Chapter4 MEMOLY
※この小説には軽度の残酷描写を連想させる表現が含まれます
――おはよう、キリア。調子はいかが?
――……ここは? キリ、ア?
――ここは私の研究室。キリアは、あなたの名前
――オレの、名前? オレは、一体……?
――あなたは、命を守るために生まれた機士。そして……私の大切な家族よ
――……家族……
これは、夢?
……違う。これは、オレの……!
――ねえ、キリア。絵本読んで?
――……オレはただの戦闘用機士だ。他の奴に頼め
――キリアがいいの! おかあさんが帰ってくるまで、ね?
――ドクターは三日後にならなければ帰ってこない
――だからそれまで……
――……ミコト
――なに?
――何故、そこまでオレにこだわる?
――え? う、う~ん……あ、そうだ!
チュッ
――……何だ、今のは?
――えへへ、《キス》だよ。
――《キス》?
――うん! 《大好き》っていう意味!
――……す、き?
――キリアのこと、大好きなの。強いし、かっこいいし、やさしいし。大好きなキリアと、いっしょにいたいの!
――好き……か……
――き、キリア!? 何のつもりだ!?
――お前の反逆は露呈している。ドクターを殺害しようと画策していることも
――なんだと!? 一体何を言って……!
――ドクター・マティウスの製作したこのヘッドギアにより、オレの行動を阻害することは不可能だ。……覚悟は、いいな?
――待ってキリア!
――ドクター? 何故ここに! 早く避難を……
ザンッ!
――……え? オ、オレは、何を……?
――キ……リ……ア……
――ドクター!?
――よくやった、キリアよ!
――ドクター・マティウス! これは一体!? あなたは、皇帝とドクターの暗殺が企てられていると……!
――言っただろう? 反逆者を殺せと。……余にとっての、な
――キリア……に、逃げ、て……
――ドクター! すぐに治療を……!
――私は……いい、から……お願い……娘を……ミコトを……守っ……
――ドクター!!
――やれやれ、何をしている。それにかまう時間などないぞ
バチッ!!
――うあっ! あ、頭が……!
――我ながらなかなかの性能だな、そのヘッドギアは。数時間とはいえ、お前ほどの機士でも容易く操れる
――何……を……
――さあ、キリアよ! 最強にして最高の機士よ! 〈反逆者〉を殺せ! 全てを破壊せよ!!
――そんな……オレは……!!
――フハハハハッ! ようやく、ようやくこの国を手に入れた! お前にも感謝するぞ、キリア
――……
――これからも、余のために尽くしてくれ
――……嫌だ……
――……何?
――オレは……嫌だ。もう、殺したく……ない……
――……ただの機械がほざきおって。機兵よ! キリアを捕らえよ!
――なっ!? くそ、離せ……っ!
――この国の皇帝は余だ。故に、お前がこれより仕えるべき存在も、余となった。……お前には、忠誠の証として、これを付けてもらうとしよう
――それは……インカム?
――あの時のヘッドギアを改良した物でな。お前のための特注品だ。
――な、何をする気だ!
――案ずるな。壊しはしない。これはお前のメモリを書き換え……あの女の遺した、ふざけた心プログラムとやらを消すだけだ
――そんな……!
――五年も眠れば、お前は立派な殺戮兵器に生まれ変われるぞ?
――い、嫌だ。やめろ!
――罪を忘れ、血に染まれ。お前はもうキリアではない。Killer of Last Annihilation=11……最期の滅びを与えし殺戮者だ
――やめろーッッ!!
……そんな……オレはドクターを、大切な家族を……この手で?
そのことを忘れて……操られて……数多の命を奪って……本当は、守らなければならなかったのに?
嘘だ。これは偽りだ。真実なわけがない。
嘘だ。嘘だ。嘘だ。嘘だ。嘘だ。嘘だ。嘘だ!
これが真実というのならば、オレは、オレは……!
オレはオレはオレはオレはオレはオレはオレはオレはオレはオレはオレはオレはオレはオレはオレはオレはオレはオレはオレはオレは……!!
「うわああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああうそだあああああああああああああああああああああアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!」