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4時間でこんなにも?

 りこさんに言われた通りに、お店の名刺に名前を書いていた時、隣で私が名刺を書いてる姿を、ニコニコと眺めていたりこさんに聞かれた。


 『そう言えば、うららちゃんって本名そのままを源氏名にしたの?』


 そうなんだよねぇ。これ今日お店に来るまでに色々と名前を考えてみたのはみたんだけど、私きっと源氏名で呼ばれても直ぐに自分の事って気付かないで、反応出来ないと思ったんだ。だから、結局は本名の【うらら】のままにしようって思った。


 堀田さんに聞いたら幸いにも、お店で働いてる女の子の中に【うらら】って名前付けてる女の子は居ないって言ってたし。


 「はい、源氏名で呼ばれても反応出来なそうだったから」


 りこさんに源氏名を本名のままにした理由を話すと、りこさんは微笑んでいた。取り合えず10枚ほどの名刺に名前を書いて、書いた名刺を借りているポーチの中に仕舞った。


 その後りこさんと2人で普段は何をしているとか、よくある世間話をしていると、堀田さんがやって来て私に声を掛けてきた。


 『うららちゃん、どう緊張とかしてる?』


 「あっ特には、りこさんに今も色々教えて貰ってました」


 私が、堀田さんにそう答えていたら、横からりこさんが堀田さんに向けて。


 『堀田マネージャー、今日出来るだけ、うららちゃん私と一緒の席に回してよ、まだ慣れてないと思うから』


 その言葉を受けた堀田さんは。そうだな、出来るだけりこと同じテーブルに着けれるようにしてみるよ。と言っていた。

堀田さんって、お店のマネージャーだったんだ。マネージャーって確か店長のすぐ下の偉い人だったなぁ。りこさんに聞いていた事を思い出していた。


 その後も3人で話をしていたら、堀田さんが自分の右の耳の穴を人差し指で押さえるような仕草をした。


 『りこ、うららちゃんと早速、テーブルに着いてくれ、2名様でフリーだ』


 りこさんは、頷いた後に自分の持っているブランド物の小さめのバッグを持ち席を立った。私はそれをポカンと見ていたら、りこさんが私に笑いながら。


 『うららちゃん、お客さんの所に私と一緒にお仕事しに行くよ』


 私はその言葉に、慌てて席を立ちりこさんと堀田さんの後を付いて行った。


 堀田さんの案内で着いたテーブルには、どこにでも居そうなオジサンが2人座ってた。お父さんより少し年上ぐらいかな?


 堀田さんが私の事をお客さんに紹介した後に、言われた通りの場所に座った。私は今現実にお客さんの横に座って、キャバクラで働くキャストとしての仕事に就いてるって思っただけで、物凄く緊張してきた。


 私が緊張で、お客さんに何も話せないのを見たりこさんが。


 『ほら、うららちゃんお客さんにご挨拶しなきゃ、この子今日が初日なんですよ~黒髪ストーレトで最近見掛けない清楚な感じの子でしょ? 指名とかしちゃうと【初めての指名客】なんかになれちゃいますよ』


 そんな事を私とお客さんに向けて言った。その一言で我にかえった私はお客さんに。


 「うららです、よろしくお願いします」


 とだけ、ようやく挨拶が出来た。りこさんのように、面白い事なんて全然思い付かなかった。


 その後は、堀田さんに教えて貰った事を思い出しながら、お客さんの飲み物を作ったり、灰皿を変えたりしてた。

かなり、りこさんがフォローしてくれてたけど……


 『うららちゃん、ガチガチだね? 何か飲み物でも飲んだら?』


 お客さんからそう言われた時に私は思わず。


 「それじゃ、このウーロン茶を」


 そう言って、テーブルの角に置かれている、ピッチャーに入ったウーロン茶に手を伸ばそうとした。


 『うららちゃん、それはお客さんの飲むものだから、うららちゃんは飲んじゃダメだよ、ほら、店内を歩いて回ってる人に軽く手を挙げて呼んでから、飲みたい飲み物を言ってみて』


 りこさんに言われた通りに私は近くを歩いてた店員さんを呼び止めて【ウーロン茶1つ下さい】って頼んだ。私の後にりこさんも、オレンジジュースを頼んでた。


 飲み物がやってきた後、りこさんがやってる事を真似して、お客さんとグラスを合わせ。


 「いただきます」


 ちゃんとお客さんにお礼も言えた。


 そして10分か15分ぐらい経ったぐらいで、テーブルに堀田さんが女の子を2人連れてやって来た。私は交代かな? と思い、最後にお客さんにさっき書いた名刺を渡そうとしていたら、お客さんが。


 『あっ今着いてる子達を指名するよ』


 そう言った。


 お客さん達は、その後も3時間ぐらいお店に居て、帰って行った。

帰る時に、エレベーターの前までお見送りする事も、りこさんが教えてくれた。


 そして、りこさんと2人でキャストの女の子達が座る【待機席】に移動して座った後に、私に笑顔で話し掛けてきた。


 『やったね、うららちゃん場内ゲット出来て、後はドリンクが3杯ずつで、指名入ってから2セットいたから……ドリンクで3,000円、指名で2,000円の合計5,000円プラスになったね』


 え? たったあれだけの時間、お客さんと話してただけなのに、時給とは別に5,000円もお金貰えるの? 私はその事にビックリしていた。


 そして、私のキャバクラ初日は堀田さんと、りこさんのおかげで私が決めてお店に伝えてあった約束の時間の23時まで、何事も無く過ぎていった。


 帰る為の着替えをしに更衣室に行く前に、閉店まで残るりこさんに向けて。


 「りこさん、たくさん助けてくれてありがとうございました、またよろしくお願いします」


 そう挨拶をして、着替えに行った。


 帰り際お店を出る時に、何人かの男の店員さんから。


 『うららちゃん、お疲れ様』


 と、声を掛けて貰えた。


 今、私は部屋に帰る為の地下鉄の車内に居る。

アルバイトの為に新しく買った手帳を広げて、メモをしている。


 ○月△日(水)

・場内指名×2……2,000円

・ドリンク×6……6,000円

・フード×1……1,000円

・時給2,000円×4……8,000円

・合計……17,000円


 書き終わった手帳の数字を見ていると、自然と顔が綻んでくる。

たった1日4時間のアルバイトで、こんなにお金が貰える。

欲しかったブランド物のバッグも直ぐに買えそう。


 私は、こんなにお金の貰えるアルバイトを見付けた事に喜んで、今度のバイトの日もちゃんと行こう。そして、たくさんお金を稼ごう。そう思った。

 

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