零士と約束。
土曜日の夜、もう日付が変わって日曜日になっているけど、仕事終わりの私にとっては、土曜日のまま。
私はアルバイト先にヘルスから出て近くのファミレスに来ている。ヘルス嬢って仕事がキャバクラ嬢って仕事よりも、体力的にハードな事もあって、アルバイトが終わった後はいつもお腹がペコペコになっちゃう。ファミレスでチーズが上にタップリと掛かったハンバーグのセットを注文した後に、先に持ってきて貰ったグラス手に持ってドリンクバーでドリンクを取ってきた。
ドリンクバーからグラスに入れて持ってきたアイスティーを口に含みながら私は、カバンの中に入っている中身が入っていて少し厚みの出ている白い封筒と何も中身が入ってない茶色の封筒を取り出した。
茶色の封筒には私が予め書いておいた【貯金】と言う文字が書いてある。白い封筒の中身を1度全て取り出して、入っていたお金を数えた。
「36……37……38……38万円と千円札が3枚と後は小銭、うん今週は私頑張っちゃったな、やっぱり出来るオプション増やして正解だったなぁ」
私は店長さんのすすめで、出来るオプションを少し増やしてみた。ゴックンと言う名前のオプションで、最後に口で受け止めた物を飲み込むオプション。お客さんのウケがとっても良いって店長さんから聞いてたから。
そんな事を思いながら、白い封筒から取り出した千円札数枚と小銭を自分の財布の中に入れた。
次に、1万円38枚の中から18枚を茶色の封筒の中に入れる。
これは明後日の月曜日に銀行に預けるお金。
前の時のように、あればあるだけ使っちゃうなんて事にならないようにって、私がヘルス嬢になってから新たに始めた事。
この貯金から、欲しいブランド物を買ったり、服を買ったりする。
そして、手元に残った20枚の1万円札を元々入っていた白い封筒に入れ直した。白い封筒、茶色の封筒をカバンの中にしまった時に、タイミング良く頼んでいたハンバーグのセットがやって来た。
私は、ハンバーグを食べながらこの後に行く場所の事に思いを馳せた。白い封筒に入れた20万円分が週に1度、自分のご褒美として、大好きな零士に会いに行く為に使えるお金。
【シャンパンを1~2本は頼めるなぁ】
【ヘルプに着いたホスト達にもお酒を飲ませてあげられるなぁ】
【零士、喜んでくれるかな?】
楽しそうな少し先に待つ未来の姿を想像する。
そんな想像をしながらハンバーグを食べていた時に、私のスマホがメールの着信を報せた。
スマホをカバンから取り出してメールの内容を確認すると、零士からのメールで。
【今日は俺のお客さんは来てない。うらら来るんだろ? 来たらずっと側に居てやれるな】
そんなメールの内容だった。私はそのメールを見て自然と顔が綻んでくる。だって、零士が担当している他のお客さんが居ないって事は、私がお店に居る間はずっと零士が私の隣に座っててくれる。って事を意味してるんだから。
【もちろん遊びに行くよ~今はご飯食べてるから後でね】
そう返事を送り私は、さっきまでより急いでハンバーグを食べ始めた。早く零士に会いたい。万が一他のお客さんが来て私の隣に零士が座っててくれる時間を減らさない為にも急いでお店に行かなきゃね。
急いでご飯を食べた私は、大通りに出てから停まっていたタクシーに乗り込んだ。零士の働くお店の近くの交差点の名前をタクシーの運転手さんに告げる。
キャバクラ時代では、歩いてお店まで行ってたけどヘルス嬢になってからは、ほとんどタクシーを利用するようになってた。
だって、貰えるお金の金額が全然違うから、タクシー代なんて微々たる物に変わっていたから。
目的地に着いたタクシーから降りて、零士の働くお店に向かう。
近くまで来たら、お店の前にいつも居る若手のホストの人が私に気が付いた。いらっしゃいうららさん。なんて言葉を受けながらお店の中に入ると直ぐにテーブル席の1つに案内された。
その後は、直ぐに私がボトルキープしていたブランデーのボトルと氷なんかがテーブルに用意されて、持ってきてくれたホストからオシボリを渡される。
キャバクラとホストこう言うところは一緒なんだなぁといつも、オシボリを渡される時に思い出して、少しクスリとしてしまう。
間もなく零士が笑顔を浮かべながら、私の隣に座った。
今週の仕事はどうだった? 嫌な事とか無かったか? 私の事を気遣ってくれたり、何気ない話をして零士と一緒に居られる時間を楽しむ。テーブル越しに座るヘルプのホストも、一緒になって私の事を全力で楽しませてくれるから、私はお礼の変わりに、ヘルプのホストに言ってあげた。
「今日もヘルプ頑張ってるね、早くお客さん見付かるといいね、私が知り合いとか連れて来れたらいいんだけどごめんね、変わりにシャンパンを飲ませてあげるね」
そう言うと、ヘルプのホストは物凄く喜んでくれる。
今では私が1~2本のシャンパンを頼んでも、零士も怒らずに、喜んでくれるようになってた。
そして……楽しい時間は過ぎるのもやっぱり早く、お店はそろそろ閉店の時間を迎える。
閉店の時間が近付くと必ず、ホストの内の誰か。しかも人気の高そうなホストの内の誰かが、カラオケを1曲だけ歌う。
私は前から少し気になっていた事もあって、今日は隣に座る零士に聞いてみた。
『あ~ラストソングの事か、そっかうららに教えた事無かったかもな、あれはお店の閉店時間に合わせて、その日に1番の売り上げを上げたホストだけに与えられる特典ってやつだな』
私にそう教えてくれた零士は、ラストソングを歌ってるホストの姿をずっと見ていた。
「零士もラストソングを歌ってみたい?」
私がそう聞くと、零士は。
『そりゃぁ俺が今日は1番のホストだ! って証明だからな、1回ぐらいは歌ってみたいよ』
「そっか……そうだよね、私も零士がアソコに立って歌ってる姿を見てみたいな、零士がラストソングを歌う為には、どのぐらいの売り上げが必要なの?」
『そうだなぁ……週末なんかは高くなっちゃうけど、平日なら30万ぐらいの売り上げでも歌えるだろうな』
30万円か~うん、私でも1回週末に零士のお店に来るのを我満したら、全然払えちゃうな。もっと何百万円とか想像してたよ。
「零士、来週の週末に私、お店に遊びに来なくても平気?」
『うん? そりゃぁ来てくれる方が嬉しいけど、何か用事でもあるなら、そっち優先しろよ』
相変わらず私の事を気遣ってくれる零士の事を嬉しく感じながら、私は零士に言った。
「来週、お店に来るのを我満して、その次の週の平日に遊びに来るね、その時に来なかった週末の分も使って、零士にラストソングを歌わせてあげるよ」
私がそう零士に告げると、零士は今日1番の笑顔を見せて、私の頭を撫でてくれながら、ありがとう。そう言ってくれた。
いよいよ、速度規制がやばそうなので明日は更新が出来なくなりそうです。ごめんなさい。