第11話 下っ端の下剋上
遂にベスト32まで来たリリヤ。異例だのなんだのと周りが騒ぎ込める中、俺は至って冷静でいた。
2だからどうした。勝てればそれでいいじゃねえか。もしこれでカナエルが勝っていればカナエルがスポットライトを浴びまくっていたのか?それは違う。
俺は勝利してきた相手が異常だった。それで注目を浴びてしまう。少しだけ静かにしてほしいと思うばかり。戦いに集中させてくれ。
そして、今日はもしも勝ちきれ7回戦、8回戦、準々決勝と行われる。
また連戦が激化する。
さて、試合も始まるだろうし、行きますか………
「今日も始まりました無差別戦!!そろそろ飽きたとは言わせません!!むしろ熱くなるのはこれから!!さぁ!早速行ってみましょう!」
いつも通りリセがベンチに入り、俺は待ちながらもリセと会話をする。
「もしかしたら、7.8回戦は楽勝かもねー」
「何故そう言い切れる?」
「だって、今回の相手、あんたが今まで戦ってきた相手より全然弱いもん」
1.3.4回戦が異常なだけです。だからと言って弱いわけではありませんよ今回の相手が。
「だって、あたし前回あんたと当たる相手と戦ったけど、拳一撃で勝ったよ?」
「俺がリセのような動きが出来るとは限らないぞ」
「あんたなら……大丈夫よ。自分を信じて…………うーーーーっ、あたま、さげてよ……」
どうやら俺の頭を撫でようと思ったらしいが、うまく手が届かないらしい。俺は気付いていたが、あえて撫でられようとはしなかった。
「お前が俺を撫でようなんて永遠にない事だぜ」
「ちょっとくらいさせてくれてもいいじゃない……ばか……」
シュンと落ち込むような動作を見せるリセ。
そこで俺がリセの頭を優しく撫でてあげる。
「んにゃぁっ!?ず、ずるい……」
いきなり頭を上げ、上目遣いになる。長い髪がユラっと揺れ、同時に声も反応も……すごく可愛い。
「ばーかばーか………」
俺の胸あたりで指をもじもじと動かすリセ。なんだこのツンデレ姫は。天使じゃねえGODだ。
「頑張ってくるよ。俺は負けないからな」
「うんっ、頑張ってね、リリヤくんっ」
今日は君付けか。どうやって呼んでも可愛いんだけどね。
そんな非リアの人間が見たら呪い殺すであろうシチュエーションを済ませ、俺はステージに上がる。
相手も入場し、試合が始まる。
「うおおおおおおおおりゃああああああ!!!!」
リセの言う通りだった。相手は俺の拳ひとつで遥か彼方にぶっ飛んでいった。まあ遥か彼方って言ってもステージの壁なんですけども。
「おおおっと!!!!一撃で決着がついてしまった!!!!これはーーー!!」
「リリヤ選手の勝利!!!!おめでとう!!」
ワァーーーと大歓声。というより……
「ジャガイモ!!!てめえまた省略したな!?!?」
どんなものにでも省略はあります。(筆者)
何はともあれ、7回戦勝利。
次の8回戦も勝利。
省略しすぎだろクソジャガイモ!!!!確かにどっちもワンパンで勝利したから楽だったけどさぁ!こんな省略方法はないぜ!他の手抜きをしない作者を見習えよ!!
別に手抜きをしているわけではないが……
サブキャラ過ぎると省かれるものなんだよ。悲しいことにね。
ベスト8………次が準々決勝。いよいよ、『決勝』という文字が浮かび上がる場所まで勝ち上がってきた。
…長かったな。もう心だけがクタクタだよ。
身体に関しては戦いの終わりに神官職の人間にその都度完全回復されている。だから体力だけは有り余っている状態になる。しかし、精神だけは癒えるものではなかった。人を殴る罪悪感など、様々な感情がこみ上げる。
この小説って、巨乳キャラ少ないよね………
理衣くらいじゃないか?それ以外にいるのかな……はぁ、おっぱいに触れてえな…
崖はもう勘弁だよ。
赤の国いきてーーーーーーーーー……という欲求に耐えながら、今は戦いますか……
「そろそろ終盤ですね、準々決勝……!!半年に一度行われるこの無差別戦も終盤に差し掛かり初めています!では、準々決勝!1試合目参りましょう!!!」
「13番!!遂にここまでやってきた!!!クラブの2がやってきた!!!超弩級魔法使いファイター、リリヤ選手!!」
いつも通り、ベンチにはリセが入っている。ここに来るとアドバイスをくれるのもいつも通りである。
「あたしの分まで頑張りなさいよ!!!次の相手は絶対優勝出来ない人とか総評を受けているんだから、負けちゃダメだよ!!!」
「な、なんじゃそりゃそのクソみたいな殿堂入りしたキャッチフレーズが付いた人間は……」
無冠の帝王、って奴かな。どこの世界にもいるもんなんだな、そういうの。だからって弱いわけじゃないだろう準々決勝まで来ているんだから。
「でもあたしは1回負けたことがあるわ……あの人、とんでもなく強いの。でも、どこかで負ける…というより大体リュウかゼルナが倒すんだけどね。うちは王家だけが異常に強いのよ……だから、あんたには期待が物凄くかかってるよっ」
「なぁ」
「どうしたの?」
俺は不意にリセの胸元を見つつ、そこに手を差し伸べた後、こう言った。
「リセって、ほんと崖だぶふぉぉぉっ!?!?」
なんとリセに殴られ、飛び出すような形でステージに入場という世界一情けない駆け上がりとなった。試合が始まる前に大ダメージ。なんてこったい……首を上げ、ベンチの方を向くとプンプン怒りまくっていたリセがいる。あれは相当お怒りだな……
「死ね!!バーーーーカ!!!」
とまで遠目で言われました。めでたしめでたし。
というわけにはいかない。なんせ、もう片方の人間が入場してないのだから。
「やはりインパクトのあるリリヤ選手ですね!!」
「嬉しくねえよ!!!」
司会にいい感じに流され、それにツッコミを思わず入れる。
「さて、相手選手も入場しますよー!!352番、無冠の帝王、しかし最強なのは皆理解済みでしょう…スペードのキング、サリス!!!」
「今度こそは優勝してくれ!!!たのむ!!!」
「サ、リ、ス!サ、リ、ス!」
はっきりと聞こえる歓声。人気の高さが伺える。
「君が、リリヤ君だね?君の活躍はよく見ている」
「は、はぁ……ありがとうございます」
「礼など無用さ。私はもう10年以上キングなんだ。でも、期待にずっと答えられずどこかで必ず負けてしまう。そんな自分が悔しいんだよ」
いきなり語り始める重厚な装備をつけたあんちゃんに、俺は疑問の念しか浮かばない。なぜ語る?
「なぜ語るかって?」
てめえエスパーかよ。なんで俺の心の声が読み取れるんだよ。
「頂点に立てれば、私は王位を譲りたい。もう、終えたいんだ、王としての生活を」
終えたいから勝たせろ…ってか?
「…そんなことはさせねえぜ」
「何故…?」
「あんた、こんだけのファンや、派閥の人間を見殺しにする気か?そんな同情をかけるような方法を使ってまで勝ちてえか?ただ負けすぎて心が折れてるだけなんじゃねえのか?だから……」
「あんたの為にも、俺自身の栄光の為にも、この勝負、絶対負けねえかんな!!!!!」
俺はつい気合が物凄く入っていた。何故だろう。結局同情してしまったのだろうか、この男に。確かに疲れ切った顔はしている。さっきのセリフが彼の本音なんだろう。だけど、俺というストレートな性格がひん曲がった戦いを許さなかった。
それは、彼の闘争心の火を強く付ける行為となっていた。
「君がそういうなら……私は全力で戦おう、戦人の職にかけて、な」
戦人……だって…!?
一部の騎士や格闘家しかなれない、この二つを掛け合わせた職と……確か言ってたはずだな、誰かが…
なんの職種だろうと関係ない。
俺は俺である以上、魔法使いファイターとして勝ち続けてやる。
「…あんたにはまだまだ王でいてもらうよ……行くぜ、サリス」
戦いの火蓋が切って落とされたのであった。
次回、戦います。




