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NGワードは彼女だけが知っている  作者: 紅涙詩穂璃
31/43

『女子高生パンツスティール事件Ⅴ』~次回!その女、凶暴につき~

□学校・校長室(昼)

    盗んだばかりの女子Aのパンツを片手にココアを飲んでいる校長。

校長「ふふふ。新しいパンツだ」

    と、ほくそ笑む。

    その時、一本の内線電話がかかってくる。

校長はパンツを金庫にしまおうとするが、

校長「ああ、だめだ電話を取るのが先だ」

    金庫には後で入れることにしてポケットにしまう。

校長「はい? なんだいそれは? 私はそんなもの頼んだ覚えはないぞ。いやいや、追い返さなくてもいい。いくらなんでもそれは失礼じゃないかい。丁度いい! お昼を何にするか決め   てなかったんだ。立て替えといてくれ。すぐ行く」

    校長はラッキーと言わんばかりの足取りで外へ出て行く。

    主が不在になった校長室。

    十秒ほど経ってから人影が躍り込んでくる。

長谷田「よーし、上手くいってるみたいだな」

    長谷田は焦りを抑えながらも、素早く金庫に取りつく。

長谷田「最初の三桁は分かってるんだ。後の二桁はこの時間に見つけてやる!」

    長谷田は暗証番号を次々と入力していく。ピ、ピ、ピ、と電子音が校長室に響く。

長谷田「くそ、さっさと開きやがれ不良品!」

    電子音のリズムが次第に早くなる。しかし未だに鍵は開かない。

長谷田「あ~! こういう状況は苦手だ! 心臓に悪い。いっそ捕まえてくれ~。でも俺はやる! きっとこの鍵を開けてレイナのパンツを回収するんだ! これは俺にしかできないことだから」

    長谷田の強い思念が通じたのか、鍵が開いた。

長谷田「へへ、ミッションポッシブルだぜ!」

校長「そこまでだ」

    胃の腑を揺るがす冷徹な声。

長谷田「なに⁉」

    弾かれたように声の方へ振り向く長谷田。

    校長は、その後ろに控えている人物へと肩越しに振り返り、

校長「今の、君も見ていたよな? 君も証人だよなあ?」

美月「はい。現行犯ですね。時間も場所も記録しておきましょう」

    校長と美月先生は、その両手にいっぱいのピザを抱えている。(美月先生は女性)。

校長「頼んでもないのに気が利くね、長谷田君。最近食べてなかったからねえ。私はピザが好きなんだが、なかなか自分から食べようとは思わないもんでねえ。良い機会だから美味しく頂くとするよ、ありがとう」

    余裕ぶっているようで、切迫した作り笑顔を見せる校長。

美月「長谷田ぁ。計画的な犯行というのは罪が重いんだぞ?」

    こちらは完全に余裕で、人を見下したシニカルな笑みを浮かべる美月先生。

    長谷田の額には汗が浮かんでいる。しかし、その顔は諦めた者のそれとは違う。

長谷田「証人がいるのは僕にとっても好都合ですよ。さあ、見て下さい美月先生! この金庫の中身にはとんでもないものが! ……って、あれ?」

    長谷田は勝利を確信した様子で、金庫の扉を開ける。

ぱちぱちと、長谷田は目をしばたたく。一度目をつむり、また見てみる。

美月「どうした~長谷田ぁ? そこに何か入っているのか? 面白いものでも」

    つかつかと威圧的な足音を立てて、金庫の中を覗きにくる。

美月「空っぽですね、校長? これは初めからこうなんですか?」

校長「そうだ。初めから、そこには何も入れていない」

    美月は長谷田へと同情的な視線を注ぎながら、

美月「せっかく頑張ったのに、残念だったな。金塊とか宝石とか見つかればよかったのになあ」

    美月は物わかりの良い台詞を吐く。しかしその目は長谷田をきつく睨んでいる。

長谷田「おかしい」

美月「おかしいのはお前だよ。こんな生徒初めてだ」

長谷田「ここにあったはずなのに……無い……どうして? レイナの……俺が返してやろうと思っていた……」

美月「ぼそぼそ喋られても分かんねえよ」

校長「あんまり責めてらないであげてくれ、美月先生」

    校長はばつの悪い表情をして、

校長「とりあえずそいつをここから連れ出してくれ」

    覇気のない命令にも、美月は当然のように従う。

美月「わかりました。こいつには生活指導室でじっくりと話を聞かせてもらいます。何人がかりがいいかなあ? 皆こういうの好きだからなあ? 特に国語科の教師はマルキドサド侯爵の愛好家が多いんだよ、楽しみだ。あ、校長先生。ピザごちそうさまです」

校長「ああ」

美月「ほら、お前が持つんだよ」

    と、美月は長谷田にピザの箱を持たせる。

    長谷田は憑物がついたように肩を落とし、去っていく。

    そして、部屋には校長が一人残る。

校長は持っていたピザの箱をローテーブルに置く。

校長「どうしてだ長谷田君……私は君のためにパンツを返したのに。真犯人の存在を主張し、長谷田君の疑いを晴らすという、ただぞれだけのために貴重なパンツを手放したというのに……君は私をハメることしか考えていなかったんだね。金庫を開けるだなんて、危ないことをしてくれたものだ。私がパンツを返していなかったらどうなっていたことやら……もうやめよう。人のことを信用するのは……」


□教室(昼)

    集まって昼飯を食べているレイナと堀北と女子A。

レイナ「おそらく犯人は生徒ではないと思うんだ。教職員の場合、時間割の線を洗っていけば、今日の四時間目にアリバイがない教師が見つかるかもしれない。しかし厄介なのは外部犯の場合だ」

    などと議論している最中に、前川が息を切らしながら駆け込んでくる。

前川「長谷田が、生活指導室に連れて行かれた!」

レイナ「長谷田が? どうして?」

前川「なんか、悪戯なのかな? ピザの宅配を学校まで頼んだんだって。十枚くらい。何のためかわからないけど」

堀北「ピザですか? どうしたんでしょうね?」

女子A「久しぶりにピザ食べたいな~」

レイナ「ピザか……」

    レイナは顎に手を当てる。

レイナ「あいつ、バカなのか?」

前川「まあ、そうだけど」

    と、前川は苦笑いして、

前川「何がしたかったかはさておいて、どうしてバレたんだろうね?」

堀北「そうですよね。長谷田君はピザ屋さんに電話をして注文を頼んだんですよね? その時に自らの名前でも名乗ったのでしょうか?」

女子A「いや~名前を明かして悪戯するとは思えないけど」

前川「悪戯ってのは長年一緒に過ごしてきた中で私の中に根付いた長谷田像からの推測なんだけどね。本当はなんか違う目的があったりして?」

レイナ「違う目的か……」

    その言葉の意味をレイナは考えてみる。

前川「そういえば長谷田がパンツを盗んだって話はどうなったの?」

女子A「あ~パンツね……前川のこと信用してるから言うけど、ここだけの話、実は今日も一枚盗まれたんだ、私のが……」   

堀北「さらに不気味なことに、先日盗まれたはずの私のパンツが更衣室に落ちていたんです。盗まれたものが返ってくるのって嫌ですね……」

    女子Aと堀北は暗い表情になりながらも言葉を絞り出す。

前川「今日も? 今日は長谷田には無理だよ。だってずっと授業出てたし」   

    レイナは神妙に頷いて、

レイナ「うん、そうなんだ。だから長谷田以外の誰か他に怪しい奴はいないかって考え始めたんだけど」    

前川「そっか。長谷田の疑いが晴れたのは良かったけど、うかうかと喜んではいられないね」

レイナ「そうだ。いるんだよ。この学校の内か外か分からないけど、どこかに、パンツスティーラーが……」

    レイナは遠い目で窓外の空を見上げる。

女子A「いやいや、ちょっとちょっと。俺たちの戦いはこれからだ的な感じの雰囲気になってるけどさあ、私気になってることがあるんだよ」

堀北「なんですの?」

女子A「確かに今日の犯行は長谷田には不可能だけどさあ、だからといってこないだのが長谷田の仕業じゃないって断定できるのかな?」

堀北「あっ、それはそうですよ! 犯人は二人いるんです!」

    前川は少しムッとしたように、

前川「え? そんなに長谷田を犯人にしたいの?」

    堀北は挑むように言い返す。

堀北「違います。しかし、疑うのが当たり前だと思います。だってこないだ私のパンツが盗まれた時、授業に出ていなかったのは長谷田君一人だけですから!」

前川「で、でも……長谷田は、そんな、変態じゃない……そりゃちょっとはバカだけど、人に迷惑かけることもあるけど、スマホのブックマークはエロサイトばかりだけど、でも、違う!」

レイナ「おーけい」

    レイナはクールに声を発する。

レイナ「長谷田は犯人じゃあない。前川のことを信じよう。私だってそう信じたい。ただし、長谷田が事件に無関係だとは言い難い。あいつは何らかの形で事件に関わっている」

女子A「そこまで言う根拠は? 長谷田を疑うことの根拠はあるけど、長谷田が事件に関係していると推理することへの根拠は無くない?」

レイナ「ああ、まだ話していなかったか」

    と、レイナは言いさして、躊躇いがちに、

レイナ「あの日、堀北のパンツが盗まれた日の放課後。私は駅のホームで長谷田とばったり会ったんだ。少し軽口を叩き合った後、あいつは私が寝ているものだと思い込んで、ぼそっとこんなことを呟いた。『ノーパンか?』って」

    堀北、女子A、前川に電流のような衝撃が走る。

レイナ「その意味深な発言があって、私はあいつのことを疑い始めたんだ。犯人以外にこんなこと言う奴いないって思った」

前川「そんなこと言う奴は犯人か」

女子A「もしくは常に頭の中がそういう妄想でいっぱいのアホか」

堀北「もしくは自分自身がノーパンだったことに気づいたとか?」

女子A「そうじゃないだろ」

    堀北はわざとらしく空咳をして、

堀北「もしくは事件のことを知っている関係者、ですね」

女子A「関係か~だったら今日私のパンツが盗まれたことと、ピザの注文も、無関係のようでいるけど繋がりがあるのかねえ?」

レイナ「とりあえず生活指導室覗きに行く?」


□生活指導室(昼)

    革張りの黒いソファーは二つ。片方に長谷田、もう一方に美月。

美月「お前が何をしたかということを、まあ大体わかってはいるんだけれど、話せ」

    傲岸に言い放つ美月。

    長谷田は俯きがちにぽつぽつと話し出す。

長谷田「四時間目の授業が始まる前に、ピザの注文を取りました。昼休みが始まって五分後くらいの時刻に配達してもらえるよう指定して」

美月「注文をした時は、誰の名前を使ったんだ?」

長谷田「こ、校長です」

美月「ふざけた野郎だな」

    そう吐き捨てながら、美月は紙にペンを走らせる。

美月「おう長谷田、この際だからはっきり言ってやる。あたしゃあ前々からずっと目をつけていたんだよお前に。いつか何かやらかすんじゃないかってなあ。女の勘ってやつかな? 私の中のクズセンサーがびんびん反応していたんだよ。本当よく当たるわ私のにらんだ通りだ。ずっとこういう事件を起こそうと思っていたんだろ? 用意周到に計画していたんだろ? お前みたいな危険人物が学校にいると他の生徒にも迷惑だよ、マジでさあ。どうにか入学試験で篩い落とせなかったのかねえ。人事は何を考えてるんだ! って、学校に人事部なんてねえか、へへへ」

    美月は意地汚く唇を歪めて笑う。

美月「そんで、続きは?」

長谷田「四時間目の授業が終わって、すぐに校長室のドアを監視できる位置まで移動しました。僕は校長が出て行くのを確認して、校長室へと忍び込み、真っ先に金庫のロックを外しにかかりました」

美月「おい、お前! 反省してるのか」

長谷田「へ?」

    長谷田はわけがわからず美月を見る。

美月「腑抜けた返事してんじゃねえぞ! お前、反省してねえだろ? まるで自分の武勇伝でもひけらかす調子でよお! どうです鮮やかな手口でしょと言わんばかりによお!」

長谷田「そ、そんなつもりありませんよ!」

美月「いいや、私にはそう見えたんだ。そう見えたってことはその通りだってことだ。そうだろ?」

長谷田「なんて自分勝手なことを言うんですか!」

美月「ふん。そんで? ロックは解除できたのか?」

長谷田「できました」

    長谷田は限りなく感情を抑えて言ってみたつもりだったが、やはり美月は再び怒鳴る。

美月「あ~してんな? 自慢してんな? 短時間で金庫を開けたことを誇りに思ってるよなあ? 達成感感じてるよなあ? クズがクズみたいなことやって一人で喜んでやがるのかよ! くだらねえ!」

まるで取り付く島もない美月相手に、長谷田は苦い顔をする。

美月「けどこの話の面白い話はここからだ。さあ、続きをどうぞ!」

    すっと手で促す。

長谷田「金庫を開けたら」

美月「開けたら?」

長谷田「その中には」

美月「おー?」

長谷田「……空っぽでした」

美月「綺麗にオチたー! あーっはっはっは、なんて間抜けなんだよお前は!」

    笑いすぎて涙まで流す美月の姿は狂気に満ちていた。

    長谷田はハイライトが消えたような死んだ瞳で、

長谷田MONO「俺が全てを打ち明けたところで、美月先生には信じてもらえないよ。それにしてもこんないかれた人だとは思わなかった」

    一生分ほどに笑い転げた美月は、ふと真顔になる。そして足を組み替えながら、

美月「どうして金庫なんか」

長谷田「はい?」

    美月は再度問いかける。さっきまでとは違う真面目な口調。

美月「あんなところにお金でも入ってると思ったの? 思わないわよねえ、普通。まあ君が普通じゃない可能性もあるんだけど、普通だという前提で聞かせてもらうわ」

長谷田「……いいえ」

美月「じゃあ何? 君が盗みたかったものは?」

長谷田「違います。盗みたかったんじゃありません」

    長谷田は少し言いよどむ。俯いて、不安そうに唇を震わせる。

長谷田「取り返したかったんです」

    長谷田は泣きそうになりながら続ける。

長谷田「あれは大切なクラスメイトのものなんです。それを校長が盗んだ。金庫の中に後生大事に隠していた」

美月「校長が? 何を、盗んだの?」

    ス〇ールウォーズの有名なあの悔しがる台詞のように、

長谷田「パンツです!」

    しーんと静寂が流れる。美月は戸惑いがちに、

美月「ぱ、パンツ? 君のパンツ?」

長谷田「同じクラスの、戸泉レイナのパンツです! 他の奴ならまだしも、俺にはそれが許せなかった! 俺の、大切な、大好きな、レイナのパンツをあんな奴が盗みやがった!」

    その時、ドアに何か重いものがぶつかる音がした。

美月「女子生徒のパンツを? ぱ、ぱ、パンツを?」

長谷田「俺、今年同じクラスになった時からずっと見てたんです。レイナを。他の誰よりもレイナを、他の誰よりも俺が。だから些細な変化にもすぐに気づきました。気丈に振る舞ってるけど、あいつは傷ついていた。だってそりゃそうでしょうよ! 年頃の女の子が自分のパンツなんて盗まれたら、いくらレイナだって、そりゃ、悲しくてムカついて悔しくて心の中ぐっちゃぐちゃになりますよ!」

美月「お、おう。随分大層な妄想なこって」

長谷田「……やはり信じてもらえないですか」

美月「う~ん」

    美月は難しい顔をして腕を組む。

美月「誰も信じねえよ、そんなこと。バカじゃねえのか?」

長谷田「そうですよね。信じてもらえませんよね。不都合なことも、言いたくないことも、全て言わなきゃ、だめっすね」

美月「なんだ? まだあるのか? いいぜ、聞いてやる。嘘であろうとなんだろうと、お前と話すのは退屈じゃあねえしな」

    長谷田は意外そうに美月を見上げる。

長谷田「僕は、校長がパンツを盗む、まさにその現場を目撃したんですよ。つまり女子更衣室ですね」

美月「……ん?」

    と、目を丸くする美月。

美月「つまりって?」

長谷田「だから、僕も校長と同じく、いたんですよ」

美月「どこに?」

長谷田「だから! その、女子更衣室にです。何回も言わせないでください」

    長谷田は居たたまれない様子で視線を逸らす。

    美月はやはり飲み込めていないように、

美月「えーと……女子更衣室が~」

    と言いかけて後に続く適当な言葉を探ろうとする美月。

美月「すまん。上手く理解ができないんだが」

    長谷田はやけくそ気味に、

長谷田「だから! 俺が女子更衣室に忍びこんだら、先客がいて、そいつが校長だったんだよ!」

美月「なるほど、そういうことか……お前、変態だったんだな?」

長谷田「今それはいいじゃないですか! 僕はこの目で校長の犯行を見たんですよ」

美月「……校長がねえ」

    吟味するように呟く。

長谷田「それから僕は校長の部下になったフリをしてて、金庫に保管されたパンツをいつか取り返そうと狙っていたんです。そして今日! 周到な計画を立てて、いざ実行に移してみたら……」

    長谷田の台詞の続きを、美月が受け継ぐ。

美月「金庫の中は空だった、か」

    しかし美月にとってこの話は半信半疑らしく、うーんと唸る。

    数秒が経ち、一つ質問をする。

美月「お前は、戸泉レイナが好きなのか?」

長谷田「はい」

美月「愛しているのか?」

    長谷田はここぞとばかりに勇ましく、はっきりと、

長谷田「愛が何なのかは分かりません! だけど好きです! 大好きです!」

    その目からはもう涙は消えていた。

    その時、ドアになにか重たい物がぶつかる音がした。

    美月は敏感に人の気配を察知して、ドアの向こうへと呼ばわる。

美月「おい! 誰かいるのか?」

    すると、ドアがさっと開いて、おずおずと入ってきたのは堀北と女子A。

堀北「今の長谷田君の話、全て聞かせてもらいました」

女子A「事の真偽は判別しかねるけど、事件があったことは本当っすよ」

    そう話しながら、堀北は美月の、女子Aは長谷田の隣へ腰掛けた。

長谷田「お、お前ら知ってたのか?」

    とびっくりして言う長谷田を見つめながら、堀北は「はい」と認める。

堀北「けど勘違いしていますよ、長谷田君」

女子A「堀北、それ、言っちゃうの?」

堀北「パンツを盗まれたのは、実は私なんですよ」

    からかうような笑みを浮かべて、ふっきれたのか、平気でそんなことを言う堀北。

女子A「ちなみにさっき私のパンツも盗まれた。ほんのついさっき」

    対照的に女子Aは憮然としている。

長谷田「レイナじゃあ、なかったのか?」

レイナ「そうだよ」

    レイナは、生徒指導室の入り口のとこに突っ立って、踏み込もうとしてこない。

    今にも逃げ出したそうな表情。

レイナ「お前、早とちりだって。あの日、私のこと、ノーパンだと、そう思ってた?」

長谷田「……」

    長谷田は呆然として、何も言わない。その目はレイナへと釘付けにされている。    

レイナ「色々頑張ってたみたいだけど、私、パンツ、盗まれて……ないから」

    長谷田はわなわなと震えて、何も言わない。

長谷田「……」

    レイナはにかっと笑って、嬉しさと恥じらいに燃え上がる乙女の面持ちで、

レイナ「ありがと。さっきの告白、ぜーんぶ聞いてたから! 私は信じる、長谷田のこと! それじゃ、私行かなきゃ!」

    と快活に言い残して走って行った。

長谷田「き、聞かれてたのかぁあああ!」

    今さらのように叫ぶ長谷田。

美月「ちょっと待て、あいつどこに行くんだ?」

    堀北は全てを知り尽くした全能の女神のような微笑みを浮かべて、

堀北「戦いに、ですよ」


    その頃、ドアの外では、前川が一人泣いていた。

前川「告白もしてないのに、フラれちゃった……」

    


この劇何分あるんだよ……

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