表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
8/22

第7話 ケン、初めての近接戦闘

よろしくお願いします。

<第7話>



「いよいよお出ましか……」


 森に入った以上はこうなることは予想済みだ。

 こっそりとカメラで写してステータスを確認する。


「ワイルドドッグ。要するに野犬だな」

『そうですね。昨日の犬と変わりません』

「犬しか見てねえけど、よくある狼とかウサギとか出てこねえのか?」

『倒しやすそうな敵の方がいいじゃないですか』

「それもそうか。群れでいる様子はあるか?」

『それはなさそうです。これは僥倖』

「よし、やるか」


 トランキリティでまずは心を落ち着かせる。

 棒を軽く握って、訓練を思い出す。


 やれる。

 やれるはず。


 そう言い聞かせて、魔物の気を引くために軽く小石を投げ、離れたところで音を立てる。


 魔物の注意がそちらへ向いた瞬間、全速力でダッシュ。

 慌てて振り向いた魔物の鼻っ面に、なぎ払うようにして全力で棒を叩きつける。


「ギャウン!!」


 悲鳴を上げる魔物。

 骨が砕ける感覚が棒を通して手に伝わってくる。


「え?」


 そしてそのまま、魔物の頭部が弾け飛んだ。

 赤黒い血液やら頭蓋骨の中身が飛び散った。


 グロい。


「トランキリティ!」


 スキルを使うと、今にも吐きそうだった気分がすっと落ち着いていく。

 スキル様々である。


「……いや、まさか吹き飛ぶとは」

『ステータスのお陰ですね。この程度の魔物なら恐れることはないと』

「それがわかったのはありがたいなあ」


 一撃で倒せるなら、危険度は一気に下がる。


「さて、魔物の肉は食えるかな?」


 ステータスをゆっくり確認すると、美味くはないが食用になるそうな。

 そして、死んだ魔物はブレイクできるらしい。


「働け、オレのイマジネーション!!」


 無駄に気合を入れるケン。


「おお、やっぱり!」


 管理領域には、魔物一体から「毛皮、肉、骨、モツ」と4つの素材が収納されていたのである。


 ブレイク、あまりにもフレキシブル過ぎるスキルであった。

 神様も驚いているに違いない。


「うむ。やはり魔法とは想像力だな!」

『神様もここまで万能なスキルだとは思ってなかったでしょうねー……』


 何かを諦めた調子でリンゴが相槌を打ったのだった。




「いやー、ステータス様々ですなあ。チートその1が鑑定スキルなのがよく分かるぜ」

『異世界ですからね。その世界の情報を知る手段は必須ですね』

「ありがたい話だ」


 神からもらったスキルの他にも、称号「異世界転移者」に含まれる通訳と文字の読み書きなど、様々な特典がケンには付与されているのだ。

 実は。


「よし。慢心するわけじゃないが、もう少しこの森を探索するとしようか」

『了解です』


 ケンは森を歩き回った。


 野鳥を見つけては投石で一撃。

 野犬の群れに囲まれては棒の一撃でまとめて吹き飛ばし。

 猪の魔物に突進されては落とし穴に落として倒し。


 気がつけばLVが4に上がっていた。


「うむ。気がついたらまた強くなっているな」

『そのようですね』


 HPは400でMPは700だ。

 敏捷力と精神力が70になり、残り4つは40である。


『この世界で言いますと、ざっくり20倍程度の性能差ですね……』

「それは重畳」


 その時、メールの着信を知らせる音が。


「また来た」

『アレですね』


 予想通り神様からのメールだった。


『順調にレベルアップしているようで良かったぞい! また新しくスキルが追加されているから確認しておくんじゃぞ? というか、ブレイクで解体とか驚いたわい。やるな、ケン! by神』


 相変わらず軽い内容のメールだ。


「どれどれ。ステータス!」


09.高速回復……HPとMPの回復速度が大幅に上昇する。


 新しいスキルは、地味だがとても便利なスキルだった。

 検証した結果、1回復するのにかかる時間が、5分から2分30秒へと半分に短縮されていた。


「ありがたい話だぜ。また探索がはかどるな」

『ですね。奥へ進んだらもっと強い魔物が出てくるかもしれませんし、レベルアップは僥倖です』

「犬、犬の群れ、猪と来たから、次は熊かな」

『巨大ヘビとか昆虫型の線も捨てがたいですね』


 そんな軽口を叩きながら、様々な素材をブレイクしまくるケン。

 特に石や木材、繊維の原料はいくらあっても困らないため、積極的に貯め込んでいるのだ。


「噂をすれば、だな」

『ですね』


 素早く写真に収めるとステータスを確認する。


『ステータス的には、ご主人様が圧勝ですね』

「らしいな。ここらで一丁、気張るとしますかねえ」

『危険と判断したら、即落とし穴っちゃってくださいね?』

「当たり前だ。死にたくねえ」


 ここまでの魔物との戦いで、だいぶ頭と体が慣れて来たようで、強敵と直接対決する気になったようだ。

 空を飛ぶ魔物ではない分、いざとなったら穴に落とせばいいと思えるのも一因か。


 クマの魔物は、人間など敵ではないとたかをくくっているのだろう、悠然とした足取りだ。

 確かに普通の人間なら、熊のスピードとパワーに叶うはずがない。

 だが、ケンはすでに普通の人間ではない。


「先手必勝!!」


 拳大の意思を取り出すと、大きく振りかぶって思いっきり投げる。


 ボッという音を立てて、猛スピードで飛んでいく石。

 さすがに音速には達していないようだが。


「グアアアアアッ!!」


 石弾は、狙いたがわず熊の右肘のあたりに命中し、前腕分を引きちぎった。

 痛みか怒りか、雄叫びをあげて熊がケンに向かって突進してくる。


「見える! 私にも見えるぞ!……って1度は言ってみたかったぜ!」


 有名な赤い人のセリフを叫んでご満悦のケン。

 まあ、一般人の3倍以上の速度は軽く出ているのだが。


 冗談はさておき、ケンには熊の攻撃がスローに見えていた。

 レベルは魔物の方が上なのだが、敏捷度ではケンの方が倍近いのだ。

 体力と生命力で若干負けているくらいか。


「当たらなければどうということはない!」


 ひらりひらりと攻撃をかわしながら棒を叩きつけていくケン。


「ダメージ入ってんのかな、これ?」

『微量ですがHPは減っています。しょせんひのきの棒ですから』

「ま、チマチマ削るか!」


 ローキックを入れ続ける空手家の如く、足を重点的に攻めるケン。


『流血によるスリップダメージも入っているようですね』

「お、先手必勝にも意味があったな……ぬあ!?」


 思い切り叩きつけた棒が折れてしまったことに驚くケンだったが、慌てず騒がずブレイク&クリエイトで新たな棒を取り出すとまた殴り始める。


 そして、ややしばらくして、ついに熊が倒れた。


「よっしゃあ! 獲ったどー!!」


 棒を天高く突き上げて、勝利の雄叫びを上げるケンであった。


 ちなみにレベルも上がった。

 実は強敵だったクマなのである。




お読みいただきありがとうございます。


ぜひ評価やブックマークなどしていただけますと大変嬉しいです。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ