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ハートのエースがやってきた!  作者: 3ri
1章 発展途上人間リリヤ
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第2.5話 red side……もう1人のリリヤ 〜ハートのエース誕生〜

 ここは、どこ?

 私は……飛行機でいつの間にか寝てしまって………そこから何があったか覚えていない。

 気付いたら、病院にいるみたい…


「やっと目が覚めたかい?」


 白衣を着た女の人が私に話しかけてくる。

 年齢は30弱くらいかな。でも顔立ちは整っていて、美しい。身長は……私が横たわっているからよくわからない。


「あ、あの…ここは……」

「心配しないで。普通の病院だから」


 やっぱり病院なんだ……私、病気になっちゃったのかな……

 私の心に不安が少しずつ生まれてくる。


「あなた……何も覚えていないの?」

「はい……飛行機の中で寝てしまって、今の今まで記憶がありません……」


「ここは、どこなんですか?」


 私は上半身を起こし、女の人に聞く。

 しかし、女の人は答えてくれない。


「わからないのですか?」


 いや、そんなことはない……ここで働いているんだもの。


「いや…」

「なら、教えてほしいです……お願いします…」


 りっくんが居たら、もう少し強い言い方してくれたのかな……1人になってりっくんに頼り過ぎな面が出ていると、わかってきちゃったな……


「……くに」

「もう少し、大きな声で……」

「赤の国、よ」


 ……この前読んでいたスクープ雑誌に載っていたところだ…

 世界に隠れている国?というコラムで載っていたのをよく覚えている。この国には多くの日本人がいて、色々物騒なことがあるけど、赤の国は美しい所だと書いてあったかな…。黒の国というのもあるみたいだけど…


「あなたの乗っていた飛行機はハイジャックされたの。でも、1人の高校生と機長がハイジャック要員を上手く眠らせて、機長のおかげもあって……誰1人と怪我、死亡者は出なかったの」


 りっくん、なのかな……

 勇敢で喧嘩っ早いし、そういうことになったら真っ先に首を突っ込みそうだし………


「でも皆、眠ったら気絶していたみたい。いくらゆすっても起きないから乗客全員が病院に搬送されたの。女性は赤の国へ、男性は黒の国へと……」


 りっくんは…黒の国にいるんだ。

 会いたい……不安だよ…


「…彼氏が飛行機にいたんです。どうか合わせてくれませんか…?」

「ダメだね……階級を持たない人間は王の許可がない限り他国へは出れないから……」

「そ、そんな………」


 もう…会えないのかな……そんなの、嫌だよ…


「でも100%無理ってわけじゃないわ。あなたは王にお声がかかっているもの」

「えっ……?王様、に…?」


 私は展開が読めなくなってきた。

 この国の1番偉い人にお声がかかるなんて、何故いきなりそんなことに……


「あなた、動ける?」

「はい……どこも怪我してないみたいなので」


 ベッドから立ち上がり、看護師のような人についていく。

 病院の廊下を歩き、端っこについたところで、細い連絡通路のような道を歩いた。そして……


 抜け出すと、そこは広々とした城のような場所に到着した。


「じゃあ、私はここまで、王はとても美しいよ〜」


 と言い、連絡通路通路を逆戻りする看護師。


「あっ、ちょっ……」


 私が何もいう間も無く、去っていった。



 でも…ここ……


 昔話とかにあるような、大きなお城。

 ……凄く、綺麗………


「ようこそ、我ら派閥ハートの城へ!」


 城の兵のような人が話しかけてくる。

 女の兵士さん……かっこいいなぁ…


「王様から話は聞いています。さぁ!こちらへ!」

「え……ちょっとまっ……」


 スタスタと歩く女兵士に私は早足でついていった。


 広い道を歩き、階段を登り、もう一つの階段のところで、女兵士は足を止めた。


「王様はこの上です。失礼な言動、行動のないようお願い致します。」

「は、はい……」


 私は不安になりつつも、階段を一段一段、登っていった。




 20段ほどある階段を登りきる。また広い場所みたい……


「やぁお嬢ちゃん。あんたが新しくこの国へ来た子な?」

「へぇやぁっ!!!ど、どこから……っ!!」


 いきなり現れる女の人に私は奇声を出し驚いてしまう。


 その女の人は、踊り子のような、露出度の高い服を着て(付けて?)いた。身長はりっくんと同じくらいで、胸は……私と同じくらいかな。

 でも、胸元の守備範囲が小さい……大丈夫なのかなこの人……


「驚かせちゃった?ごめんねぇ」

「いきなり声かけられたら誰だってびっくりしますっ!!!」


 私は少しムキになって答えてしまう。


「まあまあ、そんな怒らないで〜。アタシはキングのレイカ。よろしくねん」

「お、王様……!?失礼しましたっ…!!」

「いや、王様なんていう硬いもんじゃないよ。それにまだあなたはこの国の何でもないから、敬語なんて使わなくて構わないよ」

「ま、まだ…?」

「まあ………あなたには並々ならぬセンスのようなものを感じてねぇ」

「……はい?」


 本当に、何も読めない……

 頭が破裂しそうな程予測不能な展開に、私はついていけない。


「まあまあ、そんな困った顔しないで。あなたには……はぁはぁ……この国で働いてもらいたいの」


 何でこの人、息を漏らしたんだろう…

 そして、働く?私、高校生だよ?


「あ、あの…働くって…」

「金出るよ。飯出るよ。家あるよ。休みあるよ。ホワイトだよ」

「やりますっ!!!わーたーしー、やりますっ!!」


 お金という誘惑に負けました。

 私はお金に目がないんです。


「でも、何の仕事をやるんですか…?」

「簡単だ…ああぁ……もう我慢ならぁんっ!!」


 レイカ様は私の胸元に飛び込んでくる。

 そして、腕で順番に、腰とお尻に手を当ててくる。


 な、何この人……怖い…


「…な、なにやってるんですか……?」

「身長148センチ、3サイズは89-65-82ね。これくらいぽっちゃりな子……久々に見るし素晴らしいわぁ〜〜〜〜〜」


 胸と腹、交互に顔をうずくめるレイカ様。


「アタシ、レズなの」

「ここに来ていきなり性癖暴露!?」


 驚くわけにはいかないし、なおさら怖く感じてきた。

 でも…………女の人同士って悪くないかも……っ


「女の子の肌ってさ〜、もちもちしててすべすべで最高なんだよ〜………………はっ!!アタシとしたことが!!!」


 正気に戻るレイカ様。


「ごめんねぇ。でも、3サイズわかっちゃったから、職種に応じて特注で服、作ってあげる」

「ほんとですか…!!と言いたいんですけど、一つ気になります……職種ってなんですか?」

「ああ〜。ごめんねぇ、大事なこと説明し忘れちゃってたねぇ。この国では、様々職種というものにつくことで『働く』ということになるのよ」

「その……職種はどんなものがあるんですか?」


 と言うと、レイカ様は背中に左手を伸ばし、巻物のようなものを取り出す。


 騎士

 格闘家

 魔法使い

 神官

 銃手

 ダンサー

 遊び人

 女優

 迷彩者

 天候士

 エスパー


 等、様々なものが書いてあった。

 って、魔法使い!?

 魔法使えるの!?!?


 と思った瞬間、ビュオオオオッ!!という音を立て冷気が私の顔を横切った。


「使えるのか疑問を感じていたようなので、出せることを証明しました」


 えっ。心が読めるのこのメイドのような人……本当に大丈夫…?

 レイカ様の付き人なのかな……


「あ、あと戦闘職種に就いて死んでも生き返るから安心してね。その代わり金は半分になるけど」

「ドラク◯だ!!!」


 もはや声に出て叫んでしまう。


「あはは、確かに言われてみればそれっぽいねぇ。んで、どうするの?」


 そう言われ、少し悩んでから、私は答えを告げる。


「神官…で、お願いします。人々の役に立てたりしてみたいし……それに、戦ってみたい気持ちもあります……っ」


「んじゃあ……」


 レイカ様がまた左手を背中に伸ばし、十字架の形をした石を掌に乗せていた。


「この国と黒の国の間に、聖奇石(せいきせき)と呼ばれる不思議な大きな石があるの。それと契約することによって……あなたは神官になれるわ」


「この石を持てば……契約されるのですか?」

「いや、違うわ…飲み込むことよ。嫌かい?」


「いいえ、私……やります!!!」


 いつもにはない力強い声を出し、私は十字架石を受け取る。


 そして………



 唾を飲み、覚悟を決めて…一気に飲み込んだ。


「あっ……!!」


 気付くのも束の間。私は水色の砂のような光の集まりに飲み込まれていた。



 そして、何事もなかったかのように、今さっき見ていた世界に戻った。


「おめでとう、晴れて神官になれたよ………って、あなたの名前を聞くのを忘れていたわ、名前教えて?」

「播磨理衣って言います…」


「じゃあ、あなたは今日から『リリヤ』ね」

「なんで勝手に名前決めるんですか!?」


 やっぱりこの国おかしい……でも、悪い名前じゃないかも……


「個人情報保護の為よ。この国………色々ワケありな人とかいるから。その人達が新しく生まれ変われるような国でもあるのよ」


 そうして私はリリヤとなった。

 ……と言っても初日だから新鮮すぎて慣れないんだけど、ね…


「あとは〜……これ、胸らへんにつけておいて」

「は、はい…」


 レイカ様が渡してきたのは、ハートマークをした、中にAと刻まれているバッジだった。


「この国には派閥と階級があるわ。派閥はハートとダイヤ。ここは派閥ハートだからバッジもハートマーク。そしてあなたの階級は……ジャックの一つ下、兵士長ポジションよ。普通よりも9個高いとこから始めてもらうわ」


「え……………えええええええ!?!?!?」


 いきなりの大躍進に驚きを隠せない。


「普通こういうのって1番下から始まるものなんじゃないんですかっ!?!?なんで私はそんな上から……!!!」


 階級のことはよくわからないが、かなり上にいることはわかっていた。


「かわいいから。あとセンスがありそう。以上ッ!!」


「そんなんでいいのぉぉぉぉぉおっ!?!?」


「明日から、アタシ達の部下とワンツーマン教育ねっ、アタシはダンサーだけど神官もやったことあるから、たまに見に行ったりするよん、頑張ってな!!」





 こうして、派閥ハートにリリヤという階級エースが誕生しましたと、さ…………


 りっくん、今頃何してるのかな………

次回、男リリヤ、姫様に会います。

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