情報誌に載せてみよっかな。
「う~ん……」
何時ものように零士のお店に自分の仕事の帰りに寄り、楽しんだ後、零士と2人で早朝のファミレスに寄って軽くご飯を食べていた時に、零士に悩みを聞いて貰った。零士から提案された事に対して、私なりに考え悩んでいる。
『今はうららの事は店に行ってからしかお客さんは、知りようが無い訳だろ?』
「そうだね、うん」
『事前に、うららがこんなに可愛いって事を知ってたら、今より更に指名も増えるのは確実だと思うけど?』
私は最近は、零士にラストソングを歌って貰う事を楽しみにしている。流石に週末にって訳にはいかないけど平日ぐらいなら、少し頑張ったら零士のラストソングが聞ける。
でもそれは確実って訳でも無い。そりゃぁ零士以外にもホストの人はお店に居る訳だし、その人達にだって私と同じような事を思う人も居る。
零士のお店に行く度に、零士が歌うラストソングが聞けたら1番なんだけど、そう言う訳にも現状はいけてない。
それじゃどうしたらいいか? ってなったら、私が零士の売り上げを上げてあげたら済む話なんだけど。私にも限界はある。
無理して売り掛けをしても払えなくなる。なんて前みたいな事にはならないけど、売り掛けは零士が物凄く嫌がるから、しないようにしている。
正直、行く度に零士のラストソングを聞く為のお金が足らない。
もっと零士の為にお店でお金を使ってあげられてたらって思う事が何度もあった。
その為に私に何が出来るだろう? って零士に相談を持ち掛けていた。
零士は、暫く悩んで考えた末に、1つ教えてくれた事がある。
『俺の属してる派閥の響夜さん、知ってるだろ? うららの席にも俺の事を指名してくれてるって事で、何度も遊びに来てくれたりしてるから、その響夜さんを指名してる人って大半が、コレに載ってるんだよな~』
そう言って零士は、テーブルの上に置かれている雑誌を指で2~3度トントンと叩いた。
テーブルの上には、ホストのページにお店の紹介と共に零士の写真が載っている。私がその零士の写真を見たくて、ファミレスに来る途中にコンビニで買ってきた、風俗情報誌が置かれていた。
「そっか~やっぱそうだよねぇ……お店に来ないと分からないのと、来る前から分かるのとじゃ全然違うのは当たり前だもんね」
『うららも、載せたら間違いなく人気出そうだよな、だってめっちゃ可愛いから、ひょっとしたらこの繁華街で1番になれちゃうかもな』
零士にそう言って貰えるのは、とっても嬉しい。
もし、そんな事になったら零士の事をお店のNo.1にだってさせてあげられるかも知れない。No.1になってる零士の事は私も見てみたい。そして、私が零士をNo.1にした。って他のホストやお客さんにも自慢もしたい。
だけど雑誌に顔を出すのは流石に無理かなぁ……
「学校の人や、両親とかに見られたりしたら困るし……」
『それは大丈夫だと思うぞ』
零士がいやにあっさりと大丈夫だと言った事に私は驚きながら、どうしてそう思うのかを聞いてみた。
『うらら、お前さ、この業界に入るまでにこう言う雑誌を買った事あったか?』
そう言われて、考えてみると確かにこのアルバイトを始めるまでは、コンビニなんかで見掛けても、手にしたり。ましてや買おうなんて思った事すら無い。
「こう言う雑誌がある事すら知らなかったかな~」
『だろ? こう言う雑誌ってこの雑誌に用のある人達しか基本は買わないから、大学生が買って読むなんて事は、まず無いから』
言われてみれば、その通りだった。
『それに、うららの両親、まぁお父さんの方だけど、風俗遊びなんてするタイプじゃ無いんだろ?』
私のお父さんは、生真面目でお母さんの事が大好きで真面目な性格をしてるから、きっとキャバクラですら行った事は無さそうなタイプ。
「そうだね~そんな感じじゃないかな~」
零士の言ってる【大丈夫】な理由を聞けば聞くほど、本当に大した問題にもならないように思えてきた。ちょっと過敏に心配し過ぎてるのかも。
『それにさ最初から顔を全部出さないで、こんな感じで口元を隠してってやれば、直ぐにうららだって分かんないだろ?』
そう言って零士は、情報誌のヘルスなんかのページを開いた。
そこには確かに、顔を半分手で隠して載ってる風俗嬢の人の写真があった。
これなら更に私だって直ぐに分からないかな。
その後も零士と2人で話し合いを続けた結果、情報誌に先ずは、顔を半分隠して載ってみよう。って事を決めた。
これで今よりもっとお客さんが増えて、お金を稼げるようになったら、もっと零士の為にお店で使えるお金も増えるんだから。
私は零士と2人で決めた話し合いの結果に従い。次のアルバイトの日に、お店に行くと店長さんに聞いてみた。
「店長~うちのお店って、情報誌なんかに広告って出してます?」
『うん? あぁうちのお店は2つの情報誌に毎月必ず広告出してるけど?』
「私、その情報誌に顔を半分だけ隠して載るのって出来ます?」
そう聞いてみたら、店長さんは喜んで、もちろん出来るぞ。そう言った。お店としても、沢山の子の写真を載せられる事は良い事だから、私が顔を出す事を物凄く喜んでくれている。
しかも、私なら確実に今より人気が出てお客さんが増えるってまで言ってくれた。
その後、トントン拍子に事は進んで、情報誌2誌の撮影を経て、私の顔を半分隠した写真が、来月号からお店の広告ページに載る事が決まった。
私は不安なんかよりも、どれだけお客さんが増えてくれるのか。そっちを楽しみにしていた。