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第4話 ケン、初めて戦闘してみる

よろしくお願いします。

<第4話>


「あれが魔物か」


 壁に身を隠しながら外の様子を遠目に伺う。

 だいぶ距離があるので、このままいなくなってくれたらいいのに、とケンは考えていた。


『勿論、そう上手くはいかないんですけどね』

「ですよねー」


 それもまたお約束というものだろう。


「とりあえず、と」

『お任せください』


 リンゴのカメラ機能を限界までの望遠モードで使用して、何とか魔物を写真に収めることに成功するのだった。


「ステータス」


 どうやらあの魔物はブラックハウンドというらしい。

 真っ黒い犬のような見た目である。

 ちなみにLVは3だった。

 HPは30だ。


「なるほど。LV1の村人では勝てそうにないな」

『そうですね。ステータスがほとんど6ですからね。知力と精神力は低いですが』

「ケダモノじゃもの」


 ステータスの差で言えば、ケンの勝ちだろう。数値だけならば。

 魔法を使えば 、木製や石製の武器も作ることは可能だ。


「問題は、現代っ子のオレが、犬と肉弾戦が出来るかどうかだな」

『そうですね。いずれクリアしなくてはいけない問題ですが』

「そうなんだけどな」


 この世界で生きていく以上は、避けて通れない問題なのはケンも理解している。


 だが、いきなり出来るかどうかは別問題である。


「とりあえず、いきなり殺されないようにどげんかせんといかん」

『チュートリアル的な戦闘だと思えば、そうそう負けないと思いますが?』

「痛いの嫌じゃん。戦闘システムも分からんしな」


 防御側の数値が攻撃側の数値を上回ればダメージが0になるゲーム仕様なら痛みを感じない可能性もあるが、いざ自分の身で試してみるとなるとやはり恐ろしいものだ。


「とりあえず、群れで動いている様子はなさそうだからな。策はある」

『柵なら先ほど作りましたが』

「そっちじゃねえし」


 何かを感じているのだろうか。

 犬の魔物は、ゆっくりと村へと向かって近づいてくる。


『どうするおつもりで?』

「まあ見てろって」


 ギリギリまで身を隠し続けて、魔物が射程範囲に入るのを待つケン。

 魔物も建物に身を隠した獲物がいるのは気がついているのだろう。特別焦る様子もなく、ジリジリと歩みを進めてくる。


「今だ!」


 完璧なタイミングでブレイクを発動。


『え?』

「そしてクリエイト!」

『ええ!?』


 悲鳴すらあげることなく、魔物は石の塊に押しつぶされたのだった。


「ふっ。我ながら完璧だったぜ」

『せ、セコイ……』

「勝てば官軍よ」


 要するに、ケンはブレイクを使って魔物の足元の地面を消し去り、クリエイトで出現させた石の塊で魔物を押しつぶしたのである。


「実に安全確実な方法だな。由緒正しき落とし穴だ」

『まあ、確かに、突然足元が消えたら普通落ちますよね……。しかもその上から巨大な石の塊が降ってきたら普通に圧死しますよね……』

「だろう?」

『まさかこんな方法でチュートリアル戦闘を回避するとは、私も予想していませんでしたよ』

「オレは戦闘職じゃねえからな。搦め手の方が性に合ってるんだぜい」


 と、その時だ。


 リンゴからメールの着信音が鳴った。

 ケンのお気に入りのアーティストのアップテンポなメロディだ。


「まさか、中に入っている音楽データとかも使用できるのか!!」

『驚くのはそっちですか!?』


 普通はメールが来ることに驚くだろう。


「お気に入りの曲が聞けるだけでもQOLは恐ろしく違うだろうが!」

『確かにそうなんでしょうけどね……。何ていうんでしょう、このやるせない感じは……』


 何やらショックを受けているリンゴは放置して、メールをチェックするケン。


「なになに……。『ケンはレベルが上がったぞい! 詳しいことはステータスをチェックしてみると良いのじゃぞ! by神』……だと!?」


 恐ろしく軽い調子の神様からのレベルアップのお知らせであった。


「ステータス!」


 ディスプレイに表示された自分のステータスをチェックするケン。


「レベルは2になったな。HPが200か。いきなり倍ってどうなんだ……?」

『普通はあり得ませんけどね。そこが加護の力ですよ、ご主人様』


 最高神の加護によって、レベルアップの際のステータス上昇率が大幅に上昇しているのだ。

 具体的には、上昇するランダム値の最大値が必ず上昇するようになっている。

HPは1から100までの間で乱数が設定されているため、100上がったのである。


 ちなみに普通は5から15の間が抽選される。

 100が抽選されるのは、0.01%以下の確率である。


「おお、そういうことか。ありがとう、最高神様!」


 そしてMPは300である。

 いきなり3倍だ。


『MPには、最高神様だけではなく技工の女神様の加護も補正が入りますからね』

「なるほど。100の100で200上がったわけだな。ありがとう、神様ズ!!」


 心の底からケンは感謝した。

 HPとMPは、真実生命線であるからだ。


「で、ステータスは……ぬあ!?」


 軒並み10か20上昇していた。


『これもHPとMPと同じで、二柱の神様の補正がかかりますからね……』

「能力値にも補正がかかるのな。ありがたい話だ!」


 ちなみに、能力値は1から10の間で上昇する。

 ケンの場合は、体力と知力と生命力と運の4種類には最高神のみの補正が入り、敏捷力と精神力には二柱の補正が入るというチートっぷりであった。


 つまり、知力と精神力は30。

 残りは20に上昇していたのである。


「と言うことは、すげえ上がってるんだな、コレ?」

『そういうことですね。この世界で必死に生きているヒト種からすれば怒っていいレベルです』

「ですよねー」


 さらにステータスのスキル欄には新たなスキルが。


08.トランキリティ……動揺した心を落ち着かせることができる。消費MP1。


「あー、そういうことか」

『そういうことなんですよ。本当は』


 要するに、初めての近接戦闘で感じていたはずの動揺とか恐怖とか、生き物を殺したことによる罪悪感とかを、このスキルで落ち着かせてから色々考えるはずだった訳だ。


 神の気遣いは不発に終わったようだ。


「神様に悪いことしたかな?」

『まあ、いいんじゃないでしょうか。ご主人様らしいといえばらしいですし』


 半ば諦めたようにリンゴが言う。


「つ、次はちゃんとやる。レベルも上がったし!」

『期待しないで待ってますよ』

「視線が痛い!」

『私に目はありませんけどね』


 いつも通りのノリは変わらないようだ。


お読みいただきありがとうございます。

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