第5話 ケン、初めての家造りをする
第5話です。よろしくお願いします。
<第5話>
魔物を倒したケンは、初めてのレベルアップを終えてからも廃村の周囲を探索した。
それによって、たくさんの素材を貯めることができたのである。
「レベルアップで全快する仕様で助かったぜ」
HPが200、MPが300と大幅に増えたため、ブレイク回数が一気に増えたからだ。
また、各ステータスも大幅に上昇した為、物を運んだりするのが簡単になったせいもある。
「そろそろ、安全に夜を明かすための家が必要だな」
『拠点づくりですね』
「サンドボックス的には真っ先にやるはずの作業だけどな」
廃村のボロ屋で一晩明かすのは勘弁願いたかったようだ。
「さて、やりますかね」
まずは更地にした場所の地面を必要な広さにブレイクして掘り下げる。
そこに大量にため込んだ石ブロックを積み上げて行く。
窓部分に開けた穴には木製の格子をはめ込み、同じように木製のドアも。
「この際、窓はこれで我慢だな。いずれガラスを作らねば」
『珪砂が必要ですね。大量の水晶があれば好都合ですが』
「石英質の多い砂からでも作るさ」
その後、家の周囲にスタックした土で土壁を巡らせて完成である。
「次はベッドだな」
木製のベッドをまずは作成。
敷布団と掛け布団の袋部分には、廃村の周りの繊維に使える麻のような植物からクリエイトした布を使う。
さすがに羊毛は見つけられなかったので。
中に詰める物は、とりあえず草から干し草をクリエイトして誤魔化す。
「肌触りはイマイチだけど、とりあえず寒さはしのげるかな」
『干し草でも十分暖かそうですけどね』
「いやいや、布団は重要だよ。できれば風呂も欲しいが、今は我慢だな」
日本人の性である。
「さて、問題は……」
『火ですね』
食料に関しては、探索中に食用になりそうな植物を採取してあるため問題ない。
ステータスを確認することで、毒の有無が分かるのは実にありがたかった。
水に関しても、すでに枯れ果てていた井戸を、ブレイクを使って掘り直したらジワジワと湧いてきたのでスタックしておいたのだ。
「水がスタックできるとか超便利」
『クリエイトした瞬間に大変なことになりますけどね』
「そこはほら、樽を作ったから大丈夫よ」
しかもクリエイトした瞬間に飲める水になるからありがたいことこの上ない。
「仕方ない。久しぶりに火おこしといきますか」
『火おこし動画をアップした日が懐かしいですね』
「だな」
クリエイトを駆使して錐揉み式火おこしの道具を作っていくケン。
燃えやすい物はさっきも使ったワラだったり麻縄だったりするわけだが。
「そーれっと!」
ステータスが上昇して肉体能力が上がったおかげで、棒を回転させるのも楽々行えるようだ。
素人さんがやると、握力が持たずに焦げ臭くなるくらいで力尽きることも多いのだ。
あっという間に焦げ臭い匂いと煙が上がり、火種に近づけたワラと麻縄に日が燃え移る。
「よっしゃ。昔取ったなんとやらだな」
『さほど昔でもありませんけどね』
「真面目に突っ込まれてもなー」
『様式美です』
「だぬー」
点いた火を消さないように、徐々に大きくしていく。
最終的にはかまど的な何かに赤々と火が燃えていた。
「後は定期的に薪をくべて、と。とりあえずお湯を沸かすかね」
『そうですね。お湯は大事です。屋外の焚き火はどうしましょう?』
「うーん、人と遭遇するより魔物を呼び寄せる方が怖いか。ブレイクして火種を手に入れとくか」
『火口箱いらずですね』
「便利なもんだよ。さすがは神様のスキルだわ」
高めのステータスと成長チートがあってこそのスキルだが。
この世界の標準的なステータスでは家を立てるなど夢のまた夢だ。
「さて、だいぶ日も暮れてきた。寝るか」
外の土壁の内側で燃えていた焚き火をブレイクすると、あっさりと家に閉じこもるケン。
「体力は温存しておかにゃあ。明日も忙しくなるだろうからな」
『異世界生活初日、お疲れ様でした』
「おう。とりあえず寝る。日が燃え尽きる前に1回起こしてくれ」
『了解しました、ご主人様。これにてチュートリアルを終了します』
「あいよー。おやすみー』
言うが早いか、寝息を立て始めるケン。
いつでもどこでも寝られるのは、ケンの特技の1つであった。
一方その頃。
『なかなかやりおるわい』
『そうでしょう。ケンは凄いのですよ』
二柱の神が、大型スクリーンを眺めながら談笑していた。
初日のまとめ動画である。
『まさかの落とし穴じゃしなあ』
『いきなり現代っ子に武器を持って魔物と戦えは無理ゲーじゃありませんか?』
『いや、ほれ。異世界転移モノには良くあるじゃろ。じゃからあのスキルもレベルアップで取得するようにしておいたんじゃよ?』
『戦う前に渡しておいた方が効果的では?』
『そうかもしれんのう……』
ずずっとお茶をすすりながら画面に目をやる最高神。
どう見ても、ただのおじいちゃんに見えるが。
画面にはベッドで寝るケンと枕元に置かれたリンゴが写っている。
『リンゴは大活躍ですね』
『そうじゃな。話し相手がおるだけでも気分的に楽じゃろう』
『色々と機能も詰め込みましたからね。安心です』
『ところで、あの世界の神……。ほれ、なんじゃったっけ?』
『アドですか。世界管理者のアド』
『安直じゃよな』
『覚えやすくていいですよ?』
アドミニストレータでアドらしい。
『夢で神託とかそういうパターンかの?』
『おそらく。1番古典的な手法ですから』
『朝起きたら神託メールが、とかいいと思うんじゃがのう』
『まあ、無理でしょうね。あの世界的にはオーバーテクノロジー過ぎます』
『仕方ないのう……。さて、ワシらも一旦お開きじゃな』
『そうですね。では、これで。また明日』
『またのー』
二柱の神と大型スクリーンが消え去る。
辺りは静寂に包まれた。
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