■002□これが恋の始まりってやつ?
「急げ俺!今ならまだ許してくれるはずだ!」
教室に入ろうとした瞬間、そこに障害物が現れた。
俺と同じく遅刻しそうで、スグそこの廊下の角を曲がってきた奴。
そいつと正面衝突した。
「いたたたた…ちゃんと前見ろよ!」
俺は前方にいるぶつかってきた奴に言った。
その時、ハッとした。
よーく見ると女子だった。
髪は肩まで伸びており、ここからでもシャンプーのいい匂いがする。
体も俺よりは小柄で、なんと言ってもかわいかった…
彼女も起き上がった。
「ごめんらはぁい…」
どうやらさっきの衝撃で舌をかんだようだった。
「らいじょうふれすか?」
胸がときめいた。
さっきの衝撃で心臓が圧迫されたとかじゃなくって…
俺は恋をした…
もしかしてこれが…恋の始まりってやつ?
………
そして今に至っている。
あの後先生に遅刻して怒られた。
そして彼女とは普通の友達として過ごした。
マンガみたいな進展はない。
俺はずーっとなんか進展ぐらいはあるだろと思っていた。
でもそれは俺の妄想でしかなかった。
所詮マンガはマンガ、現実は現実ってことだよな…
…?マンガ……マンガ=アニメ…アニメ=…思い出した!キング・オブ・ナイト!
朝、街中の家電量販店の中から聞こえてきたあの台詞はそれだったんだ…
スッキリした。
1時間目の授業の始まりのチャイムが鳴った。
その音はまるで俺を励ますかのようにやさしく、聞こえたような気がした。
いつものチャイムのはずなのに…
帰りのSHRが終わると、教科書や参考書をバックに詰めた。
偉いだろ!
他の奴はそんなもの置いていっている。
でも俺は最近授業についていってないから、持って帰って勉強しなきゃいけないんだよな。
トコトコとこちらに向かって誰かが歩いてくるのが目の隅に見えた。
水月 千歳だ…
あの運命の子。
彼女とは2年でも同じクラスだった。
運命のいたずらってやつ?
いや、いたずらではないな…
「横田君っていっつも教科書持って帰ってるね。偉いね。
私なんて持ってかえたってボーっとしちゃうからだめなんだよね。」
言うのを忘れてたけど水月は天然だ。
授業中で見てても、おいおいと思うことがある。
よくこの高校に受かったものだと。
「今日はさ、一緒に勉強しない?私チンプンカンプンだから…ダメかな?」
上目遣いで言われた。
もしかしてこれは誘ってるのか?
いや、もし本当に勉強するだけだったら。
いや、もしかして俺に好意がある?
そんなはずはない、あれから何の進展もないのに…
「私の家でやるんだけど…やっぱり嫌かな?」
ぬぉぉおおおおお!そんなこといわれたらぁぁああ!!
平常心だ、平常心。
クソッ!そんなことできるかって!
こうなったら一か八か…
「…?」
「良いけど…俺もわかんない所あるから、そこは簡便な」
「…ウン!」
おっしゃ!よくやった俺!よく言った俺の口!
こんな勇気出してよかった!