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隣のお姉さんはデイトレーダー

<隣のお姉さんはデイトレーダー>


ある日、眠くて高校をサボった。

理由は簡単だ、徹夜でゲームをしてしまったのだ。


軽い気持ちでさらに徹夜でゲームをして三日休んだ。

そのあと、気持ちが乗らずに学校にいけなくなった。


すると親と顔を合わすと説教されるから、顔を合わせたくなくて部屋からも出なくなる。

そしていつの間にか引き篭もりの完成だ。


それが3ヶ月前。

軽い気持ちの連続休みが、ここまで壊滅的な結果になると知っていたら、あのとき学校に行っただろうな。

今では親も、妙に優しい話し方でドアの外から食事時に声をかけてくるくらいしか接してこない。


だが、また妙な運命の動きがあた。

うちは一戸建ての建売住宅だったのだが、隣は今まで空き家だった。

さらに僕の部屋が二階だったこともあり、今までは気兼ねなく窓を開けて暮らせていたのだ。


その隣が今日は妙にうるさい。


あたらしい住人が来たのだろうか。

いつもの癖でカーテンをあける。


すると、ちょうど窓を開けていた隣の家の住人と目があってしまった。

お隣の窓までの距離は1メートル無い。


その距離にある窓際に座っていた、髪が長い二十代前半くらいの女性と目が合ったのだ。

その女性は、ちょっとヤボったい黒縁メガネをしている。

目が合った理由は、おそらく急に隣の家のカーテンが空いたで驚いてコッチを見たのだろう。

現に表情がびっくりしている。


でもすぐに優しそうな顔で微笑んでくれた。

「初めまして。今日から隣に越してきました叶結衣です。たぶんズットこの部屋に居ますから、気が向いたら声をかけてくださいね。」


いきなりの事で驚いてしまった。

「あ、僕は矢作健二といいます。よろしくお願いします。」

挨拶の仕方とかわからないので、直角に頭を下げて挨拶をしてらカーテンを閉めた。


びっくりした。

しかも良く見たら、僕は汚いスウェット姿。

しかも窓から見える僕の部屋は、めちゃくちゃ汚い。

恥ずかしい・・・・。


もう、一生この窓のカーテンは開けまいと心に誓った。

誓ったが、一応部屋の掃除を始めてみた。



ーーーーー


となりに叶さんが越してきてから一週間がたつ。

部屋の掃除が大体ひと段落着いた。


僕の部屋はエアコンがない。

だから夏に窓を開けたい。

だからしょうがなく掃除をしたのだ。

決して、あわよくば隣のお姉さんと仲良くなるチャンスとかを狙っているわけではない。


だが何時にカーテンを開けるかが問題だ。

平日の昼間に家にいることはバレたくない。

とはいえ、夜中過ぎる時間に窓を開けても、なんか微妙。


ひとつ気になるのは、平日の昼間なのにお隣さんの部屋からは、いつも音楽が聞こえてくるという事だ。

ずっと昼間にいるなんて引き篭もりなのだろうか?


だとしたら・・・・

嬉しい。


じつは引き篭もりであることは、ちょっとコンプレックスになってきている。

それを隠さないで話が出来る人ができたら嬉しいのだが。


僕は思い切って月曜日のお昼なのに窓を開けてみた。

もちろん洗濯したばかりの服を着て。


すると、叶さんは窓をあけて窓際に座っていた。

スグに僕に気づいて頭を下げてくれる。

「あ、こんにちわ。」


「こ、こんにちわ。」


いけない、この後の事を考えていなかったな。

すると、叶さんが窓から身を乗り出してきた。


「いきなり馴れ馴れしいかもしれないけど、健二君て呼んでも良い?私の事も結衣って呼んで欲しいんだけど良い?」

「はい、好きに呼んでもらえれば・・・。」


いかん、3ヶ月程度の引き篭もりなのに、もうコミュ障みたいになってる。


でも叶さんは気にせずと微笑んでくれた。

「健二君のお母さんから聞いたんだけど、高校に行っていないんだって?」


おい、お母さん!

いきなり世間話で息子の引き篭もりをネタにするなよ!


「えっと、はい・・・・。」

恥ずかしいです。今ココから飛び降りたい。

まあ二階から飛び降りても着地できちゃいそうだけど。


すると、叶さん・・・いや結衣さんはズリっとさらに身を乗り出す。

「もしも健二君さえ良ければなんだけど、遠慮なく窓から声をかけて来てね。私は全然他人と会わない生活をしているから人恋しくて。」


「結衣さんも引き篭もりなんですか?。」

「まあ、そんなもんかな。基本部屋から出ないから。」


そっか。なんか急に友達になれそうな気がしてきた。

「ねえねえ、健二君はゲームとか好きなんだって?」


結衣さんグイグイくるな。

っていうか、お母さんは僕の個人情報を流しすぎではないだろうか。


「ええ、一日中やってます。」

「そっか。それってネット回線とパソコン以外に何かいるの?」

「ゲームによりますよ。最近のはWEBからダウンロードして、必要に応じてカードで課金するのが多いですね。」

「そっか。」


しばし沈黙。

何かを考えている様子の結衣さん。


「もしも嫌じゃなかったら、コッチに来て教えてもらえないかな。健二君が部屋から出るのも嫌なタイプの人で無ければだけど。」


驚いた。

いきなり女性の部屋に呼ばれた。

なんだろう、このグイグイくる女性は。


「僕は学校に行きたくないだけなんで、コンビニはもちろん、秋葉原くらいまでなら行きますよ。結衣さんさえ良ければ僕はいきますけど。」


すると、お世辞抜きで嬉しそうな顔をしてくれた。

「ホントに!それは助かるわ。じゃあ3時ころ来てもらえる?それと図々しくて悪いんだけど、できたらコンビニでお煎餅とウーロン茶とかを買って来て欲しいんだけどお願いしても良い?」

「良いですよ、わかりました。その程度は気軽に言って下さい。」


「おお、それはすっごく有りがたいよ。ありがとう。あとでお金はらうね。」

「わかりました。」

「ありがとう。」


そう言って微笑む結衣さん。

そこで、僕の部屋の外からお母さんが「お昼ご飯だよ!」と叫ぶ声が聞こえた。

その声は結衣さんにも聞けこえたみたいで笑われてしまった。


「お母さんが呼んでるよ。それじゃあ、またあとでね」

「はい、それでは」


僕はカーテンを閉めて1階に降りた。


リビングに入ると、お母さんはすでにお昼を食べながらテレビを見ている。

お母さんは、典型的なオカンという感じの人だ。


テーブルには僕の分のが置いてあった。

冷やし中華だ。

テーブルに座って無言で食べだすと、珍しく僕からお母さんに話しかけてみた。

「そういえば、お隣さんに僕が引き篭もりだって勝手に話したんだって?ほんとマジでそういうのやめろよ。」


お母さんは表情をかえずに返事をしてくる。

「本当のことでしょ、文句いうなら自分からお隣に挨拶行けばよかったでしょ。」


そこまで言ってからお母さんは不思議そうな表情をする。

「あれ?あんた、なんでその話を知ってるんだい?」

「窓開けたら、隣のお姉さんが教えてくれたんだよ。」


すると神妙そうな表情になった。

「そうなのね、着替えを覗いたりするんじゃないよ。」

「覗かないよ!」

「ならいいけどね。話をしたならわかったと思うけど、あんたもお隣のお嬢さんのパシリくらいはしてあげなよ。」


なにが『話したならわかったと思う』なんだろう。そしてピンときた。

「なんかコンビニで買い物頼まれたけど、もしかしてお母さんが勝手に『息子に頼んでね』とか言ったのか?。」


「あたりまえだろ。お前は学校に言ってない以外は元気なんだから、そのくらいは役に立ちな。」


やっぱり。

まあ、お姉さんに頼まれたら勿論パシりくらいやるけど。

僕はお昼を食べ終わったら、お風呂に入って、コンビニのハシゴをして帰ってくる。

まだ2時。


そわそわした。

3時に約束したのに、なんか今カーテンを開けるのは恥ずかしい。

いつもはすぐに過ぎる時間が、今日はなかなか進まない。


2時45分。

もういいか。

都合悪かったら出直せば良いよね。


そう思って出発した。

お隣さんのベルを鳴らした。


すこし待つと、上品な感じの女性が出てきた。

年齢はお母さんよりも少し上くらいだろうか。


「はい、どちらさまでしょうか?」

「あの、となりの矢作健二です。結衣さんと3時に約束があったもので・・・。」


そこまで言うとドアを大きく開いて招いてくれた。

「あ、健二君ね、聞いてるわ。どうぞ入ってください。」

「し、失礼します。」


たぶん結衣さんのお母さんだと思うけど、うちのお母さんとはえらい違いな上品さだ。

一緒に二階に上がると、ノックをして結衣さんお部屋のドアを開けた。


「健二君が来てくれましたよ。」

あけられたドアから覗き込むと、ベッドの上にぺったりと座る結衣さんと、僕の部屋からは死角になる場所に置かれた車椅子が見えた。


ちょっと入るのに躊躇していると、スウェットの上下を着た結衣さんが手招きをする。

「いらっしゃい。わざわざありがとう。」

それで理解した。


「もしかして歩けないんですか?」

すると、結衣さんのお母さんは僕を部屋に押し込む。


「そうなの。この子は事故で歩けなくなっちゃてね。わざわざコンビニに行ってくれてありがとう。」


部屋に押し込まれたけど、僕が居所なく立っていると、結衣さんはベッドの隣の場所を指差す。

「まあ座って。すぐにお母さんがコップ持ってくると思うから。ちょっと待ってようか。」


「はい。」


綺麗に片付いた部屋だけど、ジロジロ見るのも悪いと思い、パソコンの画面に目を移す。

すると、そこには棒グラフみたいな表が見えた。


僕の視線に気づいたのか、結衣さんはパソコンを指差して教えてくれた。

「この画面が珍しい?ちょっとまってね。今日の取引を急いで終わらせちゃうから。」


そういうと、ぱっぱと画面に数字を記入し操作を終わらせる。

「よし、今日は3万円の儲けが出たよ。やったね。」


「え、今の操作でお金が儲かったんですか?」


すると結衣さんはイタズラっぽく微笑んだ。

「私はデイトレーダーなの。」

「デイトレーダー?」

「そう、株の取引をしてお金を稼ぐ人の事だよ。家から出ないで出来るお仕事です。」


この日初めてデイトレーダーという仕事を知った。

「家から出ないで出来る仕事ですか・・・良いなあ。」


そこで結衣さんのお母さんがコップを持ってきてくれたので、この話は終わらせて、オンラインゲームの説明を始めた。


本当はデイトレーダーについて聞きたかったけど、この日は聞くチャンスが無かった。

またコンビニのお買い物パシリをして聞きに来なくてはと思った。

株取引のの知識を蓄えられるような作品に出来たら良いなと思います。

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