表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ハートのエースがやってきた!  作者: 3ri
第2章 リリヤとして、陸也として。
24/27

第21話 リフレッシュ休暇Ⅲ

 ブーーッ、ブーーッ、ブーーッ


 スマホのバイブ音がベッド越しに伝わってくる。


 しかし俺は気にしない。なんせ、太陽が出る時間まで、起きていて眠いのだ。



 5分後。



 ブーーッ、ブーーッ、ブーーッ


 スマホのバイブ音がベッド越しに伝わってくる。


 俺は少しイライラする。なんせ、太陽が出る時間まで起きていて、睡眠不足なのだ。



 3分後。



 ブーーッ、ブーーッ、ブーーッ


 スマホのバイブ音がベッド越しに伝わってくる。


「だぁぁぁぁぁあああうるせええええええ!!!!!!!!」


 俺は大声を上げ立ち上がりながらも電話の差出人を見てみる。


「一之瀬……莉花…?」


 こんな名前の人間を登録した覚えはない。しかも、電話番号のおかげかライソまで追加されているじゃねえか。


 ……とりあえず、出てみるか…?


「はい、もしも」

「電話に出るのが遅すぎなのよ!!!!いい???旭川まですぐ来なさい!!!いいわね!!!」


 プツン。電話が切れてしまった。

 何だったんだ…?今の……


 とりあえず無視して俺は寝ることにした。




 ……3分後。


 おやすみモードにしていた携帯はもう鳴らなくなった…はずなのに。


 ブーーッ、ブーーッ、ブーーッ



 更に、電話に出ていないのにも関わらずスマホ越しから一ノ瀬さんの声が聞こえてくる。


「寝てんじゃないわよ!!あたしの言う通りにしなかったらハムとソーセージにしてやる!!!!」


 いやなんで出てないのに声が聞こえるの!?!?ハッキングでもしてんの!?!?


 まあそのおかしい状況はともかく、だ。


 俺は妙な事に気付く。



 まず、誰かの声に似ている。

 次に、一人称に聞き覚えがある。

 そして、最後の『ボコボコにする』系統の表現。



 これらが全て、該当人物が一致しているのである。


 そう、その名は……



「…お前、リセなのか?」


 電話を手に取り、俺は通話越しにそう言った。

 すると、意外な返答が返ってくる。


「んなわけないじゃない!!!あたしの名前は一之瀬(いちのせ)莉花(りか)よ!!!逆さから読んだら『かリセのちい』よ!!!!」


 いや、変換変換。変換で思いっきりバレてますってジャガイモさん。

 やっぱりリセなんですね。


「リ…花さん、如何なご用件でしょう…」

「さっきから言ってるでしょ。旭川に来なさい、って」


 旭川って、あの有名な動物園のあるとこですよね?

 余談ですが、僕の住んでいる市は某卓球選手が生まれた地です。


 …電車で約2時間かかるんですけど。


「あのー、遠過ぎるので」

「金がないとは……言わせないわよ?」

「……さようなら」

「ああっ!!ちょっとまって!!」

「な、なんだよ……」

「陸也様と、話したいって言う人がいるの……」


 ……都合のいい奴だな、いきなり様付けだと。仕方ねえから聞いてやるか……


「話してえ奴って、誰だよ…」

「ぱぱ……」

「……はい?」


 ぱぱって、リセの親父ってことか?何故??


「あたしのぱぱは……先代の王よ。あんたの話をしたら、会ってみたいとばかり言いだしちゃって……」

「はぁ……仕方ねえな、会ってやるよ。んで、俺はどこに行けばいいんだよ」

「旭川って言ってるでしょ!!あの有名な旭山動◯園がある場所よ!!!」


 ……しゃあねえな。電車でぼちぼちと、行ってやりますか……


 俺は家を後にし、とりあえずリ…花の言う通り『電車で2時間かかる』旭川へと向かうことにする。


 というより、リセとリリカって名前が同じなんだな。漢字は違うけど…まあ、どこの国も本名をもじって名前を作るってことがわかったよ。まあ俺らカップルはどっちも同じってのはわざとくせえけどな。


 そうして、駅まで着き、電車に乗り……ゆらゆらと揺られること2時間。



『旭川駅』


 到着。中がだだっ広い為、とりあえず近くの改札のところで降りてしまったが……莉花はいるのか?


 とりあえず連絡してみるか……スマホスマホ…よし、見つけた。一之瀬莉花……あった、かけるか。


 プルプルプルプル、プルプルプルプル……呼び出し音がしばらく続き、やがて莉花と思われる人物が出る。


「もしもし?着いたけど」

「どこにいるの?」

「うーーんと、南口か……?そこらへんにいるぞ」

「わかった、待ってて。今行くからっ」


 と言い、電話が切られる。

 リセ、迎えに来てくれたのか。なんだかんだ言いながら優しい奴なんだよな、あいつ。



「りくやーーーーー!!!!」


 あいつ、環境慣れ早えな。俺なんていまだに君の名前とあったの名前であやふやになるぞ。


「お、リ……花!!!」


 リセと思わしき莉花が俺の元へとやってくる。しかし、こいつ……私服が可愛いな……白を基調とした上着とスカート……物凄く白が似合うな。


 俺は面食らいこんなことをふと言ってしまう。


「お前……本当に莉花なのか?」

「はいっ!!初めまして、一之瀬(いちのせ)莉花(りか)ですっ!」

「……敬語やめろ。気が狂う」


 莉花は深々と頭を下げ、挨拶の言葉を送る。

 今まで散々命令口調だったヤツに、いきなり敬語使われるなんて違和感しかない。でも、容姿だけは『後輩感』半端じゃないんだよなぁ…


「じゃあ、こうやっていつも通りでいいのね?せっかくあたしの事を下僕に出来るチャンスだっていうのに」

「あいにく俺にそんな趣味はない。女の子を弄ぶなど、もってのほかだ」

「……よく言えるわね…」


 自分でも自分の傷をえぐるような事を言ったのは何となく気づいていた。まあ、気にしたら負け…ってとこかな……


「とりあえず、あたしの家まで行きましょ。こんなとこで溜まっていたらまた文字数増えちゃうんだからっ」

「お前はそんなこと気にしなくて良い。ジャガイモにすべて任せておけ」


 そう言って、俺らは駅を後にした。





 旭川市のやや都会気味な街並みを歩き、その後に木々に囲まれるような山の方へとやってくる。徒歩時間は1時間を超えていた。道路はしっかりとあるのだが、歩道が不安定で、更に足元もガタガタな為、歩く度に足がだんだんと疲れ切ってきた。


「な、なぁ……まだ、なのか…?」

「んー、あと20分くらいかなぁ」

「す、少し休みにしないか……?」

「なによ、だらしないわね……あんたそれでもリリヤなの…?」


 こいつ、俺のことを人間じゃねえような扱いしてきおる。大体黒の国にいるお前だって人並み外れた馬鹿力を持っているじゃねえか…



 ……力?

 そういや、普段リセから感じるような『謎の威圧感とパワーオーラ』が今のこいつからは全く感じないな。


 今のこいつは……ただの女の子ってことなのか…?



「なぁ、莉花」

「なに?」

「俺のこと、殴ってくれないか?」

「は、ははは、はぁ!?!?あんた急にどうしたのよ!!疲れでマゾにでも目覚めたの!?」


 と言った瞬間、莉花は歩くのを止め、俺の方に振り返り左頬を思いっきりグーパンチ。そのまま地面に情けなく倒れ込んでしまう。



 ただ、物理的に痛いだけだった。あのリセ様の腕は、今はただの女の子の腕だったのだ。


「い、いてぇ……」


 俺はヒリヒリと痛む左頬を抑えながら情けない声をあげていた。


「あんたって、マゾだったの…?」

「ち、違う……お前のあのパワーが、こっちでも使えるのかなって……」

「…はぁ。あたしの力は聖奇石によるものよ。ここにいる間はただの一般的なぴちぴちのJCなの。身体が思ったように動かなくて、嫌になっちゃうわ」


 …こいつは(あっち)の感覚に慣れ過ぎているのか。まあ、姫となれば必然的に長く居るものなんだろうな。


「さっ、歩きましょ。のたのたしている暇はないの」

「は、はぁ……」


 莉花に無理矢理腕を引っ張って起こされ、そのまま俺らは山道と言える場所を歩き続けた。






「ぜー…はー…ぜー…はぁ……」

「なによ。これくらいで疲れてるの?」


 歩くこと1時間半、ついに莉花の家に到着。こんな山奥に家なんて、随分と独特なことやりやがるな……


「つ、疲れたわ流石に……」

「…あたしもちょっと疲れたわ。中に入ったら少し休みましょっ」


 少し古臭い横スライド型のドアを開ける。ガラガラと言う音と、ファ◯リーマートの入店音が流れる。


「ただいま〜!」

「お、おじゃまします……」


 莉花は履いていた運動用っぽい靴を散らしながら家に上がる。俺はそれを綺麗に並べてから、ゆっくりと靴を脱ぎ家に上がる。


 こっちにいる時の莉花って、なんだかただの元気ハツラツな女の子なんだな。なんだか、平和ってものをしっかりと味わっているような…そんな感じがする。


 あっちなら、戦いとかにまみれているし、な……



 体育館のような、木の色が味を出す短い廊下をまっすぐ歩き、俺は居間へと入っていく。


 天井がやや高く、すぐ右隣にふすまがある。左奥にキッチンがあり、団らんの場となりそうなところにはソファーとテーブルがあり、その正面にテレビ。まるで4人くらい住んでいるかのような部屋作りだ。


「いいのよ、どこに座ったって」

「わかった……じゃあ遠慮なく…」


 ソファーに座るのはなんだか悪い気がしたので、テレビの前の床に座ることにする。すると、隣のふすまが開き、白髪に染まったおぼつかない動きをするオッサンが顔を出してきた。


「君が……リリヤ君かい?」

「は、はい……何故それを…?」

「莉花から聞いとらんかい?私が……」




「先代キング……一之瀬(いちのせ)(ごう)……あっちでの名は、ゴウセという名だった」




 …ゴウセ様。リセの親父と言う割には、随分と歳を食っているように見える。60…いや、70に見えてもおかしくはない。ご老体、とまでは行かないが、動きがとてもフラフラしており、ふすまに寄りかかったりしながら歩いている。


「だ、大丈夫……ですか…?」

「心配いらん。この身体を動かすのはもう慣れた」


「ぱぱ……無理はしちゃダメだよ…?」

「莉花に心配される程ではない」


 よろよろとゆっくり歩きながら、ソファーへと腰掛けるゴウセ様。




 そして、ゆっくりと俺、莉花、ゴウセ様の会話が始まってゆくのであった。

次回、会話編。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ