やれそう……ううん!やれる!
零士と店長さんと、一緒に私が働く事になるヘルスのお店に行き、そのまま直ぐにでも働けるようにと店長さんの計らいで、講習を受けた。
お客さんの体を洗ってあげたり、作法があったりと少し覚えなきゃいけない事もあったけど、お客さんに行うサービスについては、店長さんから合格点を貰えた。
講習の終わりに店長さんと、少しだけ話をして、私が受けられる待遇や働く時間なんかも正式に決めた。
私は、週に5日の火曜日から土曜日にお店に出る事になった。
時間は大学が終わってから少しだけ余裕を持たせて、18時から閉店の0時までの6時間働く事にした。
この時間は、私が働く事になったヘルスには【送り】と言うシステムがあって、公共交通機関が無くなって帰れなくなる女の子達の為に、お店の男性従業員が女の子達の部屋がある方向ごとに数人をまとめて送ってくれる。と言う制度があったから、私は閉店まで働く事にした。
お給料もキャバクラとは違って、お店に待機している時間の時給は発生しない。最初に聞いた時には、それって稼げないじゃん! って思ったけど、出来高制で最低必ず5人のお客さんを着けてくれると約束してくれた。そしてキャッシュバックの率が70%なのも教えてくれた。
1番短いコースの30分で料金が1万円。それの70%だから7,000円。最低5人のお客さんを回して貰ったら35,000円。
もちろん、お客さんが料金の高いコースを選んだら私が貰える金額も増えて行く。
店長さんは、60分のコースを選ぶお客さんが1番多いと言っていた。60分コースで料金が18,000円。それの70%だから……12,600円。5人のお客さんを相手にしたら……キャバクラなんかより物凄くお金が稼げる。これに指名料とかも付くって言ってたし。
アフターでお客さん相手にサービスして本指名を貰ってたキャバクラがバカらしくなっちゃう金額だよ。
これから、直ぐにでも零士に立て替えて貰ったお金も返せるし、零士のお店にも遊びに行ける。しかも、ブランド物なんかも沢山買えそう。
良いアルバイトを見付けてくれた。ありがとう零士。
そして、その日は働かずに帰る事になったが、帰り際に店長さんから。
『うららちゃん、これ今日の講習で、うららちゃんが稼いだお金ね』
そう言って、120分コース分の70%のお金を貰った。
本当に講習で仕事を教わった側なのに、お給料が貰えるんだ。すごい。
私は笑顔で店長やお店に居た男性従業員の人達。これから同じお店で働く事になる他のキャストの女の子達に向けて。
「明日から、よろしくお願いします、色々と教えてくれると助かります、何か間違ってたら遠慮無く言って下さい」
そう挨拶をしてから、店を後にした。
私だってバカじゃ無いんだから、キャバクラの時みたいに、知らなかった事をやっちゃって、他のキャストから顰蹙を買うような事を繰り返したく無い。それにこのお店は、零士に紹介して貰ったんだから、また変な事をしちゃったら、零士に恥をかかせる事になっちゃうもんね。
お店を出たところで、零士に電話を掛けた。
明日からお店に出る事。講習を受けた事。頑張れる仕事だった事。
直ぐにお金も返せそうな事。これからも零士のお店に遊びに行くって事。色んな事を話した。
零士は、電話の向こうで嬉しそうに、そうか。そうか。頑張れよ。嫌な事あったら何時でも俺に会いに来るんだぞ。そう言って励ましてくれた。
そして、最後に。
『一応はまだ何も言われて無いけど、ヘルスで頑張るって決めたのなら、キャバクラには辞めるって伝えておけよ』
そう言われた。確かに、勝手にヘルスなんかで働き出したら、向こうも嫌な気分になっちゃうかもね。やっぱり、ケジメはちゃんと付けないと。
私は零士との電話を切った後直ぐに、今までアルバイトをしていたキャバクラへと電話を掛けた。
『お電話ありがとうございます……』
電話に出た人に、うららです堀田さん居ますか? そう訊ねて電話を変わって貰った。
堀田さんに、お店を辞める事を伝えたら、堀田さんは少しだけ慌てたような声で、話をしてから。とか言ってたけど、私はもうヘルスで働く事に決めた。それに、私が悪かったのかも知れないけど、あんな言い方をした堀田さんと話す事はもう無いって思ったから。
「ごめんなさい、会う気は無いです、とにかくお店は辞めます、今までお世話になりました」
それだけを言って電話を切った。