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懐かしいアイツに出会った。

 「あ~もうムシャクシャするぅ~明日は、ストレス発散の為に買い物にでも行こっと」


 私は、お店で堀田マネージャーから、小言を言われて機嫌の悪いままで、アルバイト先のお店から最寄りの地下鉄の駅まで歩いていた。


 『あれ? (にのまえ)(にのまえ)じゃね?』


 地下鉄の駅へと降りる階段の手前直前で、誰かが私の名前を呼んでいる。最初はお客さんかな? と思ったけどよく考えると私は、お客さんには名字までは教えて無い。


 誰がどこから? と周りをキョロキョロと見回すと、階段横のファストフードのお店の方から、1人の男の人が歩いて私の方へと向かって来る。

その人は、黒色のスーツを着て、髪は金髪に近い茶色に染め上げていた。

近付いてくる人の顔をよく見てみるが、何処かで会った事があるような無いような……


 『あ~やっぱりそうだ、一 麗(にのまえ うらら)だ、久し振りじゃんこんなとこで何してんの?』


 この私に声を掛けて来た人は、確実に私の事を知っているようだ。私は誰だろ? と頑張って思い出していたが、こんな見た目が派手なイケメンに知り合いは居ないはず。


 「ごめんなさい、覚えて無くて何処かで会った事あります?」


 私がその人に聞いてみると、その人は私が覚えていない事にショックを受けた顔を一瞬だけ見せると、何か勝手に納得したのか笑顔を見せて私に教えてくれた。


 『あ~見た目もかなり変わってるから、覚えて無いかもな木下だよ、同じ中学で3年間偶然にも同じクラスになり続けた【木下 将士(きのした まさし)だよ』


 私は彼の正体に心当たりがある。彼が言った通り、中学校の時に3年間同じクラスになり続け、隣同士の席になった事すらある、野球部で部活を頑張っていた。同級生に。


 「え? 将士なの? 見た目が違い過ぎて全然分からなかったよ、頭も坊主から長髪の茶髪になってるし」


 久し振りの同級生との再会に私は、自分がイライラしていた事すら、すっかりと忘れて話をしていた。

その後、道端で話すのも恥ずかしいから、地下鉄入り口の階段横にある、ドーナツを売るファストフードのお店に2人で入り、懐かしい話に花を咲かせていた。


 「それで、その格好どうしちゃったの?」


 私は1番の疑問になってる事を聞くと将士は。


 『あ~俺今さホストしてて、その関係で』

 

 そう言って私に微笑んできた。ホストって確か……キャバクラの男性版みたいな仕事だよね? それじゃ性別違うだけで同じ仕事って事かな?


 『そんな事より、一の方こそどうしたん? こんな時間にこんな繁華街で』


 そう聞かれた私は、私もキャバクラでアルバイトをしていて、その帰りに将士に声を掛けられた事を話した。


 その後も、2人でドーナツを食べながら色んな話をした。

将士はとても聞き上手で、いつの間にか彼のペースに巻き込まれた私は、今日お店であった事なんかの愚痴も彼に話していた。


 『あ~それはムカ付くよな、一生懸命にお店に客呼ぼうとしてるのに、そんな事言われたらな』


 将士は、同じような仕事をしているだけに、私のイライラにも理解を示してくれる。

私はそんな将士に甘えてしまって、ずっと愚痴を聞いて貰っていた。

そして、気が付いた時には既に終電が過ぎた後だった。


 「あっ! 話に夢中になりすぎて終電無くなっちゃってる……うぅ……ファミレスで時間潰しかぁ……」


 私が将士相手にずっと話を続けていたせいで。なので、目の前の彼に文句を言う訳にもいかない。


 『ファミレスで始発の時間まで、時間潰す気か? それなら、俺の働いてる店にでも来て、楽しく騒いで鬱憤晴らしでもしたらどうだ? うちの店、初めてのお客さんは、5,000円で時間無制限で飲み放題だから、俺が最初の5,000円出してやるから、行こうぜ』


 お金を出してくれるの? それなら興味もあるし1回ぐらいは行ってみたい。


 そして、私は将士に連れられて将士の働くホストクラブへと向かった。

向かっている途中で、将士から。


 『あっそうそう、その将士っての店で言わないでくれよな、店では【結城 零士(ゆうき れいじ)って名前を使ってるから』


 私は将士の源氏名を聞いた途端に、声を出して笑ってしまった。


 「何そのホストみたいな名前……ウケる~」


 『ホストみたいじゃ無くてホストなの』


 将士もそう言って私と一緒になって笑っていた。


 将士。ううん……零士の働いてるホストクラブに着いた。

見た目は私が働いてるキャバクラと大した違いは無かった。

お店の入り口を抜けて直ぐの所に、私のお店にもあるランキング順に並んだ写真パネルが貼り出されている。

零士が私の手を取り、そのパネルの1つの前に立たせると、指を写真パネルに指した。

そこには【13位 結城 零士】と書かれたプレートが貼られていた。


 零士は、お店の入り口横のパネルに写真が載せられるぐらい頑張ってるんだ。


 その後、零士の案内で席に座ると零士が飲み放題の飲み物なんかを持って私の横に座った。

ここでは私の方がお客さんで零士が接客。何時もと全く逆な立場と感覚がすごく新鮮たなぁって思った。


 そして、私は零士やテーブル越しに座る他のホストなんかに接客されて始発までの時間を過ごした。


 物凄く楽しかった。みんながチヤホヤしてくれるし、私に文句なんて絶対に言わない。零士もずっと私に優しくしてくれた。

コイツこんなに格好良くていい男だったんだ……


 始発の時間になり私は零士に、そろそろ帰ると告げて、自分のバッグからお金を取り出そうとした時に。


 『今日は俺のオゴリって最初に言ったろ?』


 零士にそう言われた。でもさすがに悪いかな? と思ったから、零士に聞いてみた。


 「次に零士に会いに来たとしたら、いくらぐらい掛かるの?」


 『そうだな、うちの店時間制もやってるから、1時間で5,000円だな、後は指名料が俺の場合は1万円かかる、あっ! キャバクラと違って指名料は最初の5,000円にプラスされるだけな』


 私はホストクラブってもっと高いのかと思ってたから、その安さにビックリしちゃった。

そのぐらいの金額なら私でも遊びに来れそう。今日は零士にオゴって貰ったし、そのお礼と楽しい時間を過ごさせてくれたお礼に、もう1回は絶対に来なきゃ。


 そして、私は零士に地下鉄の駅の入り口に続く階段まで見送って貰って、そこでスマホの連絡先を交換してから、別れた。

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