初めての異世界
身体能力を生かし、ほんの数秒で実験室に到着した。
その数秒間で高エネルギーが充満しているなら、エネルギーを他次元に移動させればいい。
怜はその結論に達していた。
幸いエネルギーによって生成された歪みによって他次元へのエネルギー移送ルートは確保されていた。
問題はどうやってエネルギーを移動させるかだった。
「これでいいか」
怜は実験室にあるものだけでエネルギー移送を可能とする器具を作り上げてしまった。
常人では決して真似することはできない。
これがSランクたる所以である。
実験室から人は全員退避していることを確認して怜はエネルギー移送を開始した。
「うわっ…凄いエネルギー量だ…え?」
その瞬間怜の視界が失われ…意識も失った。
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「うぅ…頭がいたい………は?」
怜の目の前には見たことのない森が広がっていた。怜はすぐに異変に気がついた。
(エネルギー移送に失敗したのか?いや、失敗していたらこんなに穏やかなはずがない…どういうことだ…おかしい辺りにビルもなにもない…)
怜は混乱していた。一瞬で物事を理解で着ないことなど初めてだった。
「デバイスで確認してみるか…」
『デバイスはネットワークに接続されていません』
「おいおいおい、無能か…しょうがない人に会うまで歩いてみるか」
森を進んで行くと、見たことのない植物ばかりでますます混乱した。
「どうなってるんだ…」
その時、人の声が聞こえた。
「お、ちょうどいい。ここがどこか教えてもらおう」
怜はそう思って声のする方へ向かった。
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そこで怜が見たのは水浴びをする少女達だった。
「高校楽しみですねー!お友達たくさん作りたいです!マリーは?」
「エルほど楽しみにはしてないけど、強い魔法師になりたいよ」
(やばい…これ見つかったらシャレにならないやつじゃないか…?)
怜は気配を悟られないよう必死に木の陰に隠れていた。
「誰かいる」
マリーと呼ばれた少女の声が一気にトーンダウンした。
しばらく何か唱えた後
「そこにいるのはわかってるよ。出てきて」
(無理か…)
「ごめんなさい。覗くつもりはなかったんです。」
怜は申し訳なさそうな顔をしながら、少女の前に現れた。
「覗くつもりがないなら隠れないでしょ。言い訳なら後で聞く。エル、この犯罪者に拘束魔法をかけて」
(魔法?聞き間違いか?)
「は、はい!」
すると怜の周りに光のリングが現れ拘束した。
(これはなんだ…初めてみる素材だ、というかどこから現れたんだ?考えても仕方がないからそれは後回しだ。 そんなに強い素材ではないし壊して逃げるか?)
などと考えていると
「街まで一緒に来てもらうよ」
と宣告された。
街まで連れて行ってくれるなら悪くない。
「わかった」
そう言うと街へ連行されていった。