第8話 ケン、念願のアレを手に入れる
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<第8話>
「水も大量に手に入ったしレベルも上がったし。いい森だな、ここは」
熊を倒した後も、魔物を倒しながら進んで来たケンは、レベルが6に上がっていた。
ちなみにLV6で覚えた新しいスキルは、
10.ライト……任意の場所に明かりを灯す。明るさは任意で調整できる。消費MP1/1h
というものだった。
「絶対どこかで神様たち、オレのこと見てるよな。山掘るのに必須じゃん、明かり」
『まあ、神様ですからね』
まさかライブ配信で見られているとは思っていないケンであった。
さて、森の奥で、綺麗な水が流れこむ小さな滝壺を発見したケンはご満悦であった。
そこで捕まえた魚を焼いて食べ、タンパク質補給もすませて元気いっぱいだ。
「あー、塩とか醤油とか味噌とか、何でもいいから調味料が欲しいなあ」
『塩分は必須ですからね。山から岩塩が発見できることを祈りましょう』
「岩塩のためなら、山1つ更地にしても構わない、オレ」
実に物騒なことを宣うケンであった。
だが、塩は確かに必須なのである。
「最悪、動物の血だな」
そんな想像はしたくなかったが、サバイバル的にはあり得る話だ。
滝壺から水の流れに沿って山を目指していくと、だんだんとゴツゴツとした大岩が増えてくる。
どうやら、山にたどり着いたらしい。
「とりあえず試してみるか」
ロッククライミングが出来ないわけではないが、別にしたくもないケンは、自分が登りやすいようにブレイクで階段状の段差をどんどんと山肌に作っていく。
後世、これを見た人間がどんな感想を持つかは誰にもわからない。
「基本的に石材だな。鉄とか、その他の鉱物が混ざってたら教えてくれよ」
『了解です、ご主人様』
大量のMPを消費して、山をどんどんと削り取って、掘りまくるケン。
自然破壊だが、そんなことを気にするようなケンではない。
「悲しいけどこれ、素材集めなのよね!」
ひとまずMP200分の自然破壊をしたところで休憩に入るケン。
真っ平らになった岩肌に、座布団をコンストラクトして座り、ごくごくと水を飲む。
「で、どうだ、リンゴ?」
『さすがにこの程度削っただけでは石ばかりですね。むしろ下方向に掘りますか』
「おうよ。ガンガン掘るぜ……とはいっても、MPにも限りがあるからな」
『最悪、この辺りで夜明かしですか?』
「うーん、確かに拠点まで戻るのも面倒だな……。そうするか」
善は急げとばかりに、石材と木材を組み合わせて簡易拠点をいとも簡単に作り上げてしまう。
「いずれ、拠点と拠点を結ぶようなワープゲートとか作れないかな」
『魔法の存在する世界ですから、可能かもしれませんね』
「そうだな。イマジネーション!」
今度は下方向に向かって階段状に掘り進んでいくケン。
1mの段差を作ってしまうと上り下りがものすごく大変になるので、クリエイトで階段ブロックを作っては設置して下りていくのだ。
『あ、止まってください。念願のアレですよ』
「まさか!」
魔法の明かりに照らし出されていたのは、濃いピンク色をした塊だった。
確認してみたが、問題なく岩塩のようだ。
「ラッキーだぜ。しかも二重の意味でだ」
『……ああ、なるほど。さすがご主人様です』
こういった濃いピンク色の岩塩には、硫黄分や鉄分が多く含まれている。
要するに、この岩塩ブロックをブレイクすることによって、ナトリウムと鉄と硫黄を手に入れることができるのである。
「ま、黒色火薬が必要になるかどうかはわからんがなあ」
『何せ魔法がありますからね』
「物理が魔法より弱いとは限らないしな。硝石も何処かに埋まってるだろ」
銃と大砲で魔法世界を無双することだって不可能ではあるまい。
火薬と弾さえあれば、MPを気にすることなく撃てる。
そして、いくらここが異世界でも、魔法を誰でも使えるとは限らない。
「とりあえず、やれるだけやっとくか」
安全マージンを残して、ひたすら岩塩をブレイクしまくるケンであった。
「うめえええええっ!!」
地上の簡易拠点に戻ってくると、火を焚いて、鳥肉を焼き塩を振ってかぶりつくケン。
塩味のあまりの旨さに口からビームを出さん勢いである。
「いやあ、塩って死ぬほど大事だな」
『無いと生きていけませんからねえ』
「ところで、リンゴのGPS機能は使えたりしないのか?」
『さすがに無理のようですね。衛星が浮かんでいるとは思えませんし』
「そか。いずれ神様に頼んでみるか」
さすがの神様も人工衛星は打ち上げまい。
ただ、神様パワー的な何かで同じような機能を実装してくれる可能性はあるかもしれない。
「さて、調味料も鉄も手に入れた。スキルで明かりを点けることもできる。今んとこ順風満帆だな」
『そうですね。まあ、大事業を任された人員が、現場入りして即死亡するような仕事は明らかに終わっていると言えますからね』
「そうだな。ま、良くある話と言えばよくある話だ」
それを考えれば、色々と便宜を図ってもらっての現場入りだ。
自分は恵まれているのだろうとケンは考えていた。
「これで肉問題は解決だな。あとは、炭水化物だな」
『でんぷん質を採取できる植物は手に入れてありますからね』
「ああ。どこかで麦とジャガイモ。出来れば米が手に入るといいな」
やはり異世界物の食事問題といえば米だろう。
「ひとまず寝るか。クリエイト」
簡易拠点の周囲をぐるりと石壁で囲ってしまう。
これでそう簡単には侵入できないだろうから、安心して寝ることができる。
『お休みなさいませ、ご主人様』
「おう。明日も可能な限り採掘してから戻ろう」
『了解です』
「じゃ、お休み」
そういうと、布団をかぶってすぐに規則正しい寝息が聞こえ始める。
某ダメ小学生も真っ青の速度である。
『無神経というか剛胆というか。まあ、睡眠は重要ですからね』
リンゴは少し呆れ気味だった。
だが、美味い飯と適度な労働、そしてよく寝ること。
その3つが揃えば、それなりに快適な毎日が送れるようであるのは良い傾向であった。
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