第6話 無差別戦 推薦
ある日の昼の事であった。
王の間は食堂の横にあるのだが、その食堂から出た時、リュウと兵士5人が話をしていた。
盗み聞きするつもりなどなかったが、どうしてもその風景が目に付き、気になってしまったので俺は影でひっそりと聞くことにする。
しかし、距離が少し離れていたからか、100%の音声が耳に入ってきた訳ではなかった。それに、話の途中だったようだ。
「やはり、リュウ様もそう思われていましたか」
「もちろん、リリヤ君は嫌かもしれないけどね」
……俺の事!?
尚更気になってくるじゃねえか…!
「私はあの人には……………無いと思いますが」
「まあ……肝心の魔法があれだからね…」
……凄く嫌な予感がしてきた。
これ、俺が聞いちゃあかん奴じゃないのかな…
「しかし、割り切ってしまわないと時間が来てしまいますから」
「そうしよう。彼には………おう」
………クビ、切られるのか。
俺、頑張ってきたけど、城壊すわ、魔法は全然出来ないから職務が出来てないことになるわ………よくよく考えたらいいこと一つもないじゃねえか。
凄く、悔しかった。
さようなら……俺の魔法使い人生…次は日本で魔法使いになろう………
やはり俺はリュウに呼び出された。
兵士2人も聞き入るような形で隣にいる。
「リリヤ君…………君には……」
く、くるっ……………!!!!
「無差別戦に出てほしいんだ」
………………へ?
「は、はい…?」
「黒の国で行われる、無差別戦というものに出てほしいんだ」
えっクビ切られる話じゃなかったの?
なんなの?無差別戦って……?
「あ、あの……さっき昼に話していた俺をクビにするような話は……?」
「クビ……?何言ってるんだ、昼間もこの話をしていたんだよ、『無差別戦に出させてあげたらどうでしょうか』ってね。というか、昼間の話…聞いていたのか」
つい口が滑ってしまっていた。
焦燥感のせいだったのかな……
「その、無差別戦ってなんなんだ…?」
「無差別と言う名の通り、階級関係無しに行われるトーナメント方式の……この国最強を決める大会だよ」
なんか楽しそうじゃねえか……
「そんな強豪が集まりそうな大会に、俺が??」
「うん。元々各派閥1024人出せと言われているんだ。でも、うちの国は戦闘職種の層が薄くてね……こうやって若手も出さないと、人数が足りないんだ」
……要は人数合わせ、ってことか。
「でも、僕は2の選手は2人しか考えていない。そのうちの1人が………君ってことだ。」
…えっ?
俺そんな選りすぐられてるの?
「俺……魔法、使えないんだぞ!?落ちこぼれなんだぞ!?何故!?」
「リセとの戦いを見た兵士たちが物凄く君を推していてね」
…腕か。
まあ、それしかないよな…
それに、あれは戦いじゃなくて喧嘩みたいなものじゃないか?
「無論僕も、君のポテンシャルと格闘センスは知っているから、彼らの意見に賛同したんだ、で、どうだい?参加してみるかい?」
…こんなの、答えは一つしかねえじゃねえか。
「もちろんだ!!!出る!!!!」
「そう来なくちゃ、ね。大会は1週間後だから、それまでには魔法を、ね?」
うっ。そう来るか……
まあ、頑張るしかないよな。
迎えた大会当日。
え?魔法が使えるようになったかって?
そんなもん聞いてんじゃねえ!!!!!!
いつもと変わんねえわボケ!!!!!
大会会場は、街中の訓練場であった。
元々広いなとは思っていたが、まさかここ、ドーム型になるとは……本当に野球ドームのような作りだ。
しかし、色は砂漠のような色一色で、年季の入った作りのようなものになっている。
地面は普通の土だが、少し柔らかそうな、そんな雰囲気もあった。
派閥クラブ集合場と大きく書かれている紙が貼られている、ドームの端に向かう。
クラブってこんなに人がいたのか…と思えるほど、密集しておりその数も多かった。
次第にスペードの方も人が集まりきり、ドームにつけられている大きなスピーカーから声が聞こえてくる。
「今年の夏も始まりました〜無差別戦!!!今回は一体誰が優勝するのでしょうか!」
その一声で、場は静寂となり、スピーカーの声がより一層聞こえるようになる。
「それでは前回優勝者、優勝カップ返還をお願いします!!!」
そう言うと、ドームのど真ん中にいる司会者に向かって、1人の少女が歩いていた。
……その少女は……………
リセかよ!!!!!!!
あいつこんな男ばっかの戦闘大会に出て優勝してんの!?!?怖っ!!!!
「それでは〜〜、半年前の前回優勝者さん、コメントをお願いしますっ!!」
「あたしに当たった奴は皆死刑よ!!!!」
ウオオオオオオ!!!!と盛り上がる男共。
何がウオオオオオオ、なんだ……?ドMなのか?こいつら。
それに、リセが言うと例え冗談であっても冗談に聞こえない。
「盛り上がっているところ失礼しまぁす。今大会初参加という方もいるかもしれないので、一応ルール説明。………戦え!!!相手を倒せ!!!以上だ!!!!!」
説明になってません。簡略化しすぎです。
司会者もそうだけどジャガイモさん仕事してください。
更に会場のボルテージが上がる。
もはやライブ会場状態だ。
「……お待たせいたしまぁしたぁ。今回ノォォォォオ、トーーーーーナメントォ発表しまぁぁぁす!!!!」
歓声が鳴り止まない。
そして人びとはスペード集合場にある掲示板に数枚、クラブ集合場にある掲示板に数枚紙が張り出された。
人が一気に密集する中、俺はなんとか前の方に居座ることができる。しかし、重い……人がのっかかってきている。
どれ、どれ、どれ………俺の初戦相手は………?
13 リリヤ2(魔法使い クラブ)
14 剛力羅A(格闘家 スペード)
名前の右に書いてあるのが階級。そして職種、派閥。
俺、初っ端から向こうのエースと当たんの……しかも名前からしてゴリッゴリの格闘家っぽさそうじゃねえか…………
勝てっかな………こんな人間の知能が無さそうな名前している人間に…
次回、初戦始まるぜ!