今日から私は【風俗嬢】
今日は朝起きた時からどこか落ち着がなかった。
大学に行ってもそれは続いていて、講義の内容もよく覚えていない。
私は大学が終わったその足で、自分の部屋には帰らずに、零士と待ち合わせをした繁華街の一角にあるファミレスへと向かっている。今日はこれから零士の言っていた、風俗店の人と零士と3人で話をする事になっている。
最初は私だけで会う予定だったのだけど、1人でなんてとても会えそうに無かったから零士に一緒に付いてきて貰うようにと、また零士に甘えてしまった。それでも零士は、怒る事も嫌がる事も無く、2つ返事で、付いていってやる。と言ってくれた。
私の為にこんなにも優しくしてくれる零士に、これ以上の迷惑を掛けない為にも、何が何でも今回の話を物にしなくっちゃいけない。
他の男の人を相手に、性的なサービスをしている。と言う事を零士が知る。と言う事に始めは抵抗も感じたけれど、零士は【それが仕事なんだから】と割り切って、そんな仕事をしていても、私は私だと言ってくれた。その言葉に零士に嫌われる事が無くなった私は、私の為にも零士の為にも、頑張ろうと思っていた。
約束をしていたファミレスに到着して中に入ろうとしたら、入り口の所に零士が立っていて私が来るのを待っていてくれていた。
『おはよううらら、ちゃんと大学行ってきたか?』
「おはよう零士……うん大学の帰りそのまま来た、今日は付き合わせてごめんね」
私が零士にそう挨拶を返すと、零士は笑顔で私の頭の上に手を置いて優しく撫でてくれた。
ファミレスの中には既に、私がこれから働く事になるお店の店長さんが来ているらしく、零士と2人で店の中へと入って行った。
店長さんの見た目は、本当に普通な感じの人で、そう言うお店の店長をしている。なんて雰囲気は微塵も無かった。
「うららと言います、今日はよろしくお願いします」
『うららちゃんっていうんだね、今日はよろしくね、緊張しなくても大丈夫だから気楽にね』
そう返してくれて、気を効かせてくれてドリンクバーを私の分も頼んでくれた。
『細かい事情は零士君の方から聞いてる、それで率直に聞くけど、うららちゃんは、この仕事を頑張れそうかな?』
店長の言葉に、私は意を決して答えた。
「はい、大丈夫です、頑張ります」
そう言った私に向けて、店長さんは手を差し出して来た。
私はその手を反射的に握り返して、店長さんと握手を交わした。
ここに私と言う【風俗嬢】が誕生した……
その後、お店のマニュアル等を見ながら色んな話を聞いた。
確かにキャバクラなんかよりも、遥かに沢山のお金を稼げる。
これなら、直ぐにでも零士に立て替えて貰ったお金も払えて、そして零士が言っていた、零士の働くホストクラブでも普通のお客さんとして遊んだりも出来るだろう。それだけじゃなく、更に私の大好きなブランド物なんかもキャバクラ時代より買えそうだと思った。
『どうかな? 最初はこのぐらいだけど、お客さんがうららちゃんの事を指名したり、気に入って長いコースなんかを選んでくれたりしたら、もっと沢山のお給料を貰えるようになるからね』
私は、もうこの時に、性的なサービスをする風俗嬢として働く事への嫌悪感なんか微塵も感じていなかった。早くお店に出て、早くお金を沢山稼ぎたい。そう思った。
「いつから、働けますか?」
『いつからでも、何時からでも大丈夫だけど、うららちゃん大学もあるから、週にどのぐらい働けるかな?』
「土曜日とかお客さんの多い日を入れて、週に4日から5日は、時間も大学終わってから閉店まで働きたいです」
その後も色んな話をした後に、これから1度お店の雰囲気を見てみよう。と言う事になって、私と店長さん、そして零士の3人でお店に実際に行ってみる事になった。
お店は、私の働いていたキャバクラと同じ繁華街の中にあったけど、少し距離が離れていた。
お店の中に入り、事務所で話を続けていた時に、店長さんからこう言われた。
『うららちゃんは、この後に何か用事があるかな? 無いならこの仕事のやり方を覚える為に、実際に私をお客さんに見立てて、練習する【講習】を受けてみない? もちろん、練習だけどお給料は発生するからね』
私は、零士の顔をチラリと見ると、零士も頑張れって応援してくれているような顔をしている。そう感じた。
「はい、用事無いので早くお店に出られるように、練習もしたいです」
そう答えた。
そして、その場で零士は、これからホストクラブでの仕事がある事から、ここで別れて私は店長さんの言うままに、ヘルス嬢として働く為に必要な事を学ぶ、講習を受ける事になった。
零士は、別れ際に私に頑張れよ。と声を掛けてくれた。
【零士! 私頑張るからね】