高い時給に釣られちゃった。
「えっ? すご~い! 何このバイト……時給5,000円って何か変な事でもするのかな?」
私は晴れて大学生になった事を記念して、何かアルバイトを始めようと、ネットの求人情報を見てる。
ずっとアルバイトって言うものを、やってみたかったけど、高校の時は校則で禁止されてた。
そんな私も今は大学生。念願だった1人暮らしも始めたし、アルバイトをして、仕送りしてくれてるお父さんやお母さんの負担を減らしてあげたい。
そんな思いでネットの求人情報を見てる時に見つけたのが、これ。
【職種】フロアレディー
【年齢】18歳~
【時間】週1日1時間からOK
【給与】時給2,000円~5,000円
なんかすごい時給のアルバイト情報を見付けてしまった私。
すぐにスマホの画面を切り替えて、計算器のアプリを立ち上げた。
「えっと……週にそうだなぁ、1日置きに働いて3日でしょ? 5時間ぐらい働けたとしたら……5,000円×5時間で1日25,000円!? 週に3日働いたら75,000円にもなるじゃん! 何このすごいバイト? 何かエッチな事とかさせられちゃうのかな?」
私は、好奇心と、私でも働けそうなら。と言う思いも乗せて、もう1度求人サイトの情報を開いた。
そして別にプラウザを出して、求人情報に書かれてたお店の名前で検索をしてみた。
「キャバクラ? キャバクラって何だろ?」
私は、キャバクラと言う言葉の意味を知らなかった為に、更にもう1つプラウザを出して【キャバクラって何?】で検索をしてみた。
いくつかリンク先が出てきた中で、私は普段からお世話になっている、ネット百科事典を開いて、そこに書かれている内容をつぶさに余す事無く読んでいく。
「なるほど~、要するにお酒飲みに来たお客さんの横に座って、お話ししたり、お酒作ったりするのか~、後エッチな事とか無いんだ」
私は高い時給に釣られて、このキャバクラと言うところでアルバイトをしてみたいと言う思いを強くしていった。
大学生になったら、友達と色んなところに遊びに行ったりもするし、制服じゃ無いから服も買わなくちゃ、いつも同じ服着てる。なんて言われたく無い。
家賃と学費を抜かして月に5万円。遊びにも行けなさそうだし、服なんかも頑張って節約しないと買えなさそう。
だけど、うちは本当に普通のサラリーマンの家。きっとこの5万円だって、ギリギリの金額なんだろうなぁ。
そんな思いが、どんどんと沸き上がってきた私は、思いきって求人情報に書いてある、求人担当の人の番号に電話をしてみる事にした。
「大丈夫、大丈夫、面接だけして無理そうなら断ればいいんだから」
ちゃんと用心の為に非通知にして電話を掛けてみた。
5回ぐらいコール音が鳴った後に、相手が電話に出た。
『はい、もしもし、堀田ですけど』
電話に出たのは、優しそうな声をした男の人。
良かった、怖い声の人とかだったら、ビックリして何も言わずに切っちゃうところだった。
「あっすみません……私、アルバイトの求人を見て電話したんですけど?」
『あっそうなんですね、お電話ありがとうございます、アルバイトの面接希望でよろしかったですか?』
「はい……」
『それでは、すみませんが今から、少しだけ質問させていただいてもよろしいですか?』
実際に会って面接とか普通はするんじゃないのかな? そう思ったけど、こう言うのがキャバクラだと普通なんだろうか?
私が大丈夫です。と答えたら、本当に少しだけ質問された。
『現在の年齢はいくつでしょうか?』
「18歳です」
『そうですか、えっと高校生では無いですよね?』
「はい、今年の春に卒業しました」
質問は、たったこれだけだった。
後は、私の都合の良い日、都合の良い時間、都合の良い場所で実際に会って面接をしたいと言われた。
驚いたのが、時間は24時間いつでもいいって言われた事と、場所も県内ならどこでもいいって言われた事。
私は、明日の学校が終わってから会える時間と、最寄りの地下鉄の駅の近くにあった、コーヒーショップを待ち合わせ場所にと伝えた。
時間は、全然問題は無いって言われたけど、場所はゆっくりと話が出来ないから、出来たらファストフードのお店かファミレスにして欲しいって言われた。だから、コーヒーショップの反対側にある、ハンバーガーショップを待ち合わせ場所に指定した。
『それでは、明日の○○時に、○○駅前のハンバーガーショップで、お待ちしておりますね、到着されたら、この番号に電話をしてきて下さい』
その後、お互いに簡単な挨拶をして、電話を切った。
「人生で初めてのアルバイトの申し込みをしちゃった、あっでも、向こうの人、履歴書とかは要らないって言ってたなぁ……普通は書いて持っていく物だと思ってたけど、代わりに免許証や保険証や学生証なんかの身分証を必ず持ってきてって言ってたなぁ、なんかスマホ借りる時みたい」
その日は、初めての体験でドキドキして、中々寝られなかった。