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従妹に懐かれすぎてる件  作者: きり抹茶
五月……星月従兄妹と五月病
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五月三日「従妹とSOS」

※詳細な描写はありませんが、虫が苦手な方はご注意ください。

 久々の帰省ということで暫くの間、母と顔を向かい合わせて質問攻めを受けていた。

 といっても内容は単なる近況報告で「彩音と仲良くしてるか」とか「彩音に美味しいものを食べさせてるか」とか「彩音の体調は大丈夫か」などなど……。


 ――って彩音の事ばっかじゃねぇか。実母のくせに息子の心配はしないのかよ。


「で、母さんの方はどうなんだ?」

「ふふ、お母さんは元気よ?」


 楽観的かつ面倒臭がりな母は俺の心情など知る由もないようで、 笑顔を浮かべながら質問に答えた。まあ、何事も無ければ別に良いんだけど。


「そういえばリビングにあるテレビ、新しく買ったの?」

「ええそうよ。これからの4K時代に乗り遅れたくないからね」

「さいですか」

「あとこの前ル○バも買っちゃったわ~。ちゃんとお掃除してくれるし動きも可愛いのよね。それから食洗機も買い換えたし、次はエアコンも……」

「おいおい、そんな一気に金使って平気なのかよ」


 当然だが家計簿なんてつけてないだろうし、収支の概念すら有るかどうか疑わしい。というか何で実家の家計を俺が心配しなくちゃならないのだ。普通は逆だろ逆。


「大丈夫よ佑真。臨時収入があるから平気なの」

「ほほ~。へそくり的なヤツがあるのか」


 主婦であるはずの母に舞い降りる収入と考えると……こっそり副業でも始めたのだろうか。面倒を極度に嫌がる人だが金の魅力は底知れないからな。きっと楽な仕事を見つけたのだろう。


「だからこれからも元気に彩音ちゃんと暮らすのよ?」

「あ、あぁ。元からそのつもりだが」


 何故このタイミングで彩音を出したのか定かではないが母の事だ。恐らく適当に話を終わらせたかったのだろう。

 俺はそんな母の意を汲み取り、座っていた椅子から離れ自室へ向かおうと部屋を後にする。

 するとスマホの着信音が鳴り響いた。慌ててズボンのポケットから取り出し、応答ボタンをタップする。


「……もしもし」

「ゆうにぃ! 早く来て!」


 聞こえたのは切羽詰まった彩音の声。これはただのラブコールでは無さそうだ。


「どうしたんだ? 今どこにいる?」

「自分の部屋だけど……ひゃぁ!」


 甲高い悲鳴が響いた後、通話は切れてしまった。


「彩音……彩音!」


 まずいことになったぞ。暴漢に襲われたか、はたまた立てこもり犯の人質にされたか……いずれにせよ緊急事態だ。

 俺は迷わず玄関から外に飛び出し、隣の玄関までダッシュする。

 待ってろ彩音。俺が助けてやるからな!



 ◆



「彩音、大丈夫か!」


 勝手に家の中に入り、彩音の部屋がある二階へ駆け上がる。普通なら家主に怒られてしまいそうな行為だが、家族同然の親戚だし何より今は緊急なのだ。挨拶などは後回しにしてくれ。


「彩音!」


 無我夢中に叫びながら二階へ到着。すると廊下でへたり込む彩音と目が合った。


「おい、大丈夫か!」

「ゆうにぃ、助けてぇ」


 近づくと、彩音は半べそをかきながら俺の両足に飛びついてきた。とりあえず怪我はないようだ。


「どうしたんだ? 誰かに襲われたのか?」

「ううん、違う。部屋の中に……私の部屋に……」


 言いながら閉ざされたドアの方を指差す彩音。もしや部屋の中に不審者が……!


「よし、俺に任せろ!」


 腕っぷしには自信がないが彩音を守るためなら血だらけになっても戦ってやる。か弱い女の子を泣かせる奴は許さないからな。

 彩音の手を振りほどいてドアの前まで進む。もし相手が武器を持っていたらどうしよう。こっちは素手だが……。まあ今は考えている暇は無いな。


「おらぁぁぁ、俺が相手だあぁぁ!」


 勢いよく扉を開け、精一杯の威嚇をする。しかし、部屋に不審者はいなかった。


「あれ……?」


 辺りを見回したがやはり人影は無い。おかしいなと思いつつふと視線を床に落とす。すると――


「うげぇぇぇ!?」


 全身の毛が逆撫でされるような気持ち悪い衝撃と感覚に陥る。彩音を泣かせた犯人、俺の目の前に堂々と居座るそいつは人ではなく全長二十センチを優に超えるだろう超巨大クモだった。


「部屋に入ろうとしたらそのクモがいたの。少し動くだけでも怖すぎるよ……」


 怯える彩音だが、これは確かに恐怖だな。どこから手をつけたら良いかも分からないし。


「ちりとり的なヤツは有るか? 捕まえて外に逃がしてしまおう」

「う、うん。今持ってくるね!」


 それから彩音が持ってきた蓋付きちりとりを使ってクモを捕獲し、外へ追い出すことに成功した。特段虫嫌いではない俺だが、流石にあの大きさを見るのは初めてだったので内心は怖かった。できればもう二度と会いたくない相手である。


「ゆうにぃ、ありがと。助かったよ」

「あぁ……」


 ひとまず安心。胸元に抱きついてきた彩音の髪を俺は優しく撫でた。ほのかに香るローズマリーのシャンプーとさらさらとした感触。いつも思うが本当に心地良いな。彩音はとろけるような笑顔を浮かべているし、ずっと触っていたくなる。


「えへへ、ゆうにぃはテクニシャンだね。ナデナデされてるだけなのに気持ち良すぎて昇天しそうだよ」

「おいその発言は誤解を生むからやめてくれ」


 俺は女の子の髪に触れてるだけだからな。至って健全な行為をしているだけだからな!


「ほほう……。愛撫だけでイカせるようになったとは佑真君もやり手になったわねぇ」


 ほら早速勘違いする人が来た……ってこの声はまさか。

 突如背後から聞こえた声。振り向くとそこには――


「げ、梨恵さん!?」


 星月家で最も恐るべき変態であり、俺が彩音と同居する事になった火付け役の人物――伯母の梨恵さんが階段から顔を覗かせていた。

ノーカットで喋らせたらBPO待ったなしの梨恵さんがいよいよ登場です。

大人の事情で打ち切りにならないように彼女の発言には注視したいと思います(笑

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