表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
従妹に懐かれすぎてる件  作者: きり抹茶
四月……春眠学問を覚えず
27/37

四月十八日「従妹ととろみ」

 彩音がワンルームの俺の家に押しかけてきてから一ヶ月が経とうとしていた頃。

 夕食を作る準備に取り掛かる彼女を横目に、俺はスマホのニュースサイトを流し見していた。


「ゆうにぃ、片栗粉ってどこにあるの?」

「片栗粉……? そんなもんウチには無いぞ」


 元々一人暮らしをしていた俺は家事が大得意という訳でも無いし、調理師になりたい訳でも無いので当然ながら凝った料理は作らない。せいぜいカレーや軽い炒めものを作るぐらいだから調味料関係は塩コショウやマヨネーズ程度の基本アイテムしか無いのだ。


「そっか……。じゃあ作れないよ……」

「因みに何を作ろうとしてたんだ?」

「あんかけ焼きそばだよ。とろーっとしてて熱いのが食べたいの!」


 言葉と共にジェスチャーを使ってとろみを表現しようとする彩音。言いたいことは分かる。が、何故か如何わしく聞こえたのは気のせいだろうか……?


「レトルトでもいいんだぞ。その方が時間もかからないし」

「確かにそうだけど……。私も色んな料理を作ってみたいんだよね」


 口だけは一人前だが、実際の彩音の腕前は半人前かそれ以下である。彼女を好き放題甘やかしている俺ですら酷評せざるを得ないのだから、見ず知らずの他人に食べさせたらそれはそれは酷い批判を浴びることになるだろう。正直な話「レトルトでもいい」ではなく「レトルト()いい」と言いたかったぐらいだし。

 だがそれでも俺は彩音に失望なんかしない。寧ろ、自分の欠点を克服しようと取り組む彼女を応援したくなるし、俺が出来る全てを与えたいと思っている。


「自分で作るなら美味い料理にするんだぞ。自信が無ければ今日は俺が飯を用意する」

「うん……。でも私だってゆうにぃみたいに美味しいお料理も作れるもん! 頑張るから私に任せてくれない?」

「そうか……。悪くない返事だ」


 彩音と共に暮らす日々がいつまで続くかは分からないが、彼女の手料理が上達すれば俺にとってもメリットとなるだろう。先行投資だと考えれば片栗粉の一つや二つなど屁でもない。


「じゃあ俺は足りない材料を買ってくるよ。片栗粉と……あとは何が欲しい?」

「愛が欲しい!」


 なにロマンチックな事を言ってるんだよこの子は。


「愛は非売品なので買えません」

「なるほど……。ゆうにぃが私を想う気持ちはお金で買えるほど安くは無いってことか……」

「いや、そういう意味で言った訳じゃないんだけど」

「でも安心してゆうにぃ! 私の愛もゆうにぃしか買えない限定商品だから!」


 両手でハートマークを作る彩音。あざとかわいい。


「なんか話が逸れまくってるぞ。結局買うのは片栗粉だけでいいのか?」

「あ、待って待って。私も行く!」


 彩音は急いでエプロンを外し、ばたばたと支度を始める。

 俺はふわふわと舞う彼女のスカートを見ながら、苦笑いで溜め息をついた。



 ◆



 夕暮れ色に染まる路地を二人並んで歩く。最寄りのスーパーは徒歩五分程度の距離にあり非常に便利なのだが、今日は足を延ばして駅前のデパートに行くことにした。メール購読しているWEBチラシに玉子ワンパック百二十八円(税込)という記載を見て、買わずにはいられないと思っていたのだ。一人暮らしを続けるとこういった主夫力も自然と身に付くのである。


「ねぇゆうにぃ、手繋ご?」

「やだよ、恥ずかしい」


 彩音は外出時であっても平気で俺に甘えてくる。多少は自重しているようだが、俺は恥ずかしさと周りの目が気になって仕方ないのだ。


「えぇー。でも普通に繋いでいる人もいるじゃん」

「それはカップルの話でしょ」

「え……。私とゆうにぃってカップルじゃなかったの?」

「いや、違うだろ」


 そんな純度マックスな疑問の顔をされても困るんだが……。


「ゆうにぃは私のこと嫌い……?」

「嫌いじゃない……けど俺達従兄妹同士だし……」

「安心して。いとこは結婚もできるんだよ?」


 一気に詰め寄られ、二の腕に彩音の肩が当たりそうになる。距離が近すぎないか……?


「民法七百三十四条によると傍系血族の三親等以内の婚姻を禁止してるけど、私達は四親等だからセーフなの。日本の法律が許してくれてるから思う存分好きになっていいんだよ?」

「いや知ってるけど……というか彩音は博識だな……」

「えっへん。ゆうにぃの為なら勉学も苦にならないからね!」


 少し得意げな顔の彩音。まあ実際、彼女の成績は当時の俺よりも遥かに良い訳で、都内ナンバーワンで名高い進学校に余裕で入学できるくらいなのだから、俺が文句を挟む余地は皆無だ。


「分かったから……取り敢えず外では大人しくしててくれ」

「むむぅ……。ゆうにぃがそう言うなら仕方ないなぁ」

「よしよし、素直な子は可愛いぞ」

「えへへ、照れちゃうじゃん、もうっ!」

「おいこら抱き着くな。離れろって!」


 腕にしがみつく彩音をなんとか引き剥がす。

 ――やっぱ甘やかし過ぎは禁物だな。

長らくお待たせしました!

今後暫くは1、2週間に1回程度更新できると思いますので引き続きよろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
お読みくださりありがとうございます。
他にも以下の作品を執筆しておりますので、よろしければ御覧くださいませ。

ロリっ娘女子高生の性癖は直せるのか
幼馴染のロリJKに振り回される学園ラブコメディ。
甘酸っぱい恋の行く末を是非ご覧ください。完結済み小説です。

ランキングへのご協力は以下よりお願いします!
小説家になろう 勝手にランキング
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ