第3話 ケン、スキルを使ってみる
よろしくお願いします。
<第3話>
「まずは、基本中の基本っぽいブレイクとクリエイトだな。それとMPが自然回復するかどうか」
『そうですね。宿屋で休んだら回復するのか、自然回復するのかでかなり違いますからね』
「そうだな。というか、リンゴ、お前何か知ってるんじゃないのか?」
『……滅相もございません』
「お前、絶対知っててやってるだろ!?』
タブレット相手に一人漫才を繰り広げるケンであった。
「とりあえず……ブレイク」
ボロボロになってしまっている石壁に対してブレイクを使用するケン。
石壁は、ポリゴンが砕けるように飛び散って消えた。
「リンゴ、管理領域」
『はい』
ディスプレイにゲームのアイテム画面のようなものが映し出される。
「おお、あるある。石だな」
『1スタック99個が基本のようです』
「64個じゃないのな。某サンドボックスとは違うか。ん、MPも98になってる」
ちゃんと2消費されていた。
「ところでリンゴ」
『はい?』
「お前、バッテリーはどうなってんだ。これ重要だぞ?」
バッテリが切れたらただの板では困るからだ。
『私は神様の加護により、機械生命体というよりは魔法生命体に近い存在になっています。よって、ご主人様の魔力供給によって駆動しているため、半永久的な駆動が可能です。また、そのような仕様のため、常に実体化している必要はなく、ご主人様の中に入り込むことが可能です』
スラスラと淀みなく答えるリンゴ。
「そうなのか」
『はい。私が、ご主人様の中に、です』
「いちいち区切んな……」
『優しくしますよ?』
「うっさいわ」
そんな漫才を繰り広げている間に、MPが99に回復していた。
「お、じっとしてたら自然回復するパターンな」
『ちなみに計測したところによると、5分で1回復する仕様のようですね』
「メモメモ……」
いちいち口にしてしまうのも仕様である。
「じゃ、次行きますか。クリエイト」
ちょっと離れたところを指定して、石を使用してクリエイトを試す。
すると、指定した場所に1㎥の大きな石ブロックが出現した。
「でかっ!」
『なるほど。これは興味深いですね」
「だな。何も考えずにクリエイトすると、立方体のキューブが出現するわけだ」
石ブロックを再度ブレイクすると、もう一度クリエイト。
「お、できたできた」
次は厚さが半分で高さが倍の長方形の石ブロックが生成された。
「体積が1㎥か。なかなか奥が深そうだな」
『使いようですね』
「っていうか、消費MPのわりに破格過ぎねえか?」
『神様のスキルですからいいんじゃないでしょうか?』
「そういうもんか」
『そういうものです』
それで納得していいのだろうか。
まあ、本人たちが納得しているのでいいのだろう。
「よし、とりあえず色んな素材をブレイクしておくか」
『それが良いかと』
幸いにしてここは廃村である。石以外にも素材は色々とあるのだった。
ボロボロではあるが。
「ふむ。ブレイクして根源元素とやらに還元された時点で、ボロボロになったという事実は消去されるわけだ。そして、クリエイトされたときにはオレが思い描く素材になっていると」
『神のスキルですからね』
「石の中にも色々な物質が混ざっていると思うんだが、それはどうなる?」
『ご主人様が、ブレイクする段階で対象を何と捉えているかによるのではないでしょうか?』
「なるほど。オレが石だと思っているから石になるわけだ。哲学的だな」
『神のスキルですから』
「なんでもそれで通ると思うなよ!?」
ツッコミは無視である。
だが、ケンもいい歳なので、心に棚を作って流すことにする。
「じゃあ、次はこれだな。コンストラクト!」
MPを10消費して、石と木材を組み合わせて柵を作ってみた。
「おお、結構いい出来じゃないか」
厚みがそこまでいらないので、それなりに幅のあるものが出来上がった。
これなら家の周りに設置しても問題ないだろう。
「で、これをセーブ……と行きたいところだが、MPをどれだけ使うか不明だからな。安全を確保してから使いたいもんだ」
『さすがです。ご主人様。私が止めるまでもありませんでしたね』
「ふふふ。もっと褒めてくれてもいいのよ?」
『調子に乗らないでくださいね?』
「へいへい」
ケンは、MPが半分を切ったところで小休止をかねて周囲の偵察に出かけることにした。
「情報収集はゲームの基本だからな」
廃村の広さは大したことがなかった。せいぜい20戸程度のものだろう。
どの建物もボロボロになっており、つい最近廃村になったわけではないことがうかがえる。
「お邪魔しまーすっと」
建物だったものの中に入ると、壊れた家具らしきものや、錆びて使い物にならなくなった農具などが打ち捨てられていた。
「お、鉄発見か?」
『そうですね。製鉄技術がある程度には文明が発達しているようです」
「とりあえずブレイクだな」
鉄ブロックをゲットするケン。
「あ、そっか。集めて1箇所にまとめてからやれば効率がいいのか」
『気がついていただけましたか』
「先に言ってくれてもいいのよ?」
『これもチュートリアルの一環と思っていただければ幸いです?』
「うっさいわ……ってうわっ!?」
思わず声をあげてしまったケンの視線の先にあったのは、汚れてはいるが、間違いなく人骨だった。
現代日本人が、現実に人骨を目にする機会などそうそうないのだから仕方ないと言えよう。
「何かがあったってことだな」
『そんなときこそ』
「ああ、そうか。ステータス、か」
人骨を写真に収めると表示されるステータス。
ほとんど数値なしだが、死因は魔物に襲われたことのようだ。
「なるほどな。この村は魔物に襲われたわけだ。全滅したかどうかは別にして、この村から人がいなくなる原因になったのは間違いないってことか」
『そのようですね』
少なくとも人を襲う魔物がこの辺りにはいて、その魔物に人は殺されてしまうということが分かった。
「となると、うかうかしてらんねえんだけどなあ……ん?」
何気なく見た建物の外。
まだ小さく見えるそれは距離が十分にあるから。
しかしそれは間違いなく。
「魔物……?」
ヒトの天敵、魔物がその姿を見せたのだった。
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