■005□噂って何?
「…ということだ。それじゃあ、朝のSHRを終わる。」
委員長は皆を立たせ、礼をさせた。
毎日毎日、起立とかさ、礼とかめんどくさいんだよね。
いちいち先生に向かってそんなことする意味あんの?
俺たちはいわばお客様だろ?
……なんだか視線を感じる。
辺りを見回してみた。
水月とユカリと神田がこっちをちらちら見て笑っている。
まっ、まさか!?昨日の俺のことを話して笑っているのか!?
やばいぞ、俺のプラス面がマイナスに変わってしまう〜〜
ここはいっちょ、自分のために勇気出しますか!
3分後…
くっそ〜向かいにくい〜〜
勇気を出せ〜俺!
5分後…
とにかく足を動かそう。
よし行くぞ!
…ってやっぱ無理だ、手でも洗いにいくか…
1分後…
後1分しかない〜〜〜
今度こそ行くぞ!
今度こそ!
俺は勇気を出して立った。
勇ましい、勇ましいぞ俺!
そのままいくつかの机を横切り、ユカリの机を両手で叩き言ってやった。
「ユカリ、俺の噂立てんじゃねぇ〜よ」
3秒、間が空いた。
「噂って何?何の話?」
「しらばっくれるな!俺の方をちらちらと見て笑ってただろ!それが他ならぬ証拠だ!」
俺はユカリに向かって、なんかの名探偵のように指をさした。
ユカリは腹を抱えて笑った。
「バッカじゃないの?誰があんたなんか見るかって!私達が見てたのは外の中庭にいる校長を見てたんだって!
あのはげ頭に光が反射して面白かったからね!」
見てみるとホントだった。
くわっ、まっ…まぶしすぎるぜ…校長…
そしてうざいぜ…校長…
なんか同情しちゃうぜ…校長…
「…っな、んな…」
その時、ちょうどチャイムが鳴った。
俺は急いで自分の席に戻った。
俺のバカ!
この被害妄想、どうにか何ねぇかな…
校長、今度はあんたを恨むぞ。
それにしてもユカリに弱みを握られてしまった。
もしかしてこの先、ジュース買いに行かされたりすんじゃねーだろうな?
「横田君、大丈夫?ボケーとしちゃって」
ビクッとした。
気づくとみんなが立っていた。
先生は俺の横に立ち、困惑していた。
急いで俺は立った。
するとみんなに大笑いされてしまった。
俺の人生って一体…
これだから、起立とか礼は嫌いなんだよ!