決まった事。決められた事。
私が性的なサービスを男の人を相手に行う風俗嬢だと言う事が両親にバレてしまった。
キッカケは風俗情報誌に載せた顔出しの画像だった。
情報誌のお店の広告ページを見せられて、この下着姿で載ってるのは、私本人だよな? そう問い詰められた。
どこも隠してない写真なだけに、私に似た人とか違うとか言い訳も出来ずに、頷く事しか出来なかった。
お母さんは取り乱して涙をポロポロと流し泣いている。
お父さんは、今まで見た事も無い恐い顔をして私の事を睨んでいる。私はバレてしまった事が現実だと受け止めきれていない。
全てが嘘で夢なら良いのに……零士……私どうしよう。
『それで? どうしてこんな店で働いているんだ?』
恐い顔しているお父さんにそう聞かれた。私はお父さんの言葉に反射的に下に向けていた顔を上げ、お父さんの顔を見てしまった。
恐い顔をして本気で怒ってる。何て言ったらいいんだろう……
私はしばらくお父さんの質問に答えられずに黙っていたが、頭の中で色んな言い訳を考えていた。でもそのどれもが上手く誤魔化せそうに無い。だって私の下着姿の写真が載ってる雑誌が目の前にあるんだから。
「ブランド物のバッグとか……服とか欲しくて……」
辛うじてそれだけは言えた。
その後、お父さんとお母さんの目の前でお店に電話を掛けて、今日限りでお店を辞める事を店長さんに告げた。
店長さんは、いきなりの事に驚いていたが、私が言った【情報誌に載せたのが両親に見付かって】の一言で事情を察してくれたのか、特に何も言わずに、アルバイトを辞める事に了承してくれた。
アルバイトも辞めて真面目に大学に通えば、その内両親も許してくれるだろう。そんな風に考えていた私だけど、そんな私が望む事にはならなかった。
『1人暮らしは勿論の事、大学にももう行かなくていい』
お父さんのその言葉が信じられなくて、思わずお父さんに問い詰めてしまった。
「どうして? 大学には行きたい! なんで大学まで行くなって言うの?」
私のその言葉にお父さんもお母さんも、逆に少し驚いていた。私は普通の事を言っただけなのに、何故驚かれるのかが解らなかった
『お前……この雑誌、お父さんが見付けて来たと思ってそうだな』
え? お父さんが見付けたから、私がヘルスでアルバイトしてるのがバレたんじゃないの? どういう事?
『この雑誌にお前が載ってる事を、教えてくれたのは、お前と同じ大学に通ってる、ミッちゃんなんだぞ』
予想もしてなかった人の名前が、お父さんの口から出てきた。
ミッちゃんとは、私と中学と高校が同じだった私の友達の1人で、何度も家にも遊びに来たり、大学受験の為に家に泊まり掛けで一緒に勉強したりした中だ。
『ミッちゃんが、大学でお前がいかがわしいアルバイトをしている事がウワサになっていて、その事について色々と聞いてみたら、この雑誌に行き着いたそうだ、お前……大学で既に風俗でアルバイトしている事が知れ渡っているのに、大学に普通に行く気なのか?』
私は、ここに来てようやく自分が何をしたのか、何をしでかしたのかを理解出来た。
風俗嬢として働いてるウワサは、私が大学に行ってる間ずっと消えずに、アルバイトを辞めたとしても付いて回るだろう。
そんなウワサが付いて回る大学に、これから後3年以上も通える自信なんてまったく無いって思った。
お父さんの言う通り、大学も辞めるしかないのかも知れない……
その日の話し合いで、1人暮らしの部屋を解約して実家に戻る事。
大学も辞める事。2度と変なアルバイトをしない事。ほとぼりが冷めるまでは、外出等も控える事。それらの事が両親の口から提案されて、私はその全てを受け入れるしか無かった……
話が一段落した後、1人暮らしをするまで使っていた自分の部屋のベッドに倒れ込んで、私はずっと泣いていた。
どうしたらいいのか? これからどうなるのか? 不安な事ばかりが頭の中でグルグルと渦巻いていた。
「零士……私どうしよう? 助けて……零士……」