

 あたりを見渡せば彼女が見慣れた教室、宇宙公民担当教師は呆れた顔をしていた。


「す、すみません。 少しぼーっとしていまして……」

 少女・光成みつなりはるかは顔を赤めながらながら陳謝した。

「まったく、いくら主席だからと言っても、呆けていてはよろしくなくて?」

 宇宙公民担当教師はすぐさまデジタルスクールボードに振り返る。


 周りの女子使途からはくすくす笑いが響いていた。

「は、恥ずかしい……!」

 何を隠そう、光成はるかは木星宙域最大の学園コロニー「聖ジュピトリス女学院」の3年生トップを走っている。


 流れるような銀色のロングヘアと大きな青い瞳。

 そして、はちきれんばかりの大きな乳房が見るものをひきつけてやまない。

 その為か、木星宙域のコロニー群では、ファンクラブが出来てしまうほどだ。


 本人は気にしてはいないが、男女平等に接する姿に生徒や市民からはあこがれの的である。

「そう言うわけで、地球連邦樹立直後は、第2次宇宙戦争が勃発し、旧コロニー革命政府が……」

 この日の授業は、地球連邦政府樹立後の戦争に伴う人的被害についてだった。

「旧革命政府指導者のハンザック・ガシムヘは、連邦政府に対し《コロニー市民への援助》をと言う名目で戦争を仕掛けました。 しかしながらその真意は連邦を自らの手で掌握したかっただけに過ぎなかったのです」


 宇宙公民担当教師は、いったん言葉を切って生徒たちに振り向く。

「ガシムヘ氏の要求の真意に気づいたコロニー市民は、どんな行動に出ましたか? 光成さん」

「はい」

 はるかは立ち上がる。


「連邦との融和的な解決を求め、ガシムヘ氏を刑事告発し、退陣へと追いやりました。 その後、新たな指導者として、アンドレフ・マーク大統領が連邦政府と融和的な交渉に入り、後に地球とコロニーとの不可侵条約である《ピースクラフト条約》を成立させました」

「よくできました。 皆さんもご存じの通り、ピースクラフト条約はこの数100年間守られ続けられています。 それは、異星種族が融和的な接触を計りやすくするためのもので、近い将来、私たちが彼らと友好的な関係を築き上げ、ゆくゆくは銀河の恒久的平和の礎を築き上げるのです」


 宇宙公民担当教師がそう言い終えると、授業の終わりを告げるベルが鳴り響いた。

「あら。 本日はここまでにしましょう、ではご機嫌よう」

『ご機嫌よう』

 生徒たちに見送られ、宇宙公民担当教師は去った。

 生徒たちは背伸びをしながら昼食の準備に勤しんだ。


 昼休みの時間、はるかは学生食堂に来ていた。

「はるか!」

 聞きなれた少女の声。

「まなみちゃん、エリスちゃん!」


 親友のまなみとエリス、2人とは中等部からの大親友であり、良き理解者だった。

「お席、空いてる?」

「一緒に食べましょう!」

「うん!」


 そう言いながら3人は、ささやかな女子会を開いた。

「そう言えばさ、商業区にすっごくおいしい宇宙タピオカ専門店ができたの!」

 まなみが切り出したのは、巷で話題のドリンク専門店がオープンしたことだ。

「知っていますよ! 一番の人気はスイートバンブーっていうメニューでしてよ」


 などと、楽しい会話をしていた時だった。

 突然視界がブラックアウトして、再び「あの」映像が網膜に投影される。

 《弱者に生きる権利はない。 われわれは、有機知性体の虐滅と、平和的社会の終了を実行する》

 無機質な機械音声と共に動き回る無人機械。 レーザーを放ち、生徒を蒸発させるものもいれば、多脚ユニットに装備されたモーターブレードで教員を切り刻むものがいる。


 あまりの惨状に声を失うが、

「はるかちゃん、どうしたの?」

 まなみが声をかけた事でわれに返った。

 気が付いた時は昼休みが間もなく終わろうとしていた。

「ごめん。 また変なのを見ちゃって」

 はるかは恥ずかしそうに頭を掻いた。

「最近様子が変よ? 何か悪い物でも食べた?」

 まなみの心配に対し、

「だ、大丈夫。 何でもないから」


 どうやら大丈夫な様子だった。

 しかし、はるかは先ほど見た映像に違和感を覚え始めた。

(今の映像は、一体何なの? これって、何かの警告? それとも未来から送られた私へのメッセージ?)

 あれこれ考えたいが、今は3週間後に控えた卒業試験に向けて準備をしなくてはと思った。

 はるかは、大急ぎで昼食を平らげ、グラウンドで行われる作業服実習に臨むことにした。


 一方、地球連邦軍・天津級探査監視艦「ミコト」は、金星宙域での警戒監視任務にあたっていた。

 天津級探査監視艦は文字通り未知の惑星探査と、敵性異星種族が人類領域に入ってこないための監視を任務とした船で、自衛用単装レーザー砲が2門、対空防御システムが30基、自立攻撃型ドローン10機を搭載する航宙艦だ。


 ミコトを始め、友軍艦として「クサナギ」、「トンボキリ」の2隻が警戒監視に当たっている。

『トンボキリからミコトへ』

「こちらミコト、何だ?」


 トンボキリとミコトの艦長が通信で語り始めた。

『今回の警戒監視任務は、何か嫌な予感しかしないのですが……?』

「無理もない、金星宙域のコロニー群が何者かにやられたと言うからな」

 連邦軍情報部からの報告によれば、金星宙域人類コロニー群が敵襲に会い、壊滅したと言う。


 今回の任務は、その調査も兼ねているからだ。

「艦長、間も無く金星宙域に到達します」

 ミコトのオペレーターが艦長に金星宙域に着くと報告する。

「よし、到達次第、第1戦闘態勢を発令する! 敵はどう攻めてくるか分からん! 不確定要素が多い戦闘だ。 気を引き締めて当たるように!」


 その発言にミコトのクルーたちは気を一層に引き締めた。

 無理もない、敵は「どうやって」人類領域に攻めてきたのか、「あるい」は、威力偵察なのか?

 ミコトの艦長は緊張で冷や汗を流す。

 白を基調とした艦長用の制服の中は、冷や汗で群れ始めている。

「ミコトからクサナギへ」

『こちらクサナギ、何の御用でしょう?』


 通信をクサナギにつなぎ、モニター越しにクサナギ艦長と連絡する。

「クサナギには偵察用の小型ドローンと通信伝令用の装甲連絡艇があるな?」

『ありますけど、何故ですか、提督?』

「敵の戦力は未知数の上、我々にとっても不確定要素が多すぎる。 偵察ドローンを射出して情報を集め、そのデータを連絡艇のデータベースに転送しろ」


 クサナギ艦長はその言葉に、

『確かに、敵はどのような手段を持っているかわかりません。 その案は了解しました。 データをなるべく多く転送次第、最寄りの基地へ向かわせるようAIパイロットに命令します』

 ただちに取り掛かる旨を伝える。

「この宙域からだと、最寄りは月周回軌道基地だな。 あそこへ向かうよう伝えてくれ」

『了解しました』


 通信モニターが消える。

 同時にクサナギの長方形の艦体から小型偵察ドローンが放たれる。

 その形は、旧世代の全翼機に類似している。

 機首に搭載された複合光学カメラが隅々まで映像を記録する。

 その情報がクサナギに送られ、万が一のために準備している装甲連絡艇のデータベースに送られる。

「トンボキリより入電!」


 突然ミコトのオペレーターが叫ぶ。

「何事!?」

「敵艦を光学カメラで補足! なお、敵は我が艦隊に気づかず。 このまま様子を見て連絡艇を射出する準備を進めよ、とのことです」

 女性オペレーターがコンソールを操作する。

 モニターには、敵の船の姿が映し出された。

 楕円系の船体、その上下には6門も連なった大型レーザー砲塔が2門装備されていた。

 その数からして5隻はあると言ったところだ。


 偵察ドローンたちは、なるべく気づかれないギリギリの距離でその姿形を連絡艇に送り続けた。

 その時、何かが敵艦から飛び出し、ドローンたちに向けて攻撃を始めた。

「敵艦隊、こちらに気づいた模様! 偵察ドローン隊、全滅!!」

「各艦戦闘態勢! クサナギは予定通り連絡艇を射出、その後はミコトとトンボキリと共に連絡艇が重力グラヴィティジャンプするまでの時間を稼げ!」

『了解しました!』


 クサナギ艦長は、連絡艇を緊急射出させ、臨戦態勢を整えた。

「各艦、シールド展開後、敵艦体を迎撃する。あの6連レーザーは破壊力が未知数だ。 本艦の攻撃ドローンで撹乱させ、その隙に斉射で叩く! ミコトより以上だ」

 ミコト艦長はそう言いながらオペレーターに攻撃ドローンの発進を支持する。

 オペレーターの指示で、攻撃ドローンが一斉に飛び立つ。


 すぐさまハッチを閉め、ミコトとトンボキリは主砲を敵艦体に向ける。

 三角形を模った攻撃ドローンが敵艦体が出した艦載機を蹴散らす。

 円盤形の敵の艦載機はすぐさま機体下部のプラズマ爆弾投射機を発射する。

 ドローンたちは直ぐによけ、隙をついてレーザー砲で撃破する。


 敵艦も主砲の充填を急ぎ始めた。

 あれを撃たれたら、シールドでも持つかどうか?

 ミコト艦長はある決断をする。

「全艦、回避行動に専念せよ!」

「何故です?」

「敵が主砲を撃つ! 当たれば甚大な被害は免れん!!」


 ミコト艦長が叫ぶ。

 クサナギとトンボキリも回避行動に移った。

 この決断は正しかったともいえた。

 敵艦体のレーザー砲が斉射され、連邦調査艦隊は何とか回避に成功した。

 しかし、それは思わぬ弊害が出た。


 「クサナギのドローン並びに、本艦の攻撃ドローン全滅!!」

 オペレーターが悲鳴のように叫ぶ。

 攻撃ドローンが跡形もなく全滅したのだ。

 しかし、希望があった。

「クサナギより入電!」

「なんだ?」

「装甲連絡艇がジャンプに成功! これで心置きなく戦えるとのことです!」

 それは、人類の希望となりうる知らせだった。

「ならば、言う事はあるまい。 主砲斉射と同時に現宙域を離脱! 今回はあくまでも偵察だ! 必ず生きて帰るぞ!」

『お供いたします!』

『貴方と戦えて光栄でした!』


 トンボキリとクサナギも同意した。

「主砲斉射準備!」

 ミコトを中心に、レーザー砲の砲門が敵艦体に向けられる。

「エネルギー充填チャージ完了! 何時でも撃てます!」

 砲術長が元気に叫ぶ。

「目標、敵艦隊!」


 敵も艦載機の大半を失っている。

 敵もわかっているのか、回避行動に移り始める。

 この好機を逃さなかったのは連邦軍だ。

「撃てーーッ!!!」

 単装レーザー砲が一斉にはなたれ、敵艦隊に命中。

 5席の内2隻が沈黙、残りの3隻も軽いダメージを負った。


 敵はこのままでは危ないと判断したのか、すぐさま重力ジャンプで撤退した。

「敵艦隊、撤退しました」

 ミコトのオペレーターは艦長に訊ねる。

「いずれ私たちはまた戦うことになるだろう。 私たちの裏をかく戦法を用いてな」

 ミコト艦長は、この先の戦いがすでに始まっているのだと言う事を知っていた。


 こうして、人類は謎の敵と接触コンタクトした。

 この小さな戦いは、時空を越える壮絶なものになることは、誰一人知る由もなかった。

と言うわけで、連続投稿で書き上げた第1話の起承転結の起の部分!

謎の艦体の目的とはいったい?

次回更新は不定期ですので次回以降の投稿のお知らせは、Twitterの活動報告を持ってお知らせします!!


誤字が確認されたので、修正しました。


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