僕らは死ぬようにできている
何度目か、何度目かの声で目が覚める。
僕らは気を抜くと死んでしまうような気がしている。
だから何かに急き立てられるように、溢れていく水を掬っては戻すように、同じことを繰り返している。
そびえ立つ壁の向こうには海があるという。
僕らには確かめる術も無く、誰にも出会わないままいつ崩壊するともしれないその壁に寄り掛かっている。
信仰者に集る蝿が、幼児の脊髄を貫く弾丸が、あの夏の日見つけた蟻の巣が、いつか見た雨の境界線が同時に、並行に存在し、僕らは時限爆弾を仕掛けられた神の子供のように、いつか死ぬようにできている。
平等なものを目指し、公平なものを信じ、生まれくるものに心動かされ、去りゆくものに突き動かされ、あらゆる人、あらゆる事象の皿になり、落ちていく羽根の一枚の、鼓動に目を凝らして。
歩道を駆ける人の風が、売人の夫婦の今夜のスープが、彼方からの手紙が、回転する真球が、鉄棒の焼けた匂いが、同時に、並行に存在し。
僕らはいつか死ぬようにできている。
僕らはいずれ、死ぬようにできているから。
何度目か、何度目かの声で目が覚める。