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ハートのエースがやってきた!  作者: 3ri
1章 発展途上人間リリヤ
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第2話 学習

 おめでたと言うべきかゴタゴタと言うべきかわからないが、俺は魔法使いになってしまった。

 日本でいう30歳以上の童貞をあらわすものではなく、ちゃんと魔法を使える魔法使いだ。なんでこうなったかは1話をちゃんと見てくれ。


 今日から学習塾と訓練場というところで魔法使いとなる為に色々と行うらしい。


 …というわけで、その学習塾とやらに着いたわけだが…………


 デカいビルの真ん中にデカデカとした垂れ幕があり、『学習塾』とシンプルに書いてある。


 もうちょっとひねりを効かせることは出来なかったのか……?と甚だ疑問に思うが、とりあえず学習塾であるということはわかったので、中に入る。


 すると、ホテルのような受付の場所があった。


『必ず受付を済ませ、中にお入りください』


 という注意書きもあった。ってことは、あの受付みたいなところで何かかしらやらねえといけねえってことか。めんどくせえ。


 とりあえず、受付に向かってみる。


「いらっしゃいませーこんにちはーいらっしゃいませーこんにちはーいらっしゃいませーこんにちはー」

「ブックオ◯か!!!」


 この件、ジャガイモ小説には欠かせないのか……?

 全く、気に入ったもんだけ書きやがって…


 受付コーナーの近くに寄ると、受付人員が話しかけてきた。


「ナイスなツッコミありがとうございます。あなたはクラブの2の方ですね。お名前をお願い致します」

「しちじょ………いや、リリヤだ」


 まだ、慣れねえなぁ……

 話が続く度に慣れてくのかな。

 某親が豚になるジ◯リ映画のように、本名忘れたりしないよな?大丈夫だよな?


「リリヤ……リリヤ様……あっ、今日から新しく入る方ですね。職種は魔法使いということで……こちらをお持ち下さい」


 受付人員が取り出したのは、『魔法使いのススメ』という薄めの教科書サイズの本であった。


「こちら、教科書となっており再発行が効かないので、大切にお持ち下さい。」

「わ、わかりました……」


 学習というのはあっちの学校に近い……いやほぼ学校みたいなものなのかな……


「では、キングにポテンシャルを感じられたリリヤ様、頑張って魔法使いへの道を歩んで下さいね……魔法使い学科は4階です」

「てめえ俺のこと結構知ってたりしない!?大丈夫!?」


 少し不安になりつつも、4階に向かって行くのであった……









 4階にたどり着いた。

 学校というより、学習塾のような感じだな。机が沢山並んでおり、黒板にチョーク、黒板消し。


 ………今思えば、ここ、日本語が通じてるな。


 日本文化が栄えているのだろうか?リュウとかいう"キング"も、金髪とクレ◯のような服装を除く…顔だけを見れば日本人っぽかった。

 ここは日本なのか……?それとも、違うのか…?

 謎は深まるばかりである。



 401から410まで教室があり、俺はどこに行けばいいか一瞬わからなかったが、401の教室のドアに『初めての人はココ!』と、デカデカと張り紙があったのでここなんだ、と落ち着いて入ることができた。


 ドアはスライド型の、学校のようなドアをガラリと開き、やや慎重気味に中に入っていく。


 まだ5人しか来ていなかった。

 机は40個ほどあるので、まだ全然来ていないということになるだろう。


 普通に転校でもしたような気分だ。

 なんら、あっちにいた時と変わりはない。

 初めてということで、人が段々来ても物静かなままであった。しかし、顔つきは皆違った。

 暗い者、ワクワクしている者、無表情な者……ここだけは普通の学校とは違っていた。


 ……魔法使い、だもんな……

 そりゃ憧れる者もいる。イヤイヤなった者もいるであろう。俺は自分からなると言ってやってきたが……最終目標は『帰ること』だ。何をしてでも帰ってやる。


 少し時間が経ち、周りを見ると全部の席が埋まっていた。しかし、ここで異変を感じる。


 女、少なくね?

 40人の席が埋まってたった2人しかいない。

 仮に俺のように今回の飛行機の緊急着陸で来た人間が大勢とする。それにしても女が少な過ぎる。魔法使いってのは女のイメージも強いほどだ。…何故だ?ガチムチホモホモ育成場なのか?

 考える度に疲れるので、俺は考えるのをやめた。


 すると、教師と思わしき『女性』がやって来たのだが…


 何故、メイド服なのだ……?と思ったのも束の間。


「あの時のメイド……?」

「……あれは、あの時の…」


 メイド教師もこちらをまじまじと見つめてくる。しかし、その後は気にしまいと、俺の方を見てこなかった。

 彼女は、胸にクラブの7という数字のバッジをつけていた。

 …だいぶ上だな。


「はい、今日からこの魔法使い学科の教育を担当する、"7"のメルです、よろしくね」


 俺と同じ身長くらいだろうか。

 胸は大きく、メイド服から隆起がしっかりと分かるほどである。

 後は典型的なメイドを想像してくれると助かる。


「あなた達はキングのリュウ様に認められて晴れて職種に就くことを許されたの。だから、しっかりと頑張ってちょうだいね」


 皆、境遇は同じか。

 王に会い、認められた存在ってことか。


「早速だけど…あなた達は年齢が違えど、同級生なの。階級も一緒でしょう?…ということで、自己紹介してねっ」


 結構無茶振りするんだなこいつ。

 そう、メルと名乗る先生が言うと、左上の席の人間から一人一人自己紹介が始まっていく。


 どうやらアイウエオ順で並んでいるらしく、『リ』である俺はかなり遅いほうであった。ラッキーだ…が、しかし、時はすぐ過ぎる。


「はい次、リリヤ君、よろしくね」


 薄いラミネートされた紙…おそらく名簿だろう物を見つつメル先生が俺の名前を呼ぶ。

 俺は教室の前、教卓の前に立ち、自己紹介を始めていく。


「リリヤです。歳は17で、皆より少し歳は取っています。ですが、皆に負けない若い気持ちを持って頑張ります。よろしくお願いします」


 こんなもんでいいだろう。自己紹介なんて変哲のないものでいいんだ。


 ……しかし、皆の自己紹介を聞いて思う。


 皆、俺より若い。


 皆歳が14や15ばかり。11という子が1番下だろうか。19という奴も居たが、1人だけ。17の俺はこのクラスで2番目の年食いであった。


 ……底辺には立てねえな。


「はい、みんなありがとうね。ちなみに私は21歳よ。この国に来て8年目、最初はあなた達と一緒でこのクラスで育ったの。皆に必ず魔法使いになれるようにするから、お互い頑張ろうねっ」


 情熱のある先生だな……

 あっちの教師共とは…全然違うな。


「じゃ、授業に入りましょうか。最初は魔法よりも先にこの国のことについて学んでもらうわ。みんな、ノートは持ってきてるわね?」


 クラスの皆が、ノートを一斉に開き始め、それに釣られ俺も持ってきているノートをカバンから出し、机の上で開く。


 しっかし、こいつら学習意欲たけえなぁ……

 最初に始まったのは社会的な授業。俺は社会的な授業が嫌いだったので、つい癖で頬杖をついていた。


「この国の名前は黒の国。ここに来た人々は必ず何かしら理由を抱えてるわ。だから深入りしちゃ、ダメよっ」


 そこから、担任であるメル先生は様々なことを教えてくれた。


 この国の人口、面積。

 9割が男性であること。

 階級のこと。

 派閥スペードとクラブがあること。

 隣の赤の国は、女性が9割であること。

 他にも色々と教えてくれた。無機質ながらも透き通りの良い声は、俺の耳にも頭にも残ってくれていた。



 この時点で薄々感じていた。


 理衣は、赤の国とやらに行ってしまったんじゃないかと。

 しばらく理衣無しの生活、か………


 実際の所、この国の居心地が結構良く、帰ろうという心が少し薄れ始めている。さっきは帰ってやるとか言ってたけど、何故かそれすらも薄れてきている。


 ……理衣には会いたい…な………








 ボケーっとしていると時が過ぎ、今度は魔法を実際に放つという実訓練を行うことになった。

 魔法を使うコツなどをさっきの授業で行なっていたらしいが、考え事をし過ぎていたのか、頭に入っていなかった。


 こりゃかなりやべえんじゃないか?と思いつつ、ヒヤヒヤしながらも訓練場へと向かっていった。



 訓練場は学習塾との連絡通路があり、そこから向かっていくこととなった。


 しばらく真っ直ぐな連絡通路を歩くと、訓練場に着く。


 第一印象は丸いドーム。札幌◯ーム。しかし、全てが黄土色で作られているからか、かなり古臭い感じも匂わせている。


 野球ドームを意識して作られたんじゃないか?ここ。観客席もあり、何かが行われる時にでも使われるのだろうか。


 しかし、その何かを行う為のドーム内ステージに、人はたくさんいた。


 ヤァ!ヤァ!と剣を振り回している人々。騎士の訓練だろう。

 ウォォォ!!と速い腕の振りを見せる人々。格闘家の訓練だろう。


 他の職種も混ざるまま、ここで訓練するのか……


「では、アイラ君、さっき言った通りのコツで火魔法を放ってみて」

「は、はい!!」


 甲高く細い声で答える同級生。同級生の右手には火の玉は出来上がっているが、うまく放てないらしい。


 最初はそんなもんなのか………


 皆が作れたり、打てたりする火魔法を見て、俺はいささか不安になってくる。


「聞いておくべきだった……」


 俺はかなり後悔していた。これは公開処刑というものが待ち受けているんではないかという、未来への不安も大きくなってくる。


「はい次、リリヤ君」


 やってきちゃったよ………

 とりあえず、力任せにやってみるか…


「おおおおおおおおおおッ、火魔法ッ!!!!!」


 物凄いスピードで右手を前に出す。


 しかし、そこには火の玉は出ておらず、中二病の人間が魔法を放っているような残念な光景が広がっていた。


 や、やってしまった…………


「………あなた、明日休みのはずだけど、私が示した場所でワンツーマン訓練ね」

「あぁあぁ……」


 未熟という理由で俺は休みを潰してしまった……


 俺が悪いんだ、俺が悪いんだ………ちくしょう…


 同級生に笑われる光景を背景に、膝を落とし落胆していた。

次回、クラブクイーン登場……の前に理衣さんがどうなったかをほんの少しだけ触れます。

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